天然成分である「CBD」は、美容やセルフケアだけでなく、医療業界からも注目を集めています。
そんなCBDですが、近年「摂取するとアレルギーを引き起こす」といった噂を聞くことが増えてきています。
皆さんの中にも、「CBDを摂取するとアレルギー症状を引き起こすの?」と疑問をお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか?
今回は薬剤師の私が、「CBDはアレルギーを引き起こすのか」ということや、「CBDのアレルギー性疾患に対する効果」を解説したいと思います。
本記事を読むことで、CBDとアレルギー性疾患の関係性を理解することができるので、是非最後までご覧ください。
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そもそもCBDとは?
CBDとは、「cannabidiol(カンナビジオール)」の略称で、大麻草から抽出される「カンナビノイド」と呼ばれる成分の1つです。
「大麻から抽出される成分」と聞くと、不安を感じる方もいるかもしれませんが、実は大麻のような「精神活性作用」や「依存性」が無いことが分かっています。
CBDは安全性が高いことも明らかになっており、WHOやWADAなどの世界機関にも安全性の高さも認められています。
また、CBDは過去に行われた研究から、
- ストレス緩和
- 不眠の改善
- 肌トラブルの改善
- アンチエイジング効果
- てんかんの症状の緩和
- 吐き気の緩和
などの効果が期待されており、海外では医薬品としても利用されています。
近年、世界中でCBDの研究は活発に行われており、健康や美容・食品など様々な分野で活用が期待されています。
アレルギーとは?
アレルギーとは、体を守る免疫システムの異常によって、体の一部もしくは全体に痒みや発疹などの症状が起こる病気のことです。
厚生労働省の発表では、日本国民の3人に1人が何らかのアレルギー症状に悩んでいることが分かっており、日本でも重大な問題となっています。
ここでは、そんな「アレルギー」の原因や症状・種類・治療法について解説したいと思います。
アレルギーが起こる原因
人体には、細菌やウイルス・寄生虫などの異物から人体を守るため、「免疫」と呼ばれるシステムが備わっています。
簡単に言うと、アレルギーは、この人体に存在する「免疫システム」の働きが過剰に反応することで、食べ物や花粉などの体に害を与えない物質に反応することで起こります。
具体的なメカニズムとしては、まず、「アレルゲン(アレルギーの原因物質)」が体の中に入ると、異物として排除しようとする免疫システムが働き、「IgE抗体」という物質が作られます。
そして、再度「アレルゲン」が体内に入ると「IgE抗体」が反応して、「ヒスタミン」と呼ばれる物質が分泌され、痒みや発疹などのアレルギー症状が引き起こされます。
また、アレルギー疾患のほとんどは、体内に「アレルゲン」が侵入した直後から数時間以内という短い時間で症状が出ることが分かっています。
アレルギーの種類と症状
日本では、「アレルギー疾患対策基本法」によって、
- 気管支ぜん息
- アトピー性皮膚炎
- アレルギー性鼻炎
- 花粉症
- 食物アレルギー
- アレルギー性結膜炎
などの6疾患がアレルギー性疾患として指定されています。
アレルギーは、それぞれの種類によって異なる症状が引き起こされることが分かっています。
例えば、気管支喘息では、気管の慢性的な炎症や呼吸困難・咳などの症状が、アトピー性皮膚炎では、皮膚の発疹や痒みなどの症状が見られます。
また、これらのアレルギー症状は、「ストレス」や「質の低い睡眠」によって悪化する場合もあるため注意が必要となります。
アレルギー性疾患の疑いがある場合は、専門の医療機関を受診し、治療を受けることをおすすめします。
アレルギーの治療法
アレルギーには、主に「薬物療法」や「アレルゲン免疫療法」などの治療法が利用されています。
薬物療法には、「ステロイド薬」や「抗ヒスタミン薬」などが利用されますが、口の渇きや眠気、めまいなどの副作用が起こる可能性があります。
一方、アレルゲン免疫療法は「減感作療法」とも呼ばれており、「アレルゲン」を少量から投与し、アレルギー症状を和らげる治療法のことです。
この治療法は、治療期間が3〜5年と長いですが、根本的にアレルギーを治療することができるといった特徴があります。
CBDはアレルギーを引き起こす?
