私たちが「薄毛」と呼ぶ症状の大部分は、実はAGA(Androgenetic Alopecia: 壮年型脱毛症)に当てはまるとされています。
特に男性では「M字ハゲ」や「頭頂部の薄毛」、女性では「分け目が広がる」などの症状が典型的です。
こうした症状は単なる加齢現象というだけでなく、遺伝やホルモン、生活習慣など多様な要因が複雑に絡み合った脱毛症であり、患者にとって大きなストレスとなるケースが少なくありません。
本記事では、分かりやすさと科学的視点、安全性を考慮しつつ、最新のAGA治療の情報を総合的に解説していきます。
AGA(壮年性脱毛症)とは何か?
AGAの定義
男性だけでなく、近年では女性にも同様のメカニズムで起きる「女性型脱毛症(Female Pattern Hair Loss)」としてまとめてAGAと呼ぶことがあります。
AGA(Androgenetic Alopecia:壮年型脱毛症)とは、主に男性ホルモン(アンドロゲン)と遺伝的要因が関与する進行性の脱毛症です。
男性型脱毛症と女性型脱毛症の違い
- 男性型脱毛症(MAGA;Male Androgenetic Alopecia)
一般的には前頭部(生え際)の後退や頭頂部(クラウン)の薄毛から始まり、進行とともに額や頭頂部周囲が大きく後退していきます。 - 女性型脱毛症(FAGA;Female Androgenetic Alopecia)
前頭部の生え際は残りやすいものの、頭頂部の分け目付近から徐々に密度が低下して薄毛が進みます。
閉経後に増えるという報告もあります。
AGA発症に関わる要因(遺伝・ホルモン・生活習慣など)
- 遺伝的要素
父方・母方のいずれかにAGAがあると発症リスクが高いという報告があります。 - ホルモン要素:DHT(ジヒドロテストステロン)
テストステロンが5α-還元酵素によってDHTに変換されると、毛包に対して萎縮を引き起こす。 - 環境・生活習慣
栄養バランス、ストレス、睡眠不足なども悪化因子になり得る。
AGAの病態生理
毛周期(ヘアサイクル)の概要
毛髪は「成長期(アナゲン)」「退行期(カタゲン)」「休止期(テロゲン)」「脱毛期(エクソゲン)」を繰り返します。
- 成長期(アナゲン):約2年~6年程度続き、毛髪が伸びる時期
- 退行期(カタゲン):約2〜3週間、毛包が縮小し始める
- 休止期(テロゲン):約3か月間、毛髪が抜け落ちる準備をする
- 脱毛期(エクソゲン):実際に毛髪が抜け落ちる段階
AGAでは、この毛周期のうち成長期(アナゲン)が短縮し、退行期(カタゲン)・休止期(テロゲン)が相対的に長くなるために、毛髪が十分に太く長く成長しないまま抜け落ちてしまいます。
アンドロゲン(DHT)と5α-還元酵素
男性型脱毛症では特に、5α-リダクターゼ(5α-還元酵素)によってテストステロンから生成されるDHT(ジヒドロテストステロン)が毛包をミニチュア化し、結果として脱毛を引き起こします。
このため、DHTを抑制する薬剤(フィナステリドなど)が治療の中心となってきました。
成長因子・シグナル伝達(Wnt/β-カテニン、TRPV1、CB1受容体)
- Wnt/β-カテニンシグナル
毛包形成や毛周期維持に重要な経路。
特定の物質がこのシグナルを活性化することで毛髪の成長期を延長する可能性があるとされています。 - TRPV1/TRPV4
カプサイシン受容体や温度刺激受容体として知られるTRPV系も毛周期に関与。
過度の活性化は逆に退行期を促す可能性があるが、適度な刺激は毛包に良い影響を与える場合があります。 - CB1受容体(カンナビノイド受容体)
大麻由来成分(カンナビノイド)との関連で注目されている。
THC(テトラヒドロカンナビノール)はCB1作動薬として毛包を縮小させる可能性がある一方、CBD(カンナビジオール)はCB1拮抗・負のアロステリック調節に働くため、毛髪成長を促す可能性が示唆されています。
AGAの症状・疫学・心理的影響
どのくらいの人がAGAになるのか?
