「かかりつけ薬局」・「かかりつけ薬剤師」という言葉を聞いたことはありますか?
病院やクリニックを受診した後、処方箋を持って行く薬局は日常生活の中で当たり前の存在ですが、実は「自宅近くの薬局」や「性格の合う薬剤師」のもとに継続的に通うことが、平常時だけでなく災害時にも大きなメリットをもたらします。
本記事では、かかりつけ薬局・かかりつけ薬剤師が必要な理由をわかりやすく解説します。
また、薬剤師が災害時にどのような役割を果たしているのか、その重要性にも触れます。
かかりつけ薬局とは
かかりつけ薬局とは、患者さんが継続的かつ主体的に利用する薬局のことです。
自宅や職場の近くなど通いやすい立地であることや、薬剤師との相性の良さから選ばれます。
患者さんのお薬の履歴・副作用のリスク・アレルギー情報などを一括して管理するため、複数の医療機関を受診していても安全かつ適切な薬学管理を行いやすくなります。
今後は国の医療データのDX化によって、他の薬局の処方等も共有されていきますが、完全な実現まではまだ時間がかかります。
患者さんが飲んでいる薬の在庫確保の役割も担うため、患者さんの利便性の向上につながります。
かかりつけ薬剤師とは
かかりつけ薬局の中でも、患者さん一人ひとりの背景や健康状態を把握し、総合的な薬学管理を担う薬剤師を「かかりつけ薬剤師」と呼びます。
薬の飲み合わせや効き目、副作用・相互作用、日常生活での注意点などを丁寧に指導し、患者さんの健康をトータルでサポートする役割を担っています。
なぜ、かかりつけの薬局・薬剤師が必要なのか?
かかりつけ薬局や薬剤師を持つべき理由は数多くありますが、特に重要なのが「災害時の対応」と「お薬の在庫確保」です。
以下に2024年1月に起きた能登半島地震の災害派遣薬剤師として活動した体験を踏まえながら、その必要性を詳しく解説します。
災害時、遠くの薬局に行くのは困難
私は2024年1月後半に石川県輪島市へ東京都薬剤師会第7班として派遣されました。
現地は発災から20日くらい経っていたにも関わらず、上下水道やガスは復旧しておらず、道路の補修作業の進捗も遅れていました。
唯一、電気だけは復旧している状況でした。
能登半島を縦断する道路の内、当時、輪島市役所方面へ通行可能な道路は1本しかなく、自衛隊や警察車両、自治体等の関係機関の車で大渋滞が発生することもありました。
そのため我々が派遣されていた時は、拠点である柴垣町の「国立能登青少年交流の家」から朝4~6時に出発し、2~2.5時間かけて車で輪島市へ移動していました。
道路の地割れ、がけ崩れ、マンホールの浮き上がり、電信柱の切断、建物の倒壊により一般車両での通行が非常に困難でした。
関東でこのような事態が発生すれば人口の多さに起因する復旧の遅れが原因で、遠方への受診や薬の受け取りはとても困難になる可能性が高いです。
鉄道の全線復旧には半年以上かかる可能性がある
災害時には鉄道やバスなどの公共交通機関がストップ・減便するケースが多く、復旧までに数か月かかることも珍しくありません。
阪神淡路大震災では、全線復旧に約半年を要したという事例もあります。
自宅から遠方のかかりつけ薬局や病院しか利用していない場合、災害時に薬を受け取れないリスクが非常に高まります。
お薬の在庫確保
現在、咳止めの薬をはじめ、多く薬剤で出荷調整が相次ぎ、平時の現在でさえ薬の確保が難しい状況にあります。
かかりつけ薬局・薬剤師であれば、患者さんの服用歴や必要なお薬を把握しているため、在庫確保の調整をあらかじめ行いやすいというメリットがあります。
災害時こそ、普段からの信頼関係と情報共有が大きく役立ちます。
災害時の薬局・薬剤師の対応
能登半島地震の後、薬剤師がどのような活動を行っていたか、まとめました。
- 薬局を開局し、薬の確保・調剤を行う
- 災害処方箋に基づく調剤と、かかりつけ薬局から患者さんのいる避難所へお薬のお届け・服薬指導
- 避難所の環境衛生検査
- 医薬品の管理者不在の避難所から、医薬品の回収