CBDの原料である「大麻草」は、花粉を生成することが分かっており、CBDを摂取することでアレルギー反応を引き起こす可能性があるとも言われています。
ただ、一般に流通しているCBD製品を利用したとしてもアレルギーを引き起こす可能性は非常に低いです。
なぜなら、花粉を生成するのは大麻草の「雄株」で、一般に流通しているCBD製品には「雌株」が利用されているからです。
稀に、CBD製品が原因でアレルギーを引き起こすこともありますが、それは低品質なCBD製品に含まれる「CBD以外の成分」が原因で起こると考えられています。
そのため、CBD製品によるアレルギーに不安を感じている方は、医師や薬剤師などの専門家が監修している高品質なCBD製品を利用することをおすすめします。
CBDはアレルギー性疾患に効果が期待されている
アレルギーを引き起こす可能性がある「CBD」ですが、実は過去の研究や調査から、アレルギー性疾患に対して効果が期待されています。
ここでは「CBDがアレルギー性疾患に効果を示した研究や調査」や「CBDのアレルギーに対するメカニズム」をご紹介したいと思います。
CBDがアレルギー性疾患に効果を示した研究や調査
ここでは、CBDがアレルギー性疾患に効果を示した研究や調査を3つご紹介します。
気管支喘息に対する研究
気管支喘息とは、痰や咳・息苦しさといった症状が起こるアレルギー性疾患の1つで、長い期間気道が炎症を繰り返すこともあると言われています。
2018年の動物を利用した研究では、CBDをアレルギー性喘息を患うマウスに投与することで、有用性が評価されました。
その結果、CBDはマウスの喘息によって起こる気道の炎症と線維化(組織の硬化)を軽減したことが示唆されました。
また、他の研究では、CBDには気管支を拡張する効果があることも示されており、喘息の症状を緩和することが示唆されています。
これらの研究は、動物実験レベルですが、CBDの喘息に対する新たな治療法としての可能性を示しており、今後に注目が集まります。
ただ、水蒸気を吸引するCBDベイプは、逆に気管支に炎症が起きたり、咳が止まらなくなる可能性があるためCBDオイルやCBDサプリメントを利用することをおすすめします。
アトピー性皮膚炎に対する研究
アトピー性皮膚炎とは、バリア機能が低下した状態の肌に、ダニやホコリなどの「アレルゲン」が侵入することで起こるアレルギー性疾患の1つです。
また、この疾患は皮膚の炎症と共に、発疹や痒みなどの症状が現れることも分かっています。
2014年のマウスを用いた研究では、アトピー性皮膚炎の症状とCB1受容体の関係性が調査されました。
CB1受容体とは、CBDなどの大麻に含まれる「カンナビノイド成分(CBGやCBN・THCなど)」が作用する受容体の1つです。
研究の結果、CB1受容体はアトピー性皮膚炎によって起こる炎症反応の抑制や、皮膚のバリア機能の改善に役立つ可能性があることが分かりました。
アトピー性皮膚炎にお悩みの方は、CBDを含むバームやクリームを患部に利用してみてもいいかもしれません。
花粉症に対する調査
CBDは上記のアレルギー疾患以外に、過去の調査から「花粉症」に対しても効果が期待されています。
2023年「株式会社ウェルファーマ」では、CBDベイプを5日間継続的に利用した方を対象にアンケート調査が行われました。
このアンケート調査は20〜60代の40名の利用者を対象にして行われ、対象者の30%は花粉症の薬を服用していました。
調査の結果、CBDベイプを利用した対象者の92.5%が「花粉症の各種症状が緩和された」と回答したことが明らかになりました。
さらに、この調査では、92.5%が「CBDベイプを継続して利用したい」と回答したことも報告されました。
現段階では、CBDの花粉症に対する研究はありませんが、症状にお悩みの方は試しにCBDを摂取してもいいかもしれません。
CBDのアレルギー性疾患に対するメカニズム
実は、現状ではCBDのアレルギーに対するメカニズムは、完全には明らかになっていません。
ここでは、現段階で考えられているメカニズムを2つご紹介します。
T細胞の活性やヒスタミンの分泌を抑制する
アレルギーは、T細胞などの免疫細胞が体内に侵入した「アレルゲン」に反応し、「ヒスタミン」などの物質が分泌されることで起こるとされています。
一説では、CBDがT細胞の活性やヒスタミンの分泌を抑制することで、アレルギー反応を緩和しているのではないかと考えられています。
実際に、2010年に発表された論文では、CBDがT細胞の活性化を抑制する可能性が示唆されています。
また、2005年の研究では、CBDがアレルギー症状を起こす原因となる「ヒスタミン」の増加を防ぐ可能性があることも報告されています。
エンドカンナビノイドシステムに作用する
もう一つの見解では、CBDが人体のエンドカンナビノイドシステム(ECS)に作用することで、アレルギーを緩和していると考えられています。
ECSとは、人間にある身体調節機能のことで、「CB1」・「CB2」などの受容体などから構成されています。
実際に、上記でも説明したように、CBDが「CB1受容体」に作用することで、アトピー性皮膚炎によって起こる炎症反応の抑制や皮膚のバリア機能の改善に役立つ可能性が示唆されています。
これらのように、CBDのアレルギーに対するメカニズムは分かっていないため、今後の研究に期待が高まります。
CBDをアレルギーに利用する際の注意点
皆さんの中に、「CBDをアレルギー性疾患に利用してみたい…」という方は多いと思います。
では、実際にCBDをアレルギー性疾患に利用する際には、どういうことに注意する必要があるのでしょうか?
