皆さんは、近年注目を集めている「ナイアシンアミド」という成分をご存じでしょうか。
この成分は刺激が少なく、敏感肌の方でも使いやすいことから、多くのスキンケア製品に配合されています。
しかし、どんな優れた成分でも、必ずしも肌に合うとは限りません。実際に「ナイアシンアミド配合の化粧品で肌が荒れた」という声があるのも事実です。
この記事では、薬剤師である私が「ナイアシンアミドが肌に合わない人の特徴」をわかりやすく解説します。
記事の後半では、美容効果が期待されている「CBD」という成分に関してもご紹介したいと思います。
そもそもナイアシンアミドとは?
ナイアシンアミドが肌に合わない人は一定数いらっしゃいますが、そもそもこれはどういった成分なのでしょうか。
ここでは、「ナイアシンアミドとはどういった成分か」ということを解説したいと思います。
ビタミンB3の一種
ナイアシンアミドは、ビタミンB群のひとつである「ビタミンB3」の一種で、「ニコチン酸アミド」とも呼ばれます。
タラコやカツオ、キノコ類などの食品に多く含まれており、食事からの摂取のほか、体内では必須アミノ酸のトリプトファンからも合成されます。
刺激が少なく肌にやさしい点や、光や熱に強く安定性が高い性質から、化粧水や美容液など多くの化粧品に活用されています。
期待されている美容効果

ナイアシンアミドは、化粧品などを通じて肌に直接届けることで、様々な美容効果を発揮すると期待されている成分です。
主な美容効果としては、以下のようなものが挙げられます。これらの効果により、ナイアシンアミドは年齢や肌質を問わず幅広い人に注目されている美容成分となっています。
- 美白・シミ予防
- シワ改善
- ニキビ予防
- 保湿・バリア機能のサポート
- 毛穴の引き締め効果
日本では、ナイアシンアミドは2007年に美白効果、2018年にはシワ改善効果について、厚生労働省から医薬部外品有効成分として認可されています。
ナイアシンアミドが合わない人の特徴は?
ここでは、「ナイアシンアミドが合わない人の特徴」や「肌に合わない場合に起こる症状」について解説したいと思います。
ナイアシンアミドが合わない人の特徴
刺激が少なく肌にやさしいナイアシンアミドですが、実際に肌に合わない人も一定数いらっしゃいます。
以下のような方は、ナイアシンアミドが肌に合わない場合があるため、注意が必要です。
- 敏感肌・超敏感肌の人
化粧品を使うとすぐに赤みやかゆみが出てしまう方や、季節の変わり目に肌がゆらぎやすい方は、ナイアシンアミドにも反応する可能性があります。
- アレルギー体質の人
ビタミンB群のサプリメントや特定の化粧品でアレルギー症状を起こした経験がある方は注意が必要です。ナイアシンアミドそのものや、製品に含まれる他の成分に反応することがあります。
- バリア機能が低下している人
乾燥によるひび割れや皮むけ、炎症などがある状態の肌は、外部刺激に過敏になっています。このようなときにナイアシンアミドを使うと、ヒリヒリしたり赤みが出ることがあります。
こうした特徴に当てはまる方がナイアシンアミドを利用する場合は、自分の肌の状態を見ながら慎重に取り入れることが大切です。
ナイアシンアミドが合わない場合に起こる症状
ナイアシンアミドが合わない場合に起こる主な症状を4つご紹介したいと思います。
肌荒れ・ニキビ

ナイアシンアミドは通常、皮脂分泌の調整に寄与し、ニキビ予防にも効果が期待されますが、一部の方では逆にニキビや肌荒れが増えることがあります。
これは、製品の濃度が高すぎる場合や肌が敏感な状態であるときに、皮脂バランスが急激に変化して毛穴の詰まりや炎症を引き起こす可能性があるためです。
赤み・ピリピリ感
ナイアシンアミドを塗った直後に肌が赤くなったりピリピリとした刺激を感じるのは、濃度が高すぎる製品によって一時的に神経を刺激するためと考えられます。
特に、乾燥や皮むけがあるなどバリア機能が低下している状態では、成分の浸透が過剰になり、表皮が過敏に反応してしまいます。
頬や目のまわりなど皮膚の薄い部分では、こうした反応がより出やすくなります。
かゆみ・炎症
かゆみや炎症が現れる場合は、ナイアシンアミドや製品に含まれる他の成分に対して、免疫系がアレルゲンとして反応している可能性があります。
これはアレルギー性接触皮膚炎の一種で、初めは軽い違和感でも、繰り返すうちに悪化するケースもあります。
赤みや発疹、じんましんを伴うようであれば、アレルギー性の炎症を疑い、早めに使用を中止する必要があります。
ナイアシンフラッシュ

