近年、CBDはリラックスやストレス緩和などの効果から注目を集めており、日本でも豊富な種類の商品が販売されています。
そんなCBDですが、大麻由来の成分であることから「依存性があるのでは?」と不安に感じる方は多いのではないでしょうか。
そこで今回は、薬剤師である私がCBDの依存性について、エビデンスを基に詳しく解説したいと思います。
また、記事後半では、CBDを安全に利用するためのポイントも紹介しているので、CBDに不安を感じて
いる方は是非参考にしてみてください。
そもそもCBDとは?
CBDとは、Cannabidiol(カンナビジオール)の略称であり、大麻草に含まれる「カンナビノイド」という成分の1つです。
CBDは大麻成分の1つですが、精神活性作用が無いことが分かっています。
ここでは、そんなCBDの違法性や主な効果について簡単に解説したいと思います。
CBDは合法なのか
結論から言うと、CBDは日本でも合法であり、使用することができます。
WHO(世界保健機関)もその安全性の高さから、2018年には危険薬物を規制する「薬物条約」で、CBDが規制対象外であることを発表しています。
しかし、CBDは大麻由来の成分であるということから、日本でも合法であるのにも関わらず、違法な成分として勘違いされることがあります。
日本で違法とされるのは「THC」と呼ばれる成分であり、同じ大麻由来ですがCBDとは全く別の成分です。
THCは、一般的に「ハイになる」と言われる精神作用がある成分であり、日本では麻薬取締法によって規制されています。
過去には、CBD製品にTHCが含まれていたという事件もあるため、購入する際は信頼できるブランドを選ぶことを心がけましょう。
CBDの主な効果
CBDは近年、世界中の国々で様々な研究が行われており、
- リラックス効果
- 睡眠の質の向上
- 抗炎症作用
- 抗菌作用
- 鎮痛作用
- 抗てんかん作用
などが期待されており、この他にも様々な疾患に対して有用性が期待されています。
実際に、海外では「Epidiolex(エピディオレックス)」と呼ばれるCBDを99%含有した医薬品が抗てんかん薬として利用されています。
日本でも現在、このEpidiolex(エピディオレックス)がレノックス・ガストー症候群(LGS)やドラベ症候群(DS)、結節性硬化症等に伴う難治性てんかんの患者さんを対象に臨床治験が行われています。
今後様々な疾患に対してCBDを含んだ医薬品が利用されることが期待されています。
CBDの主な摂取方法
CBDには、主に以下のような4つの摂取方法があるとされています。
- 舌下摂取(オイル)
- 吸引摂取(ベイプ)
- 経口摂取(グミやカプセルなど)
- 経皮摂取(クリームやパッチ、テープなど)
CBDは、摂取方法によって「効果の強さ」や「持続時間」が異なるため、目的や状況に合わせた摂取方法を見つけることが重要となります。
また、CBDを利用したことがない初心者の方は、まずは「気軽に摂取できる」などの特徴がある「経口摂取」がおすすめです。
CBDには依存性があるのか?
