皆さんは、スキンケアの定番成分として知られる「ビタミンC」と「ナイアシンアミド」をご存じでしょうか。
どちらも美白やエイジングケアに有効とされ、近年は2つを組み合わせた製品も数多く登場しています。
しかし、「併用すると効果がなくなる」といった疑問や不安の声も少なくありません。
この記事では、薬剤師である私が「ビタミンCとナイアシンアミドを併用しても大丈夫か」ということをわかりやすく解説します。
さらに記事の後半では、近年スキンケアで注目を集めている「CBD」という成分についても紹介し、美肌づくりの新たな選択肢をお伝えします。
ビタミンC・ナイアシンアミドとは?
ビタミンCとナイアシンアミドは、ともに栄養素として体に欠かせないだけでなく、スキンケアの世界でも長年注目されてきた成分です。
ここではまず、両成分の基本的な特徴や役割を整理し、スキンケアでどのように活用されているのかを見ていきましょう。
ビタミンCとは

ビタミンC(アスコルビン酸)は、人の体に欠かせない水溶性ビタミンの1つで、食事やサプリメントとして広く摂取されています。
スキンケアにおいては、美白やエイジングケアに有効な成分として古くから研究され、多くの化粧品に配合されてきました。
ただし、純粋なビタミンCは不安定で壊れやすいため、近年では安定性を高めた「ビタミンC誘導体」が数多く用いられています。
ビタミンCは健康面でも欠かせない栄養素であり、スキンケア成分としても幅広く活用されているのが特徴です。
ナイアシンアミドとは
ナイアシンアミドは、ビタミンB群の一種であるビタミンB3(ニコチンアミド)として知られる水溶性ビタミンです。
体内ではエネルギー代謝や酵素反応をサポートする役割を持ち、栄養素としても健康維持に欠かせない存在です。
スキンケアの分野では、長年にわたって研究が進められてきた実績のある成分で、美容液や化粧水、クリームなど幅広い製品に配合されています。
ナイアシンアミドは安定性が高く、光や熱に強いため処方しやすいのも特徴で、近年では「使いやすく続けやすい美容成分」として注目されています。
ビタミンCとナイアシンアミドの併用は本当にダメ?

「ビタミンCとナイアシンアミドを一緒に使うと効果がなくなる」という説を目にしたことがある人も多いのではないでしょうか。
実はこれは、古い研究の解釈に基づいて広まった誤解です。当時は成分が不安定な条件で検討されており、現在のスキンケア製品の処方や使用環境とは大きく異なっていました。
現在の研究では、この2つの成分を通常の条件で併用しても効果が失われることはなく、むしろ美白やエイジングケアにおいて相乗効果を発揮することが確認されています。
つまり、「ビタミンCとナイアシンアミドは併用できない」というのはもはや過去の話。最新の研究ではより高い美肌効果を得られることが明らかになっています。
ビタミンCとナイアシンアミドの併用による肌への効果
ビタミンCとナイアシンアミドは、それぞれ単独でも美肌に有効な成分ですが、併用することでより高い効果が期待できます。
ここでは、美白・ニキビ改善・エイジングケアの3つの観点から、その相乗効果を解説します。
美白効果
ビタミンCとナイアシンアミドを組み合わせることで、美白効果を一層高めることが期待できます。
ビタミンCはシミやそばかすの原因となるメラニンの生成を抑制します。
メラニンは本来、紫外線などから肌を守るために作られるものですが、過剰に生成されると色素沈着の原因となります。
一方、ナイアシンアミドは生成されたメラニンが肌表面に移動するのを防ぐ「門番」のような役割を果たします。
この2つを併用することで、メラニンの「生成」と「表面への移行」の両方をブロックでき、効率的に透明感のある肌を目指すことができます。
実際に、2022年の研究ではビタミンCとナイアシンアミドを含む処方が紫外線によるメラニン生成や色素沈着を抑制し、美白効果を示したことが報告されています。
エイジングケア効果