- 輪島市保健医療福祉調整本部(輪島市役所2階)にて各種調整作業
薬局を開局し薬の確保・調剤を行う
「薬局の開局」は当たり前のように聞こえるかもしれません。
しかし、薬剤師自身も被災者であるため、我が身を顧みず患者さんのために仕事をされておられた姿が記憶に新しいです。
今回の能登半島地震後も開局していた薬局の薬剤師の先生方はとても苦労されていました。
なぜなら断水していてトイレや風呂、洗濯、洗面が自由にできない環境下で仕事をせざるを得なかったからです。
その甲斐あって、かかりつけの患者さんは自宅近くの薬局で薬を受け取ることができていました。
災害処方箋に基づく調剤と、かかりつけ薬局から患者さんのいる避難所へお薬のお届け・服薬指導
自宅が損壊したりしてしまった方は、避難所へ避難しておられました。
そのため、定時薬はかかりつけの薬局で調剤し、お薬を受け取る。
臨時の処方薬の場合は、薬局機能を備えた災害対策医薬品供給車両「モバイルファーマシー」でお薬を調剤し、患者さんへお薬をお渡ししていました。
避難所の環境衛生検査
輪島市各所に点々としていた避難所を各県薬剤師会の先生方とチームを組み、避難所内のCO₂濃度測定、体調変化等によりDMATや日本赤十字へ受診勧奨していました。
医薬品の管理者不在の避難所から、医薬品の回収
災害発生後の急性期から慢性期への移行に伴い、厚生労働省や薬剤師会等から配布された管理者不在のOTC医薬品を、避難所から回収しました。
輪島市保健医療福祉調整本部(輪島市役所2階)にて各種調整作業
DMATやTMAT,日本赤十字等の災害医療チームが発行した災害処方箋等の受付、各種調整作業にあたった。
かかりつけ薬局・薬剤師を持つことの重要性
かかりつけ薬局・かかりつけ薬剤師を利用するメリットは、単に「処方箋を出してもらうだけ」ではありません。
- 服薬状況を一元管理できるので、複数の医療機関を受診していても安全に薬を使い続けられる
- お薬の在庫確保がスムーズになり、緊急時も、いつも飲んでいる薬が手に入りやすい
- 災害時も、近くの薬局で薬を受け取れるため、交通インフラが寸断されても徒歩で行ければ安全
- 薬剤師も災害時・新興感染症発生初期の地域医療を支える存在のため、安心
「病院やクリニックの隣にある薬局に行くのが当たり前」「処方箋をもらったらとりあえず近所にある薬局に行けばいい」という考え方から、自分や家族が信頼できる薬局を“かかりつけ”にする意識へシフトすることが、これからの時代には非常に重要です。
日頃から通いやすい場所と薬剤師とのコミュニケーションを大切にしておくことで、いざというときの備えになるのはもちろん、健康相談もしやすくなり、長期的な健康管理に役立ちます。
おうめ薬局の取り組みと設備
おうめ薬局では、かかりつけ薬局としての機能を維持できるよう、平常時はもちろん、災害時にも患者様が安心してお薬を受け取れるよう、さまざまな取り組みを行っています。
災害に備えた設備を有している
おうめ薬局ではお薬の調剤記録を確認できるよう、一定時間の停電に耐えられる設備を有しています。
かかりつけの患者様であれば、お薬手帳が手元になくても記録を確認できます。
新興感染症発生初期から医療を提供できる体制を整備
おうめ薬局は新興感染症発生初期から医療を提供する医療機関として、東京都知事から第二種協定指定医療機関に指定されています。
第二種協定指定医療機関とは
・新型インフルエンザ等感染症
・指定感染症
・新興感染症
上記の感染症の発生・まん延初期であると厚生労働大臣が公表し、東京都知事からの要請を受け、自宅療養者・宿泊療養者・高齢者施設・障碍者施設へオンライン服薬指導及び薬剤の配送、訪問による服薬指導、健康観察を行う体制を有している医療機関として都知事より指定を受けている薬局
抗原検査キットの取扱い
おうめ薬局では抗原検査キットを多数取り扱いしています。
事前にご購入いただくことで、自宅で検査が行えます。
病院の前にある薬局ではなく、あなたのかかりつけ薬局として、おうめ薬局でお薬をもらいませんか?