大麻草から抽出した成分であるCBDの依存性について心配している方も多いのではないでしょうか。
結論から言えば、CBDに依存性はなく、安全で、慢性的な中毒性がないということが知られています。
ここでは、CBDの依存性や安全性、中毒性について解説していきます。
CBDに依存性はない
さまざまな研究の結果から、CBDには依存性がないことが分かっています。
実際に、2017年にWHO(世界保健機関)によって、CBDは依存・乱用に関係した作用を示さないことが報告されています。
しかし、日本では「大麻成分=依存性がある」というイメージがあるため、CBDも度々依存性があると勘違いされることがあります。
依存性があるのは「THC」と呼ばれる成分で、精神活性があることから長期的に摂取することで、精神的依存を引き起こすことが分かっています。
ただし、THCでは精神的依存のみ形成されるのに対して、アルコールやタバコでは身体的依存と精神的依存を両方形成するとともに、耐性も形成されてしまうことが過去の研究から明らかになっています。
そのため、アルコール依存症患者様や喫煙者では飲酒量が増えたり、喫煙本数が増加したりすることで体に害を及ぼしてしまうことがわかっています。
CBDには、このような耐性がないことが分かっていますが、皆さんもアルコール摂取量や喫煙本数には気を付けてくださいね。
CBDは安全性が高い
大麻由来の成分であるCBDですが、過去の研究から安全性が高いことが分かっています。
実際に、1980年の研究では、CBDを投与した被験者に、「重篤な副作用」または「毒性」が見られなかったことが報告されています。
また、WHO(世界保健機関)は、CBDには「忍容性が高い(副作用がほとんど無い)」ことを認めています。
さらに、CBDは2018年WADA(世界アンチ・ドーピング機構)にも安全性が承認されており、アスリートにも利用されています。
CBDの中毒性について
一般的に中毒には、「慢性中毒」と「急性中毒」の2種類があるとされており、アルコールをイメージして頂けると理解しやすいのではないでしょうか。
先ほどご紹介した通り、CBDは長期間にわたり依存するような「慢性的な中毒性」が無いということが分かっています。
また、急性アルコール中毒のような、一時的に多量摂取することによる「急性的な中毒性」もほとんど無いことが過去の研究から分かっています。
実際に、2011年に行われた臨床試験では、1日に1,500mgの高用量でCBDを摂取しても、目立った悪影響が見られなかったことが報告されています。
このように、CBDには慢性・急性中毒のリスクが極めて低いことが分かっているため、安全性が高い成分であると言えます。
ただし、CBDは摂取量が多いと眠気を引き起こす可能性があるため注意が必要です。
CBDはアルコールや薬物などの依存症に効果がある?
「アルコールやタバコを止めたいけどやめられない…」そんな悩みを持つ方は多いのではないでしょうか?
実は、CBDはそんなアルコールやタバコによる「依存症」に対して効果が期待されています。
ここでは、CBDの依存症に対する効果についてエビデンスを基に解説します。
CBDのアルコール依存症に対する効果
アルコール依存症とは、アルコールを多量に繰り返し摂取することで、身体的・精神的依存が起こっている状態のことです。
CBDは、過去の研究から、そんなアルコール依存症に対して効果があることが期待されています。
2017年の動物実験では、エタノール摂取後のマウスにCBDを投与し、依存症に対する有用性が評価されました。
結果、CBDを摂取したマウスは、エタノールの摂取量が減少し、依存が緩和した可能性が示唆されました。
また、別の研究では、アルコール依存症であるラットにCBDを投与し、ストレス負荷などをかける実験が行われました。
結果、CBDと投与されたラットは、投与後の138日間、ストレス負荷が原因で起こる「アルコールの探索行動」を軽減したことが報告されました。
これらの研究は、臨床試験ではありませんが、CBDのアルコール依存症に対する有用性を示唆しています。
CBDのニコチン依存症に対する効果
ニコチン依存症とは、タバコに含まれる「ニコチン」という成分を長期的に摂取することで、精神的・身体的に依存している状態のことです。
ニコチン依存症は改善することが難しいと考えられており、自力で禁煙を行った場合の成功率は約10%とも言われています。
CBDは過去の研究から、そんなニコチン依存症に対して効果が期待されています。
2013年の研究では、24人の喫煙者にCBDまたはプラセボ(偽薬)を吸入器で投与し、依存症に対する有用性が評価されました。
結果、プラセボ(偽薬)に比べ、CBDは喫煙本数を最大40%減少させたことが報告されました。
さらに、研究終了後も、CBDを摂取した喫煙者は、喫煙本数をある程度コントロールできたことも明らかになっています。
禁煙したい方は、ぜひ一度CBDを摂取することを検討してみてはいかがでしょうか。
CBDの危険薬物に対する効果
CBDはアルコールやタバコだけでなく、危険薬物が原因で起こる依存症に対しても効果が期待されています。
2019年の研究では、42名のヘロイン依存症患者に「CBD(400〜800mg)」または「プラセボ(偽薬)」を投与し、有用性が評価されました。
ヘロインとは、乱用することで強い依存症を引き起こす危険薬物の1つです。
研究の結果、プラセボに比べ、CBDはヘロインによって起こる「摂取欲求」や「不安」を大幅に軽減したことが報告されました。
さらに、CBDを投与された患者は、投与後7日間、継続して同様の効果を示したことも明らかになっています。
この研究は、CBDが危険薬物による依存症の新たな治療手段になる可能性を示しており、その他の危険薬物に対する効果にも期待が高まります。
CBDを安全に使用するためには?