ナイアシンフラッシュは、本来はナイアシン(ニコチン酸)を経口摂取した際に起こる、血管拡張による一時的な皮膚のほてりや赤み、かゆみといった現象です。
皮膚にも同様に高濃度のナイアシンアミドが作用することで、プロスタグランジン(PGD₂・PGE₂)の生成が促され、血管が拡張することで表れることがあります。
好転反応が起こる場合もある
好転反応(こうてんはんのう)とは、スキンケアやサプリメント、漢方、整体などのケアを始めた際に、体や肌が変化に適応しようとする過程で、一時的に不調のような症状が現れることを指します。
「めんげん反応(瞑眩反応)」とも呼ばれ、回復に向かう途中で一時的に悪化したように見えるのが特徴です。
具体的には、肌の場合、赤みやかゆみ、吹き出物、ニキビなどが出ることがありますが、数日〜1週間程度で自然に落ち着くとされます。
ナイアシンアミドを使用した場合も、稀にこうした好転反応のような現象が起こることがあります。
ナイアシンアミドには、皮脂分泌の調整やターンオーバーの促進作用があるため、肌の代謝が活発になり、毛穴に詰まっていた皮脂や老廃物が表面に押し出されることがあります。その過程で、一時的にニキビや吹き出物、ムズムズ感などが生じることがあります。
このような反応は、肌が新しい成分に慣れていく過程で一時的に起こるもので、軽度で短期間(数日〜1週間程度)でおさまる場合は、好転反応の可能性があるとされています。
ただ、症状が悪化する・長引く・かゆみや炎症が強い場合は、好転反応ではなく「肌に合っていないサイン」の可能性もあるため注意が必要です。
自己判断が難しい場合は、使用を中止し、皮膚科専門医に相談するのが安心です。
ナイアシンアミドを利用する際のポイント

成分の効果を十分に引き出し、肌トラブルを防ぐためには、使い方にも注意が必要です。
以下のポイントを意識することで、ナイアシンアミドを安全かつ効果的に取り入れることができます。
- 濃度に注意する
初めてナイアシンアミドを使う場合は、低濃度(2〜5%程度)の製品から始めるのがおすすめです。
- パッチテストを行う
新しい製品を使用する前には、必ずパッチテストを行いましょう。耳の後ろや腕の内側などに少量塗布し、24時間程度様子を見ることで、刺激やアレルギー反応の有無を確認できます。
- 段階的に使用頻度を上げる
いきなり毎日使うのではなく、週に2〜3回からスタートし、肌に問題がなければ徐々に頻度を増やしていくと、肌への負担を最小限に抑えられます。
- 使用後はしっかりと保湿する
ナイアシンアミドには皮脂分泌を抑える働きもあるため、乾燥しやすくなることがあります。使用後は化粧水や乳液、クリームなどでしっかり保湿することが重要です。
- 肌の状態を見ながら使い分ける
肌が敏感になっている時や、赤み・炎症が出ているときは、使用を中止して肌を休ませましょう。肌の調子が良いときに使うことで、より効果を実感しやすくなります。
これらのポイントを意識してナイアシンアミドを取り入れることで、肌にやさしく、効果的なスキンケアが期待できます。自分の肌状態を観察しながら、慎重に取り入れることが大切です。
ナイアシンアミドが合わない人はCBDもおすすめ
上記では、「ナイアシンアミドが合わない人の特徴」について解説しました。
ここでは、美容効果が期待されている「CBD」という成分についてご紹介したいと思います。
CBDは大麻由来の天然成分

