近年リラクゼーション成分として、日本でも注目を集めている「CBD」。
そんなCBDですが、
- 「ネットやSNSで見かけたけどよく分からない」
- 「気になっているけど、なんとなく怖い」
- 「友人から勧められたけど手を出しづらい」
といった考えをお持ちの方はいらっしゃいませんか。
そんなあなたのために、CBDの安全性や副作用・違法性について、薬剤師がわかりやすく解説します。
記事の後半では、「CBDに期待されている効果とメカニズム」や「CBD製品の種類と摂取方法」についても解説しています。
CBDとは?

CBDとは、Cannabidiol(カンナビジオール)の略称で、大麻草に含まれる「カンナビノイド」と呼ばれる成分の1つです。
この成分は大麻草には少なくとも100種類以上含まれており、その中でも「CBD」と「THC」は多くの割合を占めていると言われています。
THCとは、Tetrahydrocannabinol(テトラヒドロカンナビノール)の略称であり、「キマる」・「ハイになる」といった精神活性作用があるとされています。
CBDは大麻由来の成分ですが、THCと違い「キマる」・「ハイになる」といった精神活性作用はありません。
そのため、CBDは精神的な高揚感を伴わず、安心して利用できる成分として医療でも利用されています。
CBDの安全性や副作用
CBDが大麻由来の成分であることから、「CBDは本当に安全なの?」と不安を感じている方はいらっしゃいませんか。
ここでは、CBDの安全性や副作用に関して解説したいと思いますので、興味がある方はぜひ最後までご覧ください。
CBDは安全性が高い
大麻由来の成分である「CBD」ですが、安全性の高さが過去の研究から分かっています。
実際に、2011年に実施された臨床試験では、1日に高用量(1,500mg)のCBDを摂取しても、人体への目立った悪影響は認められなかったことが報告されています。
また、CBDは覚醒剤といった違法薬物と違い、依存性がないことも特徴的です。
2017年に世界保健機関(WHO)が発表した「CBD 事前審査報告書」でも、CBDは依存のリスクがないことが明記されています。
加えて、CBDには薬物のような「耐性」もないため、長期間にわたり使用しても摂取量が増えることはありません。
「耐性」とは、薬を繰り返し使用することで、薬の効きが悪くなったり、効かなくなったりする現象のことです。
稀に副作用が起こる場合もある

CBDは安全性が高い成分ですが、摂取量が多すぎるとごく稀に副作用が現れることがあります。
主な症状としては、
- 眠気
- 喉の渇き
- めまい
- お腹が緩くなる
- 動悸
などが挙げられます。
ただし、CBDによる副作用はほとんどの場合、症状が軽度であるため、過度に心配する必要はありません。
CBDが効きすぎてしまい、副作用が現れてしまった場合は、CBDの摂取を一度やめて、休息を取ることをおすすめします。
もしCBDの摂取後に副作用を感じた場合は、一度使用を中止して体を休めることが大切です。静かな場所で少し横になる、または眠気がない場合は深呼吸や瞑想などでリラックスしてみましょう。
CBDの違法性
CBDが大麻から抽出される成分であることから、「違法なのでは?」と不安を感じている方はいらっしゃいませんか。
ここでは、「CBDは違法なのか」ということを詳しく解説したいと思います。
CBD自体に違法性はない
結論から言えば、CBDそのものには違法性はありません。
日本のCBDに関する法規制は、2024年12月の法改正によって「部位規制」から「成分規制」へと大きく変更されました。
これまでの部位規制では、大麻の成熟した茎・種子から抽出されたCBDは合法でしたが、葉や花、根から得られたCBDは違法とされていました。
しかし、今回の改正により、CBDがどの部位から抽出されたかに関係なく、CBDという成分そのものが合法であると明確に定められました。
なお、THCについては、これまで成分そのものに対する規制が曖昧であったため、法律での取り締まりが難しい側面がありましたが、今回の法改正によってTHCは所持・使用共に完全に違法となりました。
CBD製品は違法になる場合がある

THCは違法成分ですが、日本で流通しているCBD製品には、ごく微量のTHCが含まれていることがあります。
そのため、日本ではTHCの含有量に基準値が定められており、この基準値を超えるCBD製品は違法となります。
THCの基準値は製品のタイプごとに異なります。
例えば、CBDオイルやカプセルといった油脂製品、またはCBDパウダーなどの粉末製品では、THCの含有量が10ppmを超えると違法とみなされます。
一方、CBD入りの飲料水など水溶液タイプでは0.1ppmを、CBDリキッドやグミなどのその他製品では1ppmを超えると違法となります。
CBDに期待されている効果とメカニズム
ここでは、「CBDに期待される効果」と「メカニズム」に関してご説明したいと思います。
CBDに期待されている効果
CBDは過去の研究から、
- 抗不安作用
- 睡眠の質の改善
- 抗炎症作用
- 抗けいれん作用
- 抗腫瘍作用
- 抗酸化作用
- 抗菌作用
などの効果が期待されており、医療目的でも利用されています。
例えば、「抗けいれん作用」から、CBDは「レノックス・ガストー症候群」や「ドラベ症候群」・「結節性硬化症複合体」における発作への薬として利用されています。
また、CBDを利用している方の多くは、「リラックス」や「不安」といったメンタルに関する摂取目的でCBDを利用していることが過去の調査から分かっています。
CBDの効果のメカニズム