上記で説明したようにCBDは依存性が無く、安全であるとされています。
日本臨床カンナビノイド学会によればCBDの摂取量が1日で体重1kg当たり2㎎以下( 2㎎ /kg/ day以下 )であれば相互作用を気にする必要性は低いと言われています。
例えば、体重50kgの方であればCBD100㎎/日、体重80kgの方であれば160㎎/日までは問題ないと考えられます。
しかし、CBDは使い方や摂取のタイミングに注意しなければ、意図しないトラブルを引き起こす可能性があります。
ここでは、CBDを安全に使用するために注意すべきことを3つご紹介します。
医薬品との飲み合わせに注意する
普段から医薬品を服用している方は、CBDとの飲み合わせに注意する必要があります。
CBDは、肝臓の滑面小胞体に多く存在し、薬物代謝において最も重要な酸化反応を触媒するCYP (シトクロームP450)の働きを阻害することによって、医薬品の代謝に影響を与えると考えられています。
CBDと飲み合わせが悪いと考えられている医薬品はいくつかありますが、特に以下に掲げるお薬とは併用を避けた方が良さそうです。
まず、血液サラサラ系のお薬の内、抗凝固薬に分類されるエリキュース(アピキサバン)やイグザレルト(リバーロキサバン)とCBDの併用によって相互作用により出血の状態が継続してしまうと考えられるためCBDの摂取を控えてください。
他にも、以下のような医薬品には注意が必要となります。
- 抗凝固薬
- 抗てんかん薬
- ステロイド
- 免疫抑制剤
- 抗うつ薬、抗精神病薬
これら以外にもCBDと一緒に摂取することによって、通常よりも効果が強く現れてしまう医薬品があるとされています。
そのため、医薬品を日常的に服用している方は、医師や薬剤師に相談するようにしましょう。
過剰摂取に注意する
過去の研究から、CBDは過剰に高用量を摂取してしまうと、肝機能異常を起こす可能性があるとされています。
2019年に行われた研究では、マウスにCBDを615mg/kg(体重)投与した場合、75%のマウスが肝臓に障害が発生したことが分かりました。
ただし、この時の研究ではCBDの摂取量が非常に多く、体重60kgの人間で例えると36,900mgのCBDを摂取した計算になります。
一般的に売られているCBD濃度10%のオイルでも、CBDの含有量は1,000mgほどですので、上記の量を摂取するのは非現実的です。
ただ、CBDは高用量を摂取することで、眠気を引き起こす効果があるとされているため、仕事や勉強中などにはたくさんの量のCBDを摂取することはおすすめできません。
使用するタイミングに注意する
上記で説明したように、CBDは高用量を摂取することで眠気を引き起こす効果があるとされているため、使用するタイミングには注意が必要です。
特に、車の運転や機械の操作を行う前には、CBDを摂取することはおすすめできません。
実際に2023年に行われた研究では、運転前に高用量のCBD(300mg)を摂取した場合、軽度の運転能力の低下が見られたことが報告されています。
また、妊婦や授乳中の方に関しても、CBDを使用することは控えた方が良いでしょう。
CBDは高い安全性が認められていますが、胎児や乳児に対する影響は未だ明らかになっていません。
事実、アメリカの食品医薬品局は、授乳中や妊娠中の方はCBDの使用を避けるように警告しています。
CBDは、適切に使用することでリラックや睡眠のサポートなどの効果が期待できますが、上記で示したように使用のタイミングには注意しましょう。
粗悪なCBD製品には注意が必要
CBD製品を購入する際には、ただ値段が安い商品を選べば良いという訳ではありません。
過去には、粗悪なCBD製品による健康被害がいくつかあったことも報告されています。
ここでは、実際にあったCBD製品による健康被害や、それを避けるために安全なCBD製品を選ぶポイントをご紹介していきます。
過去にあったCBD製品による健康被害
CBDは、ここ数年で急激に人気の高まっている成分であることから、まだ小規模な事業者やブランドが多くいるというのが現実です。