- 男性では「50歳までに約50%」、女性では「40代以降で20〜30%程度」がAGAを発症すると言われる報告があります。
- 人種によって差があり、白人男性が最も発症率が高い一方、アジア系では比較的少ないとされます。
進行パターンの特徴:男性型と女性型
- 男性:前頭部M字部分、頭頂部(クラウン)から進行し、場合によっては頭頂部全体が薄くなることも。
- 女性:分け目付近が徐々に広がる、頭頂部の密度が全体的に落ちるが生え際は保たれやすい。
心理的な影響
AGAにより自尊感情が低下し、社会的交流を避けるようになる人もいます。
男性だけでなく女性の脱毛症も深刻なストレス源となり、うつや不安などメンタルヘルスに影響を及ぼす例も少なくありません。
AGAの標準治療
FDA(米国食品医薬品局)承認薬:ミノキシジル・フィナステリド
ミノキシジル(Minoxidil)錠・カプセル / 外用薬
- ミノキシジル錠・カプセルは副作用のリスクとエビデンスの不足から国内未承認となっています。
そのため医師の診断に基づき、海外輸入品を服用することとになります。
クリニックが仕入れを行っている場合もありますが、偽医薬品のリスクも受け入れる必要があります。 - 一方でミノキシジル外用液(2%、5%など)は国内承認済。
患部に塗布し、血管拡張作用を介して毛包への血流を増加させると考えられています。
ただし正確なメカニズムは未解明。
男性・女性いずれにも使用可能で、比較的安全性が高い。 - 一時的に初期脱毛や頭皮刺激を引き起こすケースがある。
フィナステリド(Finasteride)錠(先発品:プロペシア®カプセル0.2mg・1mg)
- 5α-還元酵素Ⅱ型を阻害し、DHT産生を抑制することで脱毛を抑制します。
- 主に男性で使われ、女性への使用は避けられる(催奇形性などの問題)。
- 性欲減退、勃起障害などの副作用が報告されるが、発生率は低めとされる。
デュタステリド、スピロノラクトンなどのオフレーベル治療薬
- デュタステリド(Dutasteride)(先発品:ザガーロ®カプセル0.5mg)
5α-還元酵素のI型・II型両方を阻害するため、フィナステリドよりも強いDHT抑制効果がある。 - スピロノラクトン(Spironolactone)
抗アンドロゲン作用があり、女性の薄毛治療に使用されることがある。 - その他
経口避妊薬、フルタミド、シプロテロン酢酸など
その他の治療選択肢(PRP、LLLT、植毛など)
- PRP(Platelet Rich Plasma)
患者自身の血小板濃縮液を頭皮に注入し、成長因子による毛包刺激を期待する。 - LLLT(Low-Level Laser Therapy)
低出力レーザーを頭皮に照射し、細胞活性や血流改善を図る。 - 植毛(Hair Transplantation)
自毛をドナー部位(後頭部など)から薄毛部位に移植する手術。恒久的な効果が期待できるが、費用・技術的な制約がある。
新しい治療の動向
近年、AGA治療の研究がさらに加速し、多様なアプローチが提案されています。
外用フィナステリドと外用ミノキシジルの併用
経口フィナステリドの副作用(性機能障害など)を嫌う患者向けに、フィナステリドを局所投与する研究が進んでいます。
外用ミノキシジルとの併用で相乗効果が確認された事例もあり、より高い発毛効果を期待できます。
幹細胞・Wntシグナル関連の研究開発
Wnt/β-カテニン経路を標的にした新薬(SM04554など)の臨床試験が進行中。
毛包の成長期を延長する効果を狙ったアプローチです。
カンナビノイド(CBD、THCV、CBDV)を含むヘンプエキスの可能性
ヘンプ由来の成分がエンドカンナビノイドシステム(ECS)に作用し、毛包の拡大や退行期の制御に貢献する可能性が示唆されています。
ここ数年でCBD含有製品の普及が進み、AGAへの応用研究が増加している背景があります。
現状のAGA治療における問題
現状のAGA治療において国内未承認にもかかわらず経口ミノキシジルの処方が多用されています。
これはミノキシジル外用液を塗布する煩雑さが関係していると推定されます。
そこで経口ミノキシジルについてのエビデンスについてもまとめました。
最新の経口ミノキシジル剤(Oral Minoxidil: OM)のAGAに対するシステマティックレビュー