ここでは、CBDをアレルギー性疾患に利用する際の注意点を2つご紹介したいと思うので、利用したいと考えている方は是非参考にしてみてください。
医薬品との併用に注意する
CBDを摂取したいと考えてる方が「ステロイド薬」や「抗ヒスタミン薬」を利用している場合は、飲み合わせに注意する必要があります。
実はCBDは、肝臓に多く存在する「CYP450」と呼ばれる薬物代謝酵素の働きに対して影響を与えることが分かっています。
CBDが「CYP450」の働きに影響を与えると、「ステロイド薬」や「抗ヒスタミン薬」が代謝されにくくなり、意図しない効果や副作用が起こる可能性があります。
ただし、「日本臨床カンナビノイド学会」によると、CBDの1日の摂取量が2mg/kg以下だと、薬物代謝に影響を及ぼさないとされています。
そのため、体重が100kgの方はCBDの摂取する量が200mg以下、体重が60kgの方は摂取量が120mg以下であれば心配する必要はありません。
「ステロイド薬」や「抗ヒスタミン薬」を利用している方は、自分に合った量のCBDを摂取することで、安心・安全にCBDを利用しましょう。
CBDの過剰摂取に注意する
安全性の高いことが分かっているCBDですが、実は過剰摂取することで副作用が起こる可能性があることが分かっています。
そのため、CBDをアレルギー性疾患に利用する際には、CBDの過剰摂取に注意する必要があります。
具体的には、CBDの過剰摂取によって
- 眠気
- お腹が緩くなる
- 喉の渇き
- 肝機能障害
などの副作用が稀に引き起こされるとされています。
また、CBDオイルやカプセルなどのCBD製品に含まれる「MCT(ココナッツ)オイル」も過剰摂取することで、お腹が緩くなる・腹痛が起こるといった副作用が起こるので注意が必要です。
CBDを摂取して副作用を感じた場合は、摂取を一度やめる、または摂取量を減らすなどして様子を見ることをおすすめします。
ただ、CBDによる副作用が起こる可能性は低く、程度が軽いため、過度に心配する必要はないと言えます。
CBD薬剤師の質問コーナー
CBD製品を選ぶ際のポイントは?
CBD製品を選ぶポイントとしては、
- 信頼できるブランドを選ぶ
- CBD吸収率の高い商品を選ぶ
- 高濃度のCBDカプセルを選ぶ
- CBD1mgあたりの値段を確認する
などがあります。
特に、「信頼できるブランドを選ぶ」ことは、安全性の高いCBD製品を利用する上で非常に重要な要素となります。
信頼できるブランドを選びたいと考えている方は、「第三者機関の検査」や「成分表示」・「原材料名」などの有無を確認してみましょう。
CBDサプリメントってどんなCBD製品?
CBDサプリメントとは、「CBD成分」を含んだ健康補助食品のことであり、主にカプセル状で販売されています。
このCBD製品は胃酸の影響を受けにくく、CBDの効果をより体感しやすいといったメリットがあります。
また、CBDサプリメントは一般的なサプリメントや医薬品と同様に、水と一緒にのみこむことで摂取できます。
最近では、CBDサプリメントは、CBDオイルやCBDベイプといったCBD製品に比べて気軽に摂取できるため人気が高まっています。
参考文献
- Cannabidiol reduces airway inflammation and fibrosis in experimental allergic asthma
- The Effect of Phytocannabinoids on Airway Hyper-Responsiveness, Airway Inflammation, and Cough
- Cannabinoid 1 receptors in keratinocytes attenuate fluorescein isothiocyanate-induced mouse atopic-like dermatitis
- CBDベイプは『花粉症』の症状を緩和するか?ユーザー調査結果発表
- Cannabinoids as novel anti-inflammatory drugs
- Anti-inflammatory potential of CB1-mediated cAMP elevation in mast cells