「CBD」は、リラクゼーションや健康増進を目的として、日本国内でも若者を中心に利用されています。
そんなCBDですが、近年「摂取するとうつ病になる」といった噂を聞くことが増えてきています。
皆さんの中にも「CBDを摂取するとうつ病になるの?」と疑問をお持ちの方もいるのではないでしょうか?
今回は薬剤師である私が、「CBDを摂取すると鬱になるのか」や「CBDのうつ病に対する効果」など一歩踏み込んだ内容を解説したいと思います。
本記事を読むことで、CBDとうつ病の関係性について理解を深めることができると思うので、是非最後までご覧ください。
CBDとは?

CBDは、大麻草の種子や成熟した茎から抽出されるカンナビノイドの1つです。
大麻由来の成分ということから警戒される方も多いかもしれませんが、CBDには大麻のような依存性や精神作用がないことが分かっています。
CBDは安全性が高いこともわかっており、WHO(世界保健機関)にも、その安全性の高さが認められています。
また、CBDは過去の研究結果から、
- 睡眠の質の改善
- 鎮痛作用
- 抗炎症作用
- 抗不安作用
- 抗てんかん作用
などの効果が期待されており、海外では医薬品としても利用されています。
近年世界中ではCBDの研究が活発に行われており、美容や健康など様々な分野での活用が期待されています。
うつ病ってどんな病気なの?
うつ病とは、身体的・環境的変化などによるストレスによって脳の機能が低下することで、体や心に不調が現れる気分障害の一種です。
2022年の厚生労働省の発表では、日本にうつ病患者は約127万6千人いると言われており、年々増加傾向にあることが分かっています。
また、うつ病は一生のうちに発症する確率が5.7%であると言われており、近年では誰がいつなってもおかしくない身近な疾患となっています。
ここでは、そんな「うつ病」の原因や症状・治療方法について詳しく解説したいと思います。
うつ病の原因

うつ病が発症する原因は1つでは無いことが分かっており、時には複数の原因が重なって発症するケースもあります。
最も多いうつ病の発症原因は、「心理的ストレス」だと言われています。
ストレスの中でも、うつ病の引き金になりやすいものとしては経済的トラブルや人間関係のトラブル・大切な人やものを失う喪失感などが挙げられます。
うつ病は心理的ストレス以外にも
- 遺伝的要因(性格や体質)
- 糖尿病やがんなどの身体的疾患
- 妊娠・出産などに伴うホルモンの変化
などが原因で発症する場合もあります。
また、うつ病は一説では上記で紹介した原因によって、脳内の神経伝達物質が減少することで発症すると考えられています。
神経伝達物質とは、脳内の神経細胞に対して情報伝達を行う物質であり、主なものとしては「セロトニン」が挙げられます。
うつ病の症状
うつ病の症状は、「精神症状」と「身体症状」の2つに分けられます。
精神症状では「一日中気分が落ち込んでいる」・「何をしても楽しめない」などの症状が見られます。
一方、身体症状では「食欲が無い」・「眠れない」・「疲れやすい」・「めまいや動悸」などの症状が見られます。
このように、うつ病には様々な症状が見られますが、人によっては「不眠症」や「不安障害」などの合併症を併発する場合があることも分かっています。
また、うつ病は放置することで、症状の悪化や人間関係に支障をきたすことや、最悪の場合自殺に至ることがあります。
そのため、うつ病の疑いがある場合には、早期に専門の医療機関を受診し、適切な治療を受けることが大切です。
うつ状態・うつ病の治療方法

