PFASが神戸市のミネラルウォーターから検出?どこの会社?人体への影響と共に薬剤師が解説

近年、ニュースなどで目にすることが増えてきた有害物質「PFAS(ピーファス)」。

そんな「PFAS」ですが、少し前に神戸市で作られたミネラルウォーターから検出されたことが話題となりました。

本記事では、PFASがミネラルウォーターから検出された「経緯」や「理由」などを解説したいと思います。

また、後半では「PFASが入ったミネラルウォーターを避けるポイント」もご紹介したいと思いますのでぜひチェックしてみてください。

この記事で分かること PFASとは何か
結局、PFASの何が問題なの?
PFASは煮沸すれば大丈夫?
PFASがミネラルウォーターから検出された件について
PFASが入ったミネラルウォーターを避けるポイント
普段利用している水道水にも注意が必要

そもそもPFASとは?

ニュースなどで目にすることが増えてきた「PFAS」ですが、そもそもどういったものなのでしょうか?

ここでは、「PFASとはどういったものなのか」ということや、「PFASの人体に対する影響」を解説したいと思います。

PFASは有機フッ素化合物の総称

PFAS(ピーファス; Per- and PolyFluoroAlkyl Substances: パー-ポリフルオロアルキル化合物)の通称で「永久の化学物質」とも呼ばれる有機フッ素化合物の総称です。

PFASに分類される有機フッ素化合物は約1万種類以上存在し、特に「(PFOSピーフォス)」や「PFOA(ピーフォア)」「PFHxS(パーフルオロヘキサンスルホン酸)」の有害性から近年注目されるようになってきました。

これらの化合物は水や油を弾く性質といった性質を持っており、過去にはフライパンの撥水加工やプラスチック製品の表面保護剤、泡消火剤などの様々な用途で使用されてきました。

しかし、現在では「PFOS」と「PFOA」、「PFHxS」など一部のPFASは、その「難分解性」「高蓄積性」といった性質からストックホルム条約によって製造や使用・輸入が日本を含めた世界中で規制されています。

結局、PFASの何が問題なの?

主に、難分解性・高蓄積性・毒性の3点が特に問題と考えられています。

自然界における難分解性

PFOS・PFOA・PFHxSなどはいずれも自然界で分解されにくい「永久化学物質」と呼ばれます。土壌や水環境中での生分解性が極めて低く、検出限界以下まで分解されるのに数十年~数百年を要すると推定されています。

高蓄積性(生体蓄積性)

食物連鎖を通じて生物濃縮を引き起こす。さらに、母親から母乳や胎盤を介して子供へPFASが移動してしまうことが問題である。

ラットなどでは糞便中排泄が主だが、ヒトでは腸肝循環が起こるため、尿中排泄が主排泄経路となることから、血清や肝臓、腎臓などに長期間蓄積しやすい。

・PFOS:約5 年(4~6 年とも)

・PFOA:約3~4 年

毒性

肝機能障害・腎機能障害・免疫異常・生殖機能異常・発がん性など多くの臓器へ異常をきたす恐れがあると考えられています。

日本でも水道水から高濃度のPFASが検出されている

最近では、過去に蓄積された「PFAS」が全国の水道水などから検出されるケースが報告されており、健康や環境に対する影響が懸念されています。

2023年には岡山県の吉備中央町の浄水場から、PFASの一種である「PFOS」と「PFOA」が高濃度で検出されたことが分かっています。

具体的には「1ℓあたり1,400ナノグラム(ng)と、国の暫定目標値である「1ℓあたり50ナノグラム」の28倍の数値が検出されました。

また、複数の住人に対して血液検査を実施したところ、全員からアメリカの基準値である「1mlあたり20ナノグラム」を大きく上回る濃度(平均186ナノグラム)が検出されました。

水道水やミネラルウォーターのPFASは煮沸によって除去できる?

結論、水道水やミネラルウォーターに含まれているPFASは煮沸によって除去できません

なぜなら、PFASの沸点がPFOS: 249℃、PFOA: 188~189℃PFHxS: 238~239℃で、水よりとても高いからです。

沸点 / 化合物水(H₂O)PFOSPFOAPFHxS
沸点(℃)100249189~192238~239

水の沸点は約100℃であり、煮沸によって水の方がPFASよりも先に蒸発してしまうことになります。

そのため、煮沸によって除去することができないのです。

PFASの人体への影響は?発がん性も?