小規模ブランドが良くないという訳ではありませんが、SNSやフリマアプリなどで個人によって販売されている商品による健康被害は、近年多数報告されています。
特に、CBDベイプによる健康被害の件数は多く、CBDオイルやCBDサプリメントのような原材料や成分表示などの義務が無いことが原因であると思われます。
海外では、粗悪なCBDベイプリキッドによる死亡事例なども報告されているため、商品を選ぶ際には注意が必要となります。
このような事故を防ぐために、下記で信頼できるCBDブランドの選び方について解説いたします。
信頼できるブランドを選ぶ
信頼できるブランドを選ぶためには、まず、第三者機関の検査が行われているかを確認しましょう。
第三者機関の検査では、違法物質であるTHCやその他危険な成分が含まれていないかがチェックされています。
他にも、商品の表記通りの量のCBDやその他成分が含まれているかなども細かくチェックされています。
また、医師や薬剤師などの専門家が監修しているブランドは、信頼できるCBDブランドを選ぶ際には、注目すべきポイントです。
品質管理を徹底しているブランドでは、医師や薬剤師などの専門家が製造工場に足を運んで、製造過程をチェックしている場合などもあります。
まとめ
今回は、CBDには依存性があるのかについて詳しく解説してきました。
また、CBDのアルコールやタバコ・危険薬物の依存に対する効果などもご紹介してきました。
CBDは、WHOやWADAも認めるほど安全性が高く、睡眠導入剤や抗不安薬のような依存性や副作用もほとんど無いことがお分かり頂けたと思います。
CBD薬剤師の質問コーナー
CBDは長期間使っていると耐性がつきますか?
CBDには、睡眠などの医薬品にあるような耐性は、現在のところ確認されていません。
ただ、CBDには一定量を超えるとかえって効果が弱まる「釣鐘効果」と呼ばれる特徴があります。
そのため、耐性はありませんが多量に摂取してしまうと効果が弱まることありますので注意しましょう。
CBDオイルやカプセルでも禁煙ができる?
本記事では、CBDは喫煙者の喫煙本数を40%減らしたという研究をご紹介いたしました。
しかし、この研究は吸引(ベイプなど)によってCBDを摂取した研究ですので、CBDオイルやカプセルなどでも同じ効果が得られるとは分かりません。
理由としては、ベイプを吸う行為はタバコを吸う仕草に似ているということがあり、違う摂取方法でCBDを摂取した場合はどうなるか分からないからです。
参考文献
- カンナビジオール(CBD)事前審査報告書
- WHOによるCBD批判的審査報告書 ( 2018年 )
- GW Pharma、カンナビジオール内用液「GWP42003―P」の第3相臨床試験で最初の患者に投与されたことを発表
- 大麻草の構成成分であるカンナビジオールの乱用・依存性について ( World Health Organization :2017)
- Safety and side effects of cannabidiol, a Cannabis sativa constituent
- Therapeutic Prospects of Cannabidiol for Alcohol Use Disorder and Alcohol-Related Damages on the Liver and the Brain
- Overcoming the Bell‐Shaped Dose‐Response of Cannabidiol by Using Cannabis Extract Enriched in Cannabidiol
- Cannabidiol reduces cigarette consumption in tobacco smokers: preliminary findings
- Cannabidiol for the Reduction of Cue-Induced Craving and Anxiety in Drug-Abstinent Individuals With Heroin Use Disorder: A Double-Blind Randomized Placebo-Controlled Trial