CBDとは、「カンナビジオール(Cannabidiol)」の略で、大麻草(ヘンプ)から抽出される天然成分です。
「大麻」という言葉に抵抗を感じる方もいるかもしれませんが、CBDは精神活性作用や依存性がなく、違法成分のTHCとはまったく異なる成分です。
CBDには「睡眠の補助」や「リラックス効果」・「ストレスの緩和」といった複数の効果が期待されています。
近年では、美容目的でCBDを取り入れる人も増えてきています。例えば、2020年に行われた調査では、CBD製品の利用者のうち、約10%が「肌改善や美容目的」で使用していると回答しています。
実際に、モデルのローラさんやタレントの小嶋陽菜さんといった著名人も、CBDをスキンケアや美容の一環として取り入れていることで知られています。
肌に対しても美容効果が期待されている
スキンケアにおいては、コラーゲンやヒアルロン酸といった成分がよく知られていますが、実はCBDにも肌のコンディションを整える働きが期待されています。
ここでは、そんなCBDが持つ肌への主な効果を3つに絞ってご紹介します。
肌の保湿をサポートする
CBDには、乾燥を和らげる保湿サポート効果が期待されており、肌の水分保持力を高める成分として注目されています。
実際に2021年に発表された研究では、濃度1%のCBD溶液をマウスの皮膚に塗布したところ、水分量が約1.3倍に増加したという結果が報告されました。
一方で、同じ実験において濃度3%のCBD溶液では保湿効果があまり見られなかったという記述もあり、CBDは「多く塗れば効果が高まる」という単純なものではないことが示唆されています。
つまり、CBDによる保湿ケアは適切な濃度で使うことが重要であり、肌にとってちょうど良いバランスを見極めることが、美肌を保つポイントといえるでしょう。
ニキビを改善する

CBDは、ニキビの改善にも効果が期待される成分の1つです。
ニキビの主な原因は、皮脂の過剰分泌によって毛穴にアクネ菌が繁殖し、炎症を引き起こすこととされています。この点において、CBDは有望な働きを持っていると考えられています。
例えば、2014年に行われた研究では、CBDが皮脂の分泌を抑制し、炎症を和らげる作用があることが細胞実験レベルで明らかになりました。
この結果は、CBDがニキビケアに有用である可能性を示唆するものであり、今後のさらなる研究にも注目が集まっています。
最近では、CBDを配合したスキンケア商品も多数登場しており、ニキビや皮脂トラブルに悩む方にとって、新たな選択肢となるかもしれません。
ニキビやアトピーなどの傷跡を改善する
実はCBDには、肌の傷跡を目立ちにくくする効果も期待されています。
イタリアで行われたある研究では、アトピーやニキビによる傷跡のある被験者20名に対し、CBD配合の軟膏を1日2回・90日間塗布する臨床試験が行われました。
その結果、CBD軟膏を使用した患者の多くが、皮膚疾患による傷跡の改善や消失が見られたと報告されています。
この結果から、CBDは肌の再生をサポートし、傷跡やダメージ肌の回復を助ける可能性があると考えられています。
肌の傷跡やざらつきが気になる方は、CBD配合のクリームやバームをスキンケアに取り入れてみるのも1つの方法です。
まとめ
ナイアシンアミドは、美白やシワ改善、保湿など多くの美容効果が期待される成分であり、比較的低刺激で使いやすい点から多くのスキンケア製品に採用されています。
一方で、敏感肌やアレルギー体質の方、バリア機能が低下している方にとっては、まれに赤みやかゆみといった刺激を感じるケースもあるため、自身の肌状態を見極めながら慎重に取り入れることが大切です。
また、ナイアシンアミドが合わなかった方や別のアプローチを試してみたい方には、CBDという選択肢もあります。
CBDは近年、美容分野でも注目を集めており、保湿やニキビ予防、肌の傷跡ケアなどさまざまな可能性が研究されています。
どちらの成分も使い方や濃度に注意すれば、美肌づくりの強い味方になります。自分の肌質や悩みに合わせて、最適な成分を選び、無理なく続けられるスキンケアを心がけましょう。
参考文献
- Cannabidiol Application Increases Cutaneous Aquaporin-3 and Exerts a Skin Moisturizing Effect
- Cannabidiol exerts sebostatic and antiinflammatory effects on human sebocytes
- A therapeutic effect of cbd-enriched ointment in inflammatory skin diseases and cutaneous scars

日本薬剤師研修センター研修認定薬剤師
日本臨床カンナビノイド学会認定登録師
所属学会:日本薬理学会、日本緩和医療薬学会、日本在宅薬学会、日本臨床カンナビノイド学会