2025年現在、最新の経口ミノキシジル剤のAGAに対するシステマティックレビューの概要と結果は以下の通りです。
研究概要と結果
- 研究デザイン
5つのデータベース検索で、最終的に9研究(RCT 1件、非ランダム化比較研究8件、計19,270名)を対象に解析。 - 評価
- AGA、円形脱毛症、牽引性脱毛症、休止期脱毛など複数タイプの脱毛症に対し経口ミノキシジルが試された。
- 用量は0.25 mg/day〜10 mg/dayと幅が大きく、治療期間は6〜12か月。
- 全ての研究で「経口ミノキシジルにより発毛効果が認められた」報告があるが、研究自体の質が「非常に低い〜低い」とされた。
- 副作用
- 主なものは多毛(Hypertrichosis)、むくみ(浮腫)、めまい、頭痛などが多く、程度は「軽度」で治療継続は可能というケースがほとんどであった。
- 血圧低下など重大な副作用は少なく、1名を除いて中断の報告はほぼなかった。
- 結論
- 経口ミノキシジルは脱毛症に対して一定の有益性を示唆するが、エビデンス品質が低いため「推奨」レベルではない。
この論文が示すポイント
- 効果実感
研究の質が低いながらも、外用に比べて 経口ミノキシジルは全身的に作用するため発毛率が上がる可能性がある。 - 用量設定
0.25 mg程度の低用量〜5 mg前後など複数パターンが存在。副作用との兼ね合いで最適値を見極める必要がある。 - 副作用
多毛などは想定されるが、低用量であれば軽度ですむケースが多い。 - エビデンスの不足
高いバイアスリスクと少数例の報告が多いため、「十分な根拠」とは言いがたい。
AGA治療における意味合い
- 既存薬との違い
外用ミノキシジルで頭皮トラブル(かぶれやベタつき)が起きた患者に対する代替として、有力な可能性を持つ。 - 併用療法の可能性
フィナステリドやデュタステリドなどのDHT抑制薬と作用機序が異なるため、相乗効果を期待できる。 - 課題
大規模RCTが不足しており、確立した推奨用量や安全性プロトコールの整備が必要。
ヘンプエキスによるAGA治療の最前線
エンドカンナビノイドシステム(ECS)とは?
1990年代に発見されたECS(Endocannabinoid System)は、生体内の恒常性維持に大きく寄与するシステムです。
皮膚にも多くのCB1、CB2受容体が存在し、炎症調節や細胞死(アポトーシス)制御など多様な生理機能をサポートします。
ヘンプ由来カンナビノイド(CBD、THCV、CBDV)の作用機序
- CBD(カンナビジオール)
部分的なCB1拮抗薬として機能し、Wntシグナルを活性化するとも言われる。炎症を抑える効果も期待できる。 - THCV(テトラヒドロカンナビバリン)、CBDV(カンナビジバリン)
これらはCB1受容体に対する完全拮抗作用を持ち、DHT様の脱毛メカニズムとは異なる形で毛髪成長を促す可能性。 - TRPV1/TRPV4
カンナビノイドはトランジェント受容体(バニロイド系)にも作用し、過剰活性化すると逆に毛包の退行期を促す。用量依存的な管理が必要とされる。
新たな症例研究:CBD, THCV, CBDV含有ヘンプエキスとAGA
すでにCBDを中心とした外用塗布製剤のAGA改善例がいくつか報告されていますが、CBDに加えTHCVやCBDVが含有されたヘンプエキスの研究はまだ少ないのが現状です。
今回ご紹介する論文は、この外用ヘンプエキス(CBD, THCV, CBDV含有)がAGAに対して有用性を示した最新の事例です。
論文紹介:Smithらの “Hair Regrowth with Novel Hemp Extract: A Case Series”
研究デザインと結果のまとめ
論文タイトル
“Hair Regrowth with Novel Hemp Extract: A Case Series” (PMCID: PMC10251293, 2023年)
研究概要
- 参加者:31名(男性15名、女性16名)
- 全員がAGA(男性はNorwood-Hamiltonの3V以上、女性も相当する脱毛パターン)
- 処方:ヘンプエキス高濃度(CBD、THCV、CBDV含有)の外用製剤を1日1回、6か月間使用