うつ病の治療には多くの場合、抗うつ薬を用いた「薬物療法」、カウンセラー等に代表される専門家との対話を行う「精神療法」、運動による気分転換を利用した「運動療法」、さらにより専門的な治療法としてTMS(経頭蓋磁気刺激療法) 等が取り入れられる場合もあります。
代表的な治療法である「薬物療法」は、薬による効果が出るまでに2~4週間の時間がかかる上、はっきりとした治療結果を定量的に測定しにくいという課題があげられます。
ただし、各国で行われている研究では抗うつ薬の処方量の増加と自殺率とは負の相関がある可能性が指摘されています。
過去に欧米では、抗うつ薬の服用による自殺を巡って医療訴訟が多発し、一時期社会問題となっていましたが、現在では抗うつ薬も目覚ましい進歩を遂げています。
また、抗うつ薬の種類によっては「立ちくらみ」・「強い眠気」・「吐き気」・「体重増加」・「性機能障害」などの副作用や離脱症状が起こることが明らかになっています。
そのため、担当医とよく相談しながら治療を進めることが大切です。
CBDを摂取すると鬱になる?
結論から言うと、CBDを摂取してもうつ病になることはありません。
それどころか、過去の研究からCBDはうつ病に対して効果が期待されています。
しかし、ごく稀に「CBDを摂取するとうつ病になる」と勘違いされている方がいらっしゃいます。
これには、CBDのもととなる大麻が「うつ病の原因となる」などの誤った情報がSNS上で流れていることが関係していると考えられます。
実際に2012年の論文では、大麻の使用とうつ病の患者数には相関関係が見られなかったことが示唆されています。
このように、SNS上にはCBDや大麻に関する間違った情報が散見されるため、医師や薬剤師などが発信している情報を参考にすることをおすすめします。
CBDのうつ病に対する効果
うつ病に有効的な成分として、ビタミンやミネラルなどが有名ですが、実はCBDもうつ病に対して有用性が期待されています。
ここでは「CBDのうつ病に対する研究」や「うつ病に対するメカニズム」をご紹介したいと思います。
CBDのうつ病に対する研究

2016年の研究では、うつ病のマウスにCBDを急性または慢性投与し、有用性が評価されました。
結果、CBDは神経伝達物質であるセロトニンとグルタミン酸の分泌量を増加させ、マウスに対して即効性のある「抗うつ作用」を示したことが報告されました。
さらに、他の研究では、CBDが三環系抗うつ薬である「イミプラミン(トフラニール)」と同様の抗うつ作用を示したことが示唆されました。
これらの研究は、CBDの「うつ病」に対する有用性を示しており、更なる研究に期待が高まります。
動物実験の結果が必ずしも人体に当てはまるとは言えませんが、現在のうつ病治療に限界を感じている方は、かかりつけの医師と相談の上で試しにCBDを利用してみることをおすすめします。
CBDのうつ病に対するメカニズム
現段階ではCBDのうつ病に対するメカニズムは、完全には明らかになっていません。
今回は、考えられているメカニズムを2つ紹介します。
セロトニンのレベルを安定させる

うつ病は「セロトニン」などの脳内伝達物質の分泌量が減少することで発症すると考えられています。
一説では、CBDがセロトニン受容体に作用し、セロトニンの分泌量を安定させることで「抗うつ作用」を発揮していると言われています。
実際に2009年の動物実験では、CBDがセロトニン受容体である「5-HT1A」を活性化させることで、セロトニンの働きを高めたことが示唆されています。
アナンダミドの働きを促進する
もう一つの見解では、CBDが神経伝達物質である「アナンダミド」の働きを促進することで「抗うつ効果」を発揮していると言われています。
アナンダミドは別名「幸福の分子」と呼ばれており、働きが促進されることで「幸福感」を生み出すことが分かっています。
2012年の論文では、CBDはアナンダミドの分解を抑制し、働きを促進させる作用があることが示唆されています。
これらのように、CBDのうつ病に対するメカニズムは完全には明らかになっていないため、今後の更なる研究に期待が高まります。
うつ病の合併症に対するCBDの効果
うつ病を患っている方の中には、
- 睡眠障害
- 不安障害
- PTSD(心的外傷後ストレス障害)
- 糖尿病
などの合併症を併発している方もいらっしゃいます。
ここでは、うつ病の合併症に対するCBDの効果について詳しく解説したいと思うので、気になった方は是非チェックしてみてください。
睡眠障害を緩和