年齢を重ねると、肌のコラーゲン量が減少し、ハリや弾力が失われてシワやたるみが目立ちやすくなります。こうした変化は加齢による代表的なサインであり、エイジングケアの重要なターゲットです。
ビタミンCはコラーゲンの生成を促進することで、失われがちなハリを取り戻し、弾力のある若々しい肌をサポートします。
一方、ナイアシンアミドはバリア機能を強化して乾燥や環境ストレスから肌を守り、炎症や酸化によるコラーゲン分解を防ぐことで、弾力維持に間接的に貢献します。
これらを併用することで、コラーゲンを「作る力」と「守る力」の両面からサポートでき、総合的に健やかで若々しい肌を維持するエイジングケア効果が期待できます。
実際に、2022年の研究では、ビタミンCとナイアシンアミドを組み合わせた処方が肌の弾力改善に寄与することが報告されており、こうした知見も両成分の相乗効果を裏づけています。
ニキビ改善効果
ビタミンCとナイアシンアミドは、それぞれ異なるメカニズムで作用しながらも、互いを補い合うことでニキビの予防や改善に役立つ可能性があります。
ビタミンCは強力な抗炎症作用を持ち、赤みや炎症を鎮めるとともに、コラーゲンの生成を促進して肌の修復を助けます。そのため、すでにできてしまったニキビ跡の改善に有効です。
一方、ナイアシンアミドは皮脂の分泌を調整して毛穴の詰まりを防ぎ、新たなニキビの発生を抑制します。さらに肌のバリア機能を強化することで外部刺激から肌を守り、健康な状態を保つ働きもあります。
こうした両成分の相乗効果によって、既存のニキビの治癒を促進しながら新しいニキビの発生を防ぐことが期待できます。
併用時にまれに起こる副作用と正しい対応方法

ビタミンCとナイアシンアミドは比較的安全性の高い成分ですが、人によっては併用により副作用が現れることがあります。主な症状には次のようなものがあります。
- 赤み
- かゆみ
- ヒリつきや刺激感
これらは、肌が成分に慣れていない場合や使用濃度が高すぎる場合に起こりやすいとされています。安心して使い続けるために、以下のような対処法を覚えておくとよいでしょう。
- 使用を一時中止し、肌の状態が落ち着くまで様子を見る
- 症状が改善したら、低濃度の製品から少しずつ再開する
- 症状が長引く場合や強い不快感がある場合は、皮膚科医に相談する
肌の反応には個人差が大きいため、日々の状態を注意深く観察し、自分に合った使い方を見極めることが大切です。
初心者がビタミンCとナイアシンアミドを併用する際のポイント
ビタミンCとナイアシンアミドは、併用することで美白やエイジングケアに役立つ成分ですが、正しい使い方を知ることが大切です。
特にスキンケア初心者にとっては、配合濃度や使用順序を工夫することで、より安心して効果を実感しやすくなります。ここでは、実際に併用する際に押さえておきたい基本的なポイントを紹介します。
配合濃度に注意する
ビタミンCとナイアシンアミドを併用する際は、まず配合濃度に注意しましょう。
初心者に使いやすい範囲は、ビタミンCが2〜10%、ナイアシンアミドが2〜5%程度とされており、この濃度なら比較的肌に取り入れやすいと考えられています。
初めて使用する場合は、次のようなステップを踏むのがおすすめです。
- 単独で試す:ビタミンC、ナイアシンアミドをそれぞれ個別に使用し、肌の反応を確認する。
- 低濃度から始める:問題がなければ、低濃度の組み合わせから併用を開始する。
- 様子を見ながら調整:肌の状態を観察しつつ、必要に応じて濃度を段階的に上げていく。
使用する順番とタイミングを工夫する