- 評価:タトゥーで一定の1cm²を決め、開始前と6か月後の毛髪数を比較
結果
- 平均で164%(男性246%、女性127%)の毛髪数増加
- 個別ケースで最小31.25%増から最大2000%増まで確認(1本→21本のような劇的変化も)
- 副作用の報告なし
- 被験者の心理的評価でも「満足(happy)」あるいは「非常に満足(very happy)」が100%
具体的な増毛率と安全性
- 男性
平均6.13本/cm² → 21.20本/cm²
約15本/cm²の増加(+246%) - 女性
平均12.69本/cm² → 28.75本/cm²
約16本/cm²の増加(+127%)
すべての被験者で何らかの増毛が観察され、統計的に非常に有意(P<0.00001)。
副作用は確認されず、安全面でも大きな問題は見当たらなかったようです。
メカニズム
CB1拮抗作用、Wntシグナル、TRPV1/TRPV4への影響
著者らは、以下のように推察しています。
- CBD, THCV, CBDVはいずれも何らかの形でCB1受容体を拮抗し、毛髪の成長期を延長する。
- CBDはWntシグナルも増強し、新たな毛包形成を促進。
- TRPV1への作用(アゴニスト)による脱感作で、逆に毛包退行を抑制する可能性。
- ペパーミントオイルなどの添加成分が毛髪の成長期への迅速な移行をサポート。
以上の機序により、従来のミノキシジルやフィナステリドと異なる経路を活性化し、相乗効果を生む可能性があるとしています。
ミノキシジルやフィナステリドなど他の治療との比較(Smithらの考察)
- 今回の外用ヘンプエキスは「従来のCBD単独」よりも優れた結果を示した(平均93.5%増からさらに上乗せ)。
- ミノキシジル5%外用液やフィナステリド単独使用と比較しても、今回のケーススタディではより高い発毛率を示唆。
- ただしサンプルサイズが31人と小規模であり、プラセボ対照群を置いていないため、今後はランダム化二重盲検試験が望まれる。
相乗効果の可能性と今後の課題
Smithらは、ヘンプエキスは「ミノキシジル」「フィナステリド」と作用メカニズムが異なるため、併用すれば相乗効果を期待できると主張しています。
ただし安全性や最適な投与量などはさらに検証が必要となるでしょう。
AGA治療薬の安全性・副作用
ミノキシジル・フィナステリドの代表的な副作用
- ミノキシジル
頭皮のかゆみ、接触皮膚炎、初期脱毛。内服時は血圧低下など循環器系の副作用。 - フィナステリド
性欲減退、勃起障害、稀にうつ様症状。女性は禁忌。
カンナビノイド、ハーブサプリの副作用
- CBD単独
一般的に安全性が高いが、経口高用量で肝機能への影響、疲労・眠気など一部報告あり。
- THCV, CBDV
THCVは日本において指定薬物となっているため、所持・使用は原則違法。
正当な理由で使用する場合は厚生労働省の許可が必要。
まだ研究が少なく、長期的安全性は今後の課題。
- ハーブサプリ全般:製品品質や濃度が標準化されていない場合が多く、信頼できるメーカー選びが重要。安全な治療のために医療従事者と連携する必要があります。
- 既存薬との相互作用:特に経口CBDは肝代謝酵素を阻害する可能性があるため、他の薬と併用時は注意。
- 持病や妊娠の有無:女性は妊娠中や妊娠予定がある場合、抗アンドロゲン薬やフィナステリドの使用に注意が必要。
- 専門家への相談:自己判断で複数の育毛剤を使うよりも、専門医や薬剤師と相談し、処方薬・サプリを含めて最適なプランを立てることが望ましい。
自宅でのセルフケアから最先端医療まで
生活習慣・頭皮ケア
- 十分な睡眠、ストレス管理、バランスの良い食事が毛髪にも有益。
- 頭皮マッサージや刺激による血流改善は一定の効果が期待されるが、医学的な根拠はまだ限定的。
- 過度なヘアカラーやパーマは頭皮に負担をかけるので要注意。
薬剤併用、外用塗布剤製剤
- ミノキシジル外用+フィナステリド内服
現在の標準的な治療法。 - ヘンプエキス含有塗布剤
今後の研究次第で大きく普及する可能性あり。
副作用が少なく、既存薬と併用も期待。
今後期待される研究分野
- CB1/CB2受容体に特異的に作用する化合物
- Wntシグナルを安全に活性化する新薬
- テーラーメイド医療(個別化医療)