CBDは、ECS(エンドカンナビノイドシステム)の働きを整えることで、上記のような効果をもたらします。
ECSとは、脳や心臓、腸など体内のさまざまな働きを調整するシステムであり、CBDの効果が発揮される主要な仕組みと考えられています。
一般的にCBDは、CB1受容体とCB2受容体というカンナビノイド受容体に結合することで、このECSに作用するとされています。
ただし、ここで誤解されやすいのが、CBDはCB1受容体とCB2受容体に強く結合し、直接ECSに働きかけるわけではないという点です。
CBDはこれらの受容体には弱く結合するか、あるいは「代謝酵素」に作用することで、間接的にECSのバランスを調整すると考えられています。
CBD製品の種類と摂取方法
最近、日本でも少しずつCBD製品が浸透してきており、ショッピングセンターなどでも見かけることが増えてきています。
ここでは、主なCBD製品の種類をご紹介したいと思います。
CBD製品の5つの種類と4つの摂取方法
CBD製品は、主に以下の5種類が販売されています。
- CBDオイル
- CBDサプリメント
- CBDエディブル(グミやクッキーなど)
- CBDリキッド
- CBDクリーム・ジェル・バーム(塗布タイプ)
これらのCBD製品は「舌下摂取」・「経口摂取」・「吸引摂取」・「経皮摂取」の4つの摂取方法で利用することができます。
CBDオイルは「舌下摂取」、CBDサプリメントとCBDエディブルは「経口摂取」、CBDリキッドは「吸引摂取」、CBDクリーム・ジェル・バームは「経皮摂取」で利用できます。
CBDは摂取方法によって、「効果の強さ」や「効果時間」が異なるため、摂取方法の特徴を理解した上で利用することが重要となります。
CBD製品は成分によっても3種類に分けられる
CBD製品は、含まれている成分によって「①アイソレート」・「②ブロードスペクトラム」・「③フルスペクトラム」の3種類に分類されます。
ここでは、それぞれの3種類の特徴を簡単に解説したいと思います。
①アイソレート

アイソレートは、大麻草に含まれる多くの成分の中からCBDのみを抽出し、単体で製品化したものです。
このタイプのCBD製品は、他の大麻由来の成分が含まれていないため、非常に安全性が高いとされています。
②ブロードスペクトラム
ブロードスペクトラムとは、THCを除いた他の大麻由来の成分を含んだCBD製品のことです。
このCBD製品はCBD以外の大麻成分も含んでいるので、複数の成分の相乗効果によって、アイソレートに比べて強い効果が期待できます。
③フルスペクトラム
フルスペクトラムとは、THCを含むすべての大麻由来成分が含まれたCBD製品を指します。
大麻草の成分がまるごと配合されているため、最大限のアントラージュ効果が期待できるのが特徴です。
しかし、このタイプはTHCを多く含んでいるため、日本国内では規制対象となり、所持や譲渡、購入などが禁止されています。
CBD製品を利用・購入する際の注意点
ここでは、CBDを利用・購入する際の注意点を解説したいと思います。
CBD製品を利用する際の注意点

医薬品を服用している方は、CBD製品を利用する際に注意が必要です。
CBDは、肝臓に存在する薬物代謝酵素(CYP450)によって代謝されるため、同じような代謝経路を辿る他の薬剤の代謝が妨げられ、結果として他の薬剤の血中濃度が上昇してしまうことが知られています。
そのため、CBDを摂取すると、この薬物代謝酵素による薬の分解が遅れ、医薬品の効果や副作用が強まる場合があります。
CBDの影響を受けやすい薬剤には、抗凝固薬、抗てんかん薬、免疫抑制剤および増殖阻害剤、抗うつ薬や抗精神病薬などが挙げられます。
ある論文では、具体的に以下の薬剤を利用している場合は注意が必要であることが報告されています。
- 抗凝固薬
- ワルファリンカリウム
- 抗てんかん薬
- スチリペントール、バルプロ酸ナトリウム
- 免疫抑制剤および増殖阻害剤
- タクロリムス、エベロリムス、シロリムス、シクロスポリン
- 抗うつ薬
- イミプラミン
- 抗精神病薬
- クロザピン、クロルプロマジン、ピモジド、ブロムペリドール、レボメプロマジン
ただし、日本臨床カンナビノイド学会の見解では、CBDの摂取量が1日に体重1kgあたり2mg以下であれば、薬の代謝に大きな影響はないとされています。
日本臨床カンナビノイド学会副理事長の正高佑志医師によれば、上記の薬剤以外にも止血が優先される救急の現場においては、抗血小板薬等を服用している患者さんがCBDを摂取していた場合、止血が遅れてしまう可能性を指摘しています。
購入する際の2つの注意点
CBD製品は利用する際だけでなく、購入する際も注意する必要があります。
ここでは、CBD製品を購入する際の2つの注意点を解説したいと思います。
第三者機関の検査の有無を確認する