うつ病と不眠症には深い関係があると考えられており、ある調査ではうつ患者の84.7%に不眠症が見られたことが報告されています。
不眠症とは、「中途覚醒」・「入眠困難」などの症状が慢性的に続く疾患のことです。
CBDは過去の研究から、そんな不眠症に対しても効果が期待されています。
2019年の研究では、72名の被験者にCBDカプセル(25mg/日)を投与し、睡眠や不安のスコアが評価されました。
その結果、被験者の66.7%の睡眠スコアが改善し、79.2%の不安スコアが低下したことが報告されました。
うつ病や不眠症にお悩みの方は、就寝前にCBDカプセル摂取することをおすすめします。
不安障害の改善
不安障害もうつ病との合併率が高く、うつ病患者の約6割が不安障害を併発していると言われています。
また、うつ病と不安障害を合併している方は自殺などの懸念が高く、治療効果に時間がかかりやすい傾向があるため注意が必要となります。
CBDはそんな不安障害に対して効果が期待されています。
実際に2017年の論文では、CBD(300mg)を投与された不安障害の患者に、大幅な不安の低下が見られたことが報告されています。
もし、うつ病と不安障害にお悩みの方がいらっしゃるなら、CBDを1つの選択肢として使用してみるのもいいかもしれません。
ただし、上記の研究のような高用量のCBDを摂取した場合、人によっては副作用が起こる可能性があるため摂取量には注意する必要があります。
PTSDの症状を緩和
PTSDとは、生死に関するようなトラウマとなる出来事が原因で、フラッシュバックや不安・認知障害などの症状が起こる精神疾患の1つです。
PTSDはうつ病と併発しやすいと言われており、CBDはそんなPTSDの症状を緩和させる効果が期待されています。
2022年の論文では、PTSDの患者33名に対して、CBD(300mg)またはプラセボ(偽薬)を投与し、有用性が評価されました。
その結果、プラセボに比べて、CBDを投与されたグループは「不安」や「認知障害」などのPTSDの症状が軽減されたことが報告されました。
うつ病の症状だけでなく、PTSDの症状にお悩みの方は、試しにCBDを利用してみることをおすすめします。
糖尿病を予防

うつ病患者は糖尿病になりやすく、また糖尿病患者もうつ病になりやすいことが分かっています。
糖尿病に効果がある成分として、ビタミンDやカルシウムが有名ですが、実はCBDにも糖尿病を予防する効果が期待されています。
2006年の論文では、CBDを投与したマウスの糖尿病の発生率が約56%低下したことが報告されています。
さらに、この論文では糖尿病の原因になる「サイトカイン(タンパク質の一種)」が減少したことも示唆されています。
この研究は動物実験レベルではありますが、糖尿病を予防したい方は、CBDを利用してみるのも1つの選択肢としていいかもしれません。
CBDをうつ病に対して利用する際の注意点
皆さんの中にも、「CBDをうつ病に対して利用したい…」と考える方は多いと思います。
では、実際にCBDをうつ病に利用する際には、どういったことに注意すればいいのでしょうか?
ここでは、CBDをうつ病に対して利用する際の注意点を3つご紹介したいと思うので、是非参考にしてみてください。
抗うつ薬との飲み合わせに注意する
抗うつ薬を利用している方が、CBDを摂取する場合は飲み合わせに注意する必要があります。
CBDには、肝臓に多く存在する薬物代謝酵素である「CYP450」の働きを阻害する作用があります。
CBDがこの薬物代謝酵素の働きを阻害することで、抗うつ薬が代謝されにくくなり、抗うつ薬の血中濃度が高まる結果、抗うつ薬の副作用が誘発される可能性があります。
ただ、日本臨床カンナビノイド学会の発表によれば、CBDの摂取量が2mg/kg/日以下であれば、薬の代謝に影響を及ぼす程ではない、とされています。
そのため、体重が50kgの方であればCBDの摂取量が100㎎以下、体重が80kgの方であれば摂取量が160㎎以下であればCBDを摂取しても副作用を心配する必要はありません。
抗うつ薬を利用している方がCBDを摂取する場合は、上記の摂取量を参考に摂取することをおすすめします。
適切な量のCBDを摂取する