遺伝子検査やホルモンバランスなど、個人に合わせた治療計画
よくある質問
Q. AGAは治るの?完治することはあるの?
一般に「完治」というよりは「進行を遅らせ、毛量を維持する・増やす」ことがゴールとされます。
進行予防と増毛効果の両方を狙う治療は存在しますが、投薬を止めると再び進行する可能性が高いです。
Q. ヘンプエキスやCBDは日本で使える?
日本におけるCBD製品ではTHC含有量がごく微量またはゼロであれば合法ですが、CBDVを含む製品の国内流通はまだ限定的です。
THCVに関しては、医薬品医療機器等法(薬機法)により指定薬物に指定されており、適切な使用用途以外での所持・利用は違法となります。
そのため、日本ではTHCVを除いてヘンプエキスを作成し、患部に塗布してみるのが良いかもしれません。
安全なCBD原料は弊社でお取り扱いしております。
国内での入手状況、各製品の合法性・品質に関する情報は弊社へお問い合わせください。
Q. 女性がフィナステリドを使うことは可能ですか?
女性には原則使用不可のお薬です。
FAGA(女性型脱毛症)は男性のAGAとは全く異なる機序で脱毛を引き起こしていると考えられています。
原因は特定されていないものの、女性ホルモンの減少が影響していると考えられ、基本的にはミノキシジル外用液を患部に塗布する治療が一般的です。
Q. 育毛サプリと食事療法は効果がある?
亜鉛やビオチンなど、特定の栄養素不足を補うことに意義はありますが、大幅な育毛効果を得られるかは個人差が大きいです。
バランスの良い食事と合わせ、専門家に相談するとよいでしょう。
結論:複数のアプローチを組み合わせてAGAを克服しよう
AGAは多因子性かつ慢性的に進行するため、単一の治療法で「劇的な完治」を得るのは難しいのが現状です。
しかし、以下のように複数のアプローチを組み合わせることで、より大きな効果と安全性が期待できる時代になっています。
- 従来の標準療法(ミノキシジル外用液・フィナステリド内服など)
- 新しい試み(デュタステリド、PRP、LLLT、Wnt活性薬など)
- ヘンプエキス(CBD、THCV、CBDV)などのカンナビノイドの応用
特にSmithらの報告した症例シリーズでは、CBD、THCV、CBDV、ペパーミントオイルを組み合わせたトピカル製剤が高い発毛率を示し、副作用も少ない可能性を示唆しました。
これは既存薬とまったく異なる機序で働くため、併用した際の相乗効果も大いに期待されます。
今後は大規模なランダム化比較試験や長期的追跡調査が行われれば、CBDやTHCV、CBDVなどを含むヘンプエキス製剤が「第3の柱」として確立されるかもしれません。
研究者・医療従事者・製薬企業で連携し、さらに安全で効率的なAGA治療を目指すことが重要です。
【参考文献】
・Cranwell W, Sinclair R. Male Androgenetic Alopecia. South Dartmouth. 2016.
・Levy LL, Emer JJ. Female pattern alopecia: Current perspectives. Int J Womens Health. 2013;5:541–56.
・Whiting DA. Male pattern hair loss: Current understanding. Int J Dermatol. 1998;37:561–6.
・Courtois M, et al. Ageing and hair cycles. Br J Dermatol. 1995;132:86–93.
・Kaufman KD. Androgens and alopecia. Mol Cell Endocrinol. 2002;198:89–95.
・Messenger AG. Hair through the female life cycle. Br J Dermatol. 2011;165(Suppl 3):2–6.
・Irwig MS, Kolukula S. Persistent sexual side effects of finasteride. J Sex Med. 2011;8:1747–53.
・Stout SM, Stumpf JL. Finasteride treatment of hair loss in women. Ann Pharmacother. 2010;44:1090–7.
・Messenger AG, Rundegren J. Minoxidil: Mechanisms of action. Br J Dermatol. 2004;150:186–94.
・Kulick MI. Topical minoxidil. Ann Plast Surg. 1988;21:273–5.
・Gupta AK, Charrette A. Topical minoxidil: Systematic review. Skinmed. 2015;13:185–9.
・Holmäng S, et al. Squamous cell carcinoma of the renal pelvis and ureter. J Urol. 2007;178:51–6.
・NCT03742518. A Study Evaluating the Efficacy and Safety of SM04554 Topical Solution. 2018–2021.
・Smith G, Satino J. Hair Regrowth with Cannabidiol (CBD)-rich hemp extract. 2021.
・Bolognini D. Pharmacological Properties of the Phytocannabinoids. Doctoral Thesis. 2010.
・Smith GL. Medical Cannabis: Basic Science and Clinical Applications. Aylesbury Press. 2016.
・Tóth KF, et al. Cannabinoid signaling in the skin. Molecules. 2019;24:918.
・Bíró T, et al. The endocannabinoid system of the skin. Trends Pharmacol Sci. 2009;30:411–20.
・Muller C, et al. Cannabinoid ligands targeting TRP channels. Front Mol Neurosci. 2018;11:487.
・Chung H, et al. Cannabidiol binding as negative allosteric modulation. PLoS One. 2019;14:e0220025.
・Gaston TE, Friedman D. Pharmacology of cannabinoids in epilepsy. Epilepsy Behav. 2017;70:313–8.