第三者機関とは、企業や利害関係のない中立的な立場から、製品の成分や安全性について調査・評価を行う機関です。例えば、公的な研究機関や大学の研究室などが該当します。
これらの機関では、主に以下のような項目をチェックしています。
- THCの含有量が法定基準を超えていないか
- 農薬や有害な溶媒などが検出されないか
- 製品に含まれるCBDの量がパッケージに表示された通りか
検査の結果、安全性が確認されれば「成分分析証明書」が発行されます。これは製品の信頼性を客観的に裏付けるものです。
ただし、第三者機関の中でも、厚生労働省が提示している第三者機関の成分分析証明書を提示している製品が、より安心できる製品であると考えます。
購入前には、公式サイトや商品説明欄でその成分分析証明書が掲載されているかをチェックし、安全で品質の高いCBD製品を選ぶようにしましょう。
専門家が監修しているか確認する
最近ではCBDの注目度が高まるにつれて、専門的な知識を持たない個人が製品を作り、ネットで販売しているケースも見られるようになっています。
なかには製造元や成分の詳細が不明確な商品も存在し、購入者にとって不安材料となることがあります。
こうした中で、安全性と信頼性の高い製品を選ぶためには、医療の専門家(例:医師や薬剤師)が開発や監修に関わっているかどうかが1つの判断基準となります。
CBDはまだ研究途上の成分であり、体への影響について未知な点も少なくありません。だからこそ、医療の知識を持った専門家が関与している製品を選ぶことで、思わぬ健康リスクを避けることができるでしょう。
まとめ
CBDは大麻草に含まれる成分の一種で、精神活性作用を持たない安全性の高い成分として注目されています。
過去の研究でも、高用量摂取時の安全性や依存性のなさが確認されており、リラックス効果や抗不安作用、睡眠の質の向上など、さまざまな可能性が期待されています。
一方で、副作用が稀に起こることや、医薬品との相互作用のリスクがあるため、持病がある方や薬を服用している方は使用前に医師へ相談することが推奨されます。
また、日本ではCBD自体は合法ですが、THCの含有量に法的な基準が設けられており、基準を超えた製品は違法となるため注意が必要です。
CBD製品は複数の種類があるので、自分にあった適切な製品を利用することが重要となります。
CBD薬剤師の質問コーナー
CBDの適切な摂取量はいくら?
CBDの適切な摂取量は、人によって異なります。
なぜなら、体質・体重・体調・摂取方法といった要素が、体内での吸収率や代謝(=生体利用率)に影響を与えるからです。
例えば、同じ量を摂取しても体重が重い人は多く必要になる傾向があり、ストレスや寝不足など体調がすぐれない時ほど、少量でも効果を感じやすいと言われています。
一般的には「体重1kgあたり1〜2mg」を目安に、まずは少量から始めて、自身の状態に合わせて調整するのが安全です。
CBN・CBGとは?
CBNとは「カンナビノール」の略で、THCが時間の経過や酸化によって分解されることで生成される成分です。
CBDには精神活性作用がありませんが、CBNはごく弱い精神活性作用を持つことが知られており、リラックスや眠気を感じることがあると言われています。
一方、CBGとは「カンナビゲロール」の略で、CBDやTHCなど他の主要なカンナビノイドの前駆体となる成分です。
そのため、「母なるカンナビノイド(Mother of Cannabinoids)」とも呼ばれており、抗菌作用や抗炎症作用、眼圧を下げる効果などが研究されています。
参考文献
- カンナビジオール(CBD)事前審査報告書
- Safety and side effects of cannabidiol, a Cannabis sativa constituent
- 【一般社団法人日本臨床カンナビノイド学会】処方箋医薬品とCBD,THCを含有する大麻由来製品の薬物相互作用について


日本薬剤師研修センター研修認定薬剤師
日本臨床カンナビノイド学会認定登録師
所属学会:日本薬理学会、日本緩和医療薬学会、日本在宅薬学会、日本臨床カンナビノイド学会