アメリカでは、PFASが血中濃度で「1mlあたり20ナノグラム」を超える状態が続くと以下のリスクが高まると言われています。

  • 一部のがん
  • 脂質異常
  • 抗体反応の低下(免疫異常)
  • 乳児・胎児の発育の低下 など

特に、「がんのリスク」が深刻で注目されており、WHO(世界保健機関)も「PFOA」と「PFOS」の発がん性の評価を引き上げています。

実際に2020年の論文でも、PFASとの関連性が認められるものとして「精巣がん」などが報告されています。

PFASの人体に対する健康リスクは明らかになっていないことも多くありますが、以下の画像のような影響を及ぼすのではないかとも言われています。

※PFASが人体に与える影響。イラストは原田さん著『これでわかるPFAS汚染』をもとに作成(元データは『食べもの通信 2023年8月号』|食べもの通信社)
※PFASが人体に与える影響。イラストは原田さん著『これでわかるPFAS汚染』をもとに作成(元データは『食べもの通信 2023年8月号』|食べもの通信社)

PFASが神戸市のミネラルウォーターから検出?どこの会社?

ここまでの説明から、PFASの「有害性」や「水道水に含まれていること」がお分かりいただけたと思います。

ここでは、そんな「PFAS」が神戸市のミネラルウォーターから検出されたケースをご紹介したいと思います。

PFASがミネラルウォーターから検出された経緯

2022年12月、神戸市内の企業が製造したミネラルウォーターから、PFASが検出されたことが発覚しました。

このミネラルウォーターに含まれていたPFASの濃度は、国の暫定目標値である「1ℓあたり50ナノグラム(ng)」を大きく上回り、最大で約6倍の300ナノグラム以上が含まれていました。

この事態を受けて、企業はPFASを除去する活性炭フィルターを設置し、現在では目標値以下に抑えられているようです。

ただ、神戸市はPFASが検出されたミネラルウォーターの製造元の企業名や商品名を公表していないため、どこの会社の製品なのかということは分かりません。

PFASがミネラルウォーターに含まれていた理由

ここでは、PFASがミネラルウォーターに含まれていた理由として考えられるものを2つご紹介します。

①原水が汚染されていた

そもそもミネラルウォーターは、地下水などを原水としたミネラル成分を豊富に含む水を指します。

今回ミネラルウォーターにPFASが含まれていた原因の1つとして、原水となる地下水が「既にPFASで汚染されていた」ことが考えられます。

PFASは非常に安定した化学物質であり、自然環境中で分解されにくいため、一度放出されると地下水などに残留してしまいます。

実際、過去の工業活動や消火訓練で使用された泡消火剤などが原因で、地下水がPFASに汚染されたケースも多く報告されています。

今回のケースでも、こうした過去の環境汚染が原因となって、原水となる地下水がPFASに汚染されていたことが考えられます。

②工場周辺が環境汚染されていた

PFASに汚染された河川

ミネラルウォーターにPFASが含まれていたもう1つの理由として、製造工場周辺の環境が汚染されていたことが考えられます。

というのも、工場の排水や廃棄物が適切に処理されておらず、PFASが環境中に拡散していた場合、製造工程でこれらの物質が混入するリスクがあります。

また、工場が過去にPFASを使用していた場合、その残留物が施設内部や周辺の環境に蓄積し、現在の製造過程に影響を及ぼす可能性もあります。

今回のケースでは、PFASがミネラルウォーターに含まれていた具体的な原因は明らかになっていませんが、原水の汚染とともに、工場周辺の環境汚染という2つの可能性が指摘されています。