ビタミンCとナイアシンアミドを組み合わせて使うときは、使う順番とタイミングが効果を左右します。基本の流れは 「ビタミンC配合製品 → ナイアシンアミド配合製品」 です。
これは、ビタミンCが水溶性で浸透が早いため、先に使うことで成分を効率的に届けられるからです。その後に安定性の高いナイアシンアミドを重ねることで、相乗効果を発揮しやすくなります。
また、時間帯によって使い分けるのもおすすめです。
- 朝:ビタミンC配合製品
- 抗酸化作用で紫外線などによる日中のダメージから肌を守る。
- 夜:ナイアシンアミド配合製品
- 睡眠中の肌の修復や再生をサポートする。
ただし、最適な使い方は肌質や生活リズムによって異なります。自分の肌の調子を観察しながら、負担のない方法を見つけることが大切です。
肌ケアに注目される成分「CBD」について
美白やエイジングケアの定番成分といえば、ビタミンCやナイアシンアミドがよく知られています。これらに加えて、近年スキンケアの分野で新たに注目を集めているのが「CBD(カンナビジオール)」です。
健康分野でのリラックス効果や睡眠サポートのイメージが強いCBDですが、実は肌にもうれしい作用が期待できることが研究で示されてきました。
ここでは、美容成分としてのCBDの特徴や肌への働きについて整理します。
そもそもCBDとは?
CBD(カンナビジオール)は、大麻草(ヘンプ)から抽出される天然由来の成分です。
大麻に含まれる精神作用成分THCとは異なり、CBDには精神を高揚させる作用や依存性がなく、安全に利用できることが確認されています。
健康分野ではリラックス効果や睡眠の質向上が注目されていますが、近年ではスキンケアへの応用も広がっており、美容クリームや美容液などに配合されるケースが増えています。
また、製品のタイプも多様で、オイルやグミ、カプセルといった形で販売されています。
特にスキンケア分野ではクリームやジェルタイプのアイテムが人気で、肌をやさしく整えながら健やかな状態へ導くサポート成分として注目を集めています。
CBDの肌に期待される主な働き

研究や臨床試験の報告によると、CBDには以下のような効果が示唆されています。
- 保湿サポート
2021年の研究では、1%濃度のCBDを皮膚に塗布すると水分量が約1.3倍に増加したと報告されています。
- ニキビケア
2014年の研究では、CBDが皮脂分泌を抑えつつ抗炎症作用を示し、ニキビの原因にアプローチできる可能性が示されています。
- 傷跡の改善
CBD配合の軟膏を3か月使用した臨床試験では、アトピーやニキビによる瘢痕(はんこん)が改善したとの報告があります。
- 紫外線からの保護
2021年の研究では、紫外線を浴びた皮膚細胞で酸化ストレスを抑え、細胞損傷を防ぐ作用が確認されました。
このように、CBDは保湿・ニキビケア・傷跡改善・紫外線ダメージ対策といった多方面での効果が期待される成分です。
ビタミンCやナイアシンアミドと同様に、美肌づくりを支える新たな選択肢のひとつとして注目してみても良いでしょう。
まとめ
ビタミンCとナイアシンアミドは、それぞれ単独でも美肌づくりに有効な成分ですが、併用することで美白・エイジングケア・ニキビ対策など多方面に働きかけられる可能性があります。
一方で、配合濃度や使用方法を工夫しないと肌に刺激を感じることもあるため、初心者の方は低濃度から始めて肌の様子を見ながら調整するのがおすすめです。
さらに近年は、CBDのような新しい美容成分も注目されており、スキンケアの選択肢はますます広がっています。
自分の肌質や目的に合わせて取り入れることで、より健やかで透明感のある肌を目指すことができるでしょう。
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日本薬剤師研修センター研修認定薬剤師
日本臨床カンナビノイド学会認定登録師
所属学会:日本薬理学会、日本緩和医療薬学会、日本在宅薬学会、日本臨床カンナビノイド学会