CBDの十分な効果を得るためには、自分にあった適切な量のCBDを摂取することが重要となります。
しかし、「うつ病に対して、どれくらいCBDを摂取すればいいか分からない…」といった方は多いのではないでしょうか?
そんな場合は、「臨床CBDオイル協会」が推奨している「1回 0.25〜0.5mg/kgのCBDを1日2回」を参考にしてみることをおすすめします。
これは、不眠や不安などの明確な症状がある場合に推奨されている量であり、仮に体重が60kgの方なら15〜30mgのCBDを1日2回摂取することになります。
また、十分な効果が期待できない場合は4日〜1週間様子をみながら、 1日 0.5mg/kgずつ増量するのもいいかもしれません。
妊婦はCBDの利用に注意する
妊娠中はうつ病が発症しやすく、妊婦全体の約10%が「うつ病」になると言われています。
皆さんの中にも、「妊娠中にうつ病を発症してしまい、CBDを利用したい」と考えている方がいらっしゃるのではないでしょうか?
しかし、CBDは母子に対する影響が明らかになっていないため、妊娠中に利用することはおすすめできません。
実際に、「アメリカ食品医薬品局(FDA)」も、妊娠中や授乳中におけるCBDの使用を避けるように警告しています。
そもそも、安全性が確認されている医薬品であっても妊娠中における服用のリスクは低くないため、一般的に服用が避けられています。
妊娠中にうつ病を発症してしまった場合は、自己判断でCBDを摂取するのではなく、医療機関に相談しましょう。
CBD薬剤師の質問コーナー
CBDはうつ病以外の精神疾患にも効果がありますか?
CBDは精神疾患である「統合失調症」に対して効果が期待されています。
実際に2018年の研究では、CBDを投与された統合失調症患者は、「精神症状」や「認知機能」が改善したことが報告されています。
さらに、他の研究では、CBDは統合失調症の治療薬と同様の有用性があることが示唆されています。
CBDはどういった目的で利用されていますか?
CBDの利用目的は、「リラックス」や「睡眠の改善」など人によって大きく異なります。
ここでは、一例として2021年のCBD利用者に対する調査をご紹介したいと思います。
この調査では、CBD利用者の目的は下記のような結果になりました。
- リラックス(35%)
- 不安(29%)
- 活力(18%)
- 痛み(12%)
- 自律神経(6%)
多くの方がイメージされているように、「不安」や「リラックス」といったメンタルに関する目的が最も多いという結果になりました。
また、このアンケートでは「健康上抱いている願望や悩み」に関しては、「睡眠改善がしたい」という項目が2番目に多かったということも分かっています。
PCAT(カンナビノイド医療患者会)とは

おうめ薬局と薬剤師・荒川快生はCBD100mgカプセルの提供等を通じてPCAT(カンナビノイド医療患者会)の活動を応援しています。
参考文献
- Cannabis use and depression: a longitudinal study of a national cohort of Swedish conscripts
- Antidepressant-like effects of cannabidiol in mice: possible involvement of 5-HT1A receptors
- Cannabidiol induces rapid-acting antidepressant-like effects and enhances cortical 5-HT/glutamate neurotransmission: role of 5-HT1A receptors
- 5-HT1A receptors are involved in the cannabidiol-induced attenuation of behavioural and cardiovascular responses to acute restraint stress in rats
- Cannabidiol enhances anandamide signaling and alleviates psychotic symptoms of schizophrenia
- Cannabidiol in Anxiety and Sleep: A Large Case Series
- Cannabidiol presents an inverted U-shaped dose-response curve in a simulated public speaking test
- The anxiolytic effect of cannabidiol depends on the nature of the trauma when patients with post-traumatic stress disorder recall their trigger event
- Cannabidiol lowers incidence of diabetes in non-obese diabetic mice