ミネラルウォーターのPFAS検査は企業次第

皆さんの中には「ミネラルウォーターとして販売されている製品なのに、ちゃんと検査が行われていないの?」と疑問を感じる方もいるのではないでしょうか。

実を言うと、ミネラルウォーターに含まれるPFASの検査や管理は各企業の判断に委ねられています。

また、ミネラルウォーターに含まれるPFAS濃度については、食品衛生法上でも規定がないため、PFASが検出されたとしても企業が罰せられることはありません。

そのため、PFASが含まれる可能性のあるミネラルウォーターを避けるには、消費者自身が情報を確認し、適切な商品を選ぶ努力が必要です。

以下では、PFASを避けるための具体的なポイントをご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。

PFASが入ったミネラルウォーターを避けるポイント

ここでは、PFASが入ったミネラルウォーターを避けるポイントを2つご紹介したいと思います。

原水の水質調査結果を調べる

ミネラルウォーターを選ぶ際には、まず原水の採水地を確認することが重要です。

日本では、「ミネラルウォーター類(容器入り飲用水)の品質表示ガイドライン」に基づき、製品ラベルに採水地を記載することが義務付けられています。

この情報を確認することで、原水がPFASに汚染されているリスクをある程度回避することができます。

さらに、環境省が2019年から2020年に実施した「有機フッ素化合物全国存在状況把握調査」では、全国各地の水源におけるPFASの存在状況が調査され、その結果が公式サイトで公開されています。

特定の採水地について詳しく知りたい場合は、この調査結果を事前に確認することで、PFAS汚染の可能性が低い地域の製品を選ぶ手助けとなるでしょう。

PFAS検査を実施している企業の水を選ぶ

ミネラルウォーター

PFASの健康への影響が懸念される中、ミネラルウォーターを選ぶ際には、PFAS検査を実施している企業の商品を選ぶことが重要です。

例えば、富士ミネラルウォーター株式会社は、2024年7月に外部専門機関によるPFOSおよびPFOAの検査を実施し、いずれも「検出限界以下」(1ℓあたり2.5ナノグラム未満)であることを確認しています。 

また、株式会社ナックも第三者機関にてPFASの検査を実施し、未検出であることを報告しています。 

このような取り組みを行っている企業の商品を選ぶことで、PFASの摂取リスクを低減させることが期待できます。

普段利用している水道水にも注意が必要!

上記では、PFASが入ったミネラルウォーターを避けるポイントを2つご紹介しました。

ただ、PFASはミネラルウォーターだけでなく、皆さんが普段利用している水道水にも含まれているため、適切な対策が必要となります。

ここでは、「日本のPFAS基準値は世界的に見て緩くなる可能性」「家庭でできるPFAS対策の方法」をご紹介したいと思います。

日本のPFAS基準値は世界的に見て緩くなる可能性がある

日本にはPFASの基準値はありませんが、以下のような「暫定目標値」が設定されています。

  • 暫定目標値:1ℓあたり50ナノグラム(ng)

実は、現在この値が今後水質基準に引き上げられる方向で議論されているのですが、この基準値は世界各国と比較して緩いと指摘されています。

例えば、アメリカ環境保護庁(EPA)は2022年にPFOSおよびPFOAの規制値を「各4ナノグラム」に大幅に引き下げています。

一方、北欧諸国では、スウェーデンが「4ナノグラム」、デンマークが「2ナノグラム」としており、日本の基準値はそれらと比べて10倍以上緩い値となっています。

このように、世界的にはPFASのリスクに対する意識が高まり、より厳しい基準が採用される中、日本の基準値は相対的に緩く見られる可能性があります。

そのため、水道水を利用する際には基準値を鵜呑みにせず、自身で対策を講じることが重要となります。

家庭でできるPFAS対策には浄水器がおすすめ

浄水器

皆 さんの中には、「できるだけPFASを摂取しないよう家庭でできる対策を講じたい」という方も多 いのではないでしょうか。

もしそのようなことをお考えの場合は、対策として浄水器を利用することをおすすめします。

浄水器は水道水に含まれる不純物を除去するための便利なアイテムで、様々なタイプがあります。以下のような浄水器から、自分の生活スタイルに合ったものを選びましょう。

  • ポット型:水を注ぐだけで簡単にろ過できる手軽なタイプ。
  • 蛇口直結型:蛇口に取り付けるタイプで、省スペースで使用可能。
  • 据え置き型:シンク脇などに設置し、しっかりしたろ過能力を持つタイプ。
  • 水栓一体型:水道の蛇口自体にカートリッジが組み込まれているタイプ。
  • アンダーシンク型:シンクの下に設置する大型タイプで、高性能なろ過が可能。

ただし、すべての浄水器がPFASを除去できるわけではないため、「PFAS除去可能」と明記された製品を選ぶことが重要です。

環境省が2022年9月に公表した報告書では、PFAS除去には高圧膜処理、イオン交換樹脂、活性炭などの技術が有効であるとされています。

【参考文献】

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