THCの効果は?合法なの?CBDとの違いと共に薬剤師が徹底解説

​2024年12月12日、日本において「大麻取締法」および「麻薬及び向精神薬取締法」の一部改正が施行されました。​

そんな中、一度はニュースなどで「THC」と呼ばれる大麻成分を耳にした経験がある方が多いのではないでしょうか?

本記事では、薬剤師である私が、そんな「THC」の違法性や効果・CBDとの違いについて詳しく解説したいと思います。

また、現在X(旧Twitter)Instagramにて、CBDを含む大麻成分に関する情報をエビデンスを基に発信しているので、是非チェックしてみてください!

この記事で分かること THCとCBDの違い
THCの違法性と安全性
THCに期待される効果

THCとは?CBDと何が違う?

THCとは、「TetraHydroCannabinol(テトラヒドロカンナビノール)」の略称で、近年日本でも注目を集めている「CBD」と同じ大麻由来の成分です。

ちなみに、この「THC」は「CBD」と「CBN」と並び、大麻草に100種類以上含まれる三大主成分の1つだといわれています。

ここでは、THCの違法性や安全性などをCBDと比較しながら解説したいと思うので、是非最後までご覧ください。

THCは違法、CBDは合法

THCとCBD

現在の日本の法律では、大麻由来成分の規制は「成分ごと」に行われており、「CBDは合法」、「THCは違法」と明確に区別されています。

かつては、大麻草のどの「部位」から成分が抽出されたかによって合法・違法が判断されていましたが、2024年12月の「改正大麻取締法」の施行により、現在は「成分ベースの規制」に変更されました。

そのため、CBDは合法であり、日本国内でも正規に流通・使用が可能です。

一方、THCは規制対象の成分となっており、所持・使用すれば1ヶ月以上7年以下の懲役刑が科されます。

さらに、営利目的でTHCを所持・使用・販売した場合には、刑罰が加重され、1年以上10年以下の懲役、または300万円以下の罰金、あるいはその両方が科される可能性があります。

THCは依存のリスクがあり、CBDは安全性が高い

皆さんの中に、「THCは違法」・「CBDは合法」といった規制内容になるのか疑問を感じている方はいませんか?

結論からいうと、THCが規制された理由の1つとして、THCがCBDと違い安全性が低いことが関係しているとされています。

実際、THCには幻覚や息切れ・喉の渇きといった副作用や、長期間の摂取による精神的依存があることが分かっています。

一方、CBDはTHCとは異なる薬理作用を示し、依存・乱用といったことが起こる可能性が低く、安全な成分であることが明らかになっています。

1980年の論文でも、CBDを摂取した被験者には、重い副作用や毒性が引き起こされなかったことが報告されています。

このように、CBDと違い安全性が低いTHCですが、THCの依存や副作用は、覚醒剤などの他の薬物と比較すると非常に弱く、過剰摂取したとしても死亡することはないいわれています。

THCはCBDと違い精神活性作用がある

THCで精神活性作用を感じている男性

「THCは違法」・「CBDは合法」といった規制内容になった理由としては、「キマる」ような精神活性作用の有無も関係していると考えられています。

実際、規制された「THC」には精神活性作用があり、規制されていない「CBD」には精神活性作用がありません

THCは、人体に対する作用機序が「CBD」とは異なるため、CBDと違い「キマる」ような精神活性作用があるとされています。

具体的には、THCは中枢神経に存在する「CB1」という受容体に「活性物質」として作用することで精神活性作用を引き起こすと考えられています。

一方、精神活性作用が無いCBDは「CB1」受容体に「阻害物質」として作用すると考えられています。

これらのことから、大麻成分を安全かつ合法的に利用したい方は「CBD」のみを含んだCBDアイソレートを利用することをおすすめします。

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THCの効果が期待される疾患

「THC」は、「鎮痛作用」や「睡眠の質の改善」・「食欲増進作用」など様々な効果が期待されています。

そんな「THC」ですが、実際にどのような疾患に対して有用性があるのでしょうか?

ここでは、THCの効果が期待される疾患を6つ解説したいと思うので、気になった方は是非最後までご覧ください。

神経痛などの痛みを伴う疾患

THCには「鎮痛作用」があるとされており、「神経痛」などの痛みを伴う疾患に対して効果が期待されています。

神経痛とは、疾患や運動状態などが原因で、腰や背中などに「痛み」や「しびれ」を感じる状態のことです。

2008年の研究では、神経痛に苦しむ患者に対して、THCを3.5〜7%含む「大麻」または「プラセボ(偽薬)」を投与し、有用性が評価されました。

この研究は、VAS(痛みの強さを評価する尺度)などの評価基準が用いられ、38名を対象に行われました。

その結果、プラセボに比べて、THCを3.5〜7%含む「大麻」を投与されたグループは、痛みのスコアが平均54%改善したことが報告されました。

この研究は、THCの神経痛などの痛みを伴う疾患に対する有用性を示しており、今後日本でも医療大麻が治療に利用されることが期待されます。

不眠症

不眠症を解消した女性

THCは睡眠の質を改善する効果があるとされており、「不眠症」に対して効果が期待されています。

2013年の研究では、睡眠時無呼吸症候群による不眠症を患う患者にTHCを投与することで、THCの睡眠に対する有用性が評価されました。

この研究では、1日に1回2.5〜5mgからTHCが投与され、最終的に1日1回10mgまで増量されました。

研究の結果、THCを投与された患者は、「AHI(睡眠時無呼吸症候群の評価基準)」のスコアが軽減し、不眠症が改善されたことが示唆されました。

「THC」の不眠症に対する臨床試験はあまり多く無いため、今後の更なる研究に期待が高まります。

拒食症

THCには「食欲増進作用」があるとされており、「拒食症」を改善する効果が期待されています。

拒食症とは、太ることに対する過剰な恐怖心などが原因で、過度な食事制限を行う状態のことです。

2017年の研究では、慢性拒食症患者10名に対してTHC(1〜2mg/kg)を投与し、有用性を評価する実験が行われました。

その結果、実験前に比べて、THCを投与された7名の患者には、体重の増加が見られたことが報告されました。

また、最も体重増加が見られた患者では、1か月で約4.5kgの体重が増加したことも明らかになりました。

この研究は、対象者数があまり多くありませんが、THCを含む大麻の「拒食症」に対する有用性を示唆しています。

今後、日本でも拒食症に対して医療大麻が利用されることで、拒食症に苦しんでいる方の負担が軽減されることを願います。

認知症

認知症を改善した女性

THCには、「認知症」の症状を緩和する効果が期待されています。

認知症とは、認知機能(記憶、判断力など)の低下によって社会生活に支障をきたす状態を指し、多くの場合介護が必要になります。

2022年のスイスの研究では、認知症患者にTHCを含む大麻を投与し、有用性が評価されました。

この研究は、MIBT(問題行動を評価する尺度)などの評価基準が用いられ、19名を対象に13ヶ月間行われました。

研究の結果、THCを含む医療大麻は「MIBT」などのスコアを半分以下にし、日常生活における問題行動を改善したことが報告されました。

この研究は対象者の数が十分ではありませんが、THCの「認知症」に対する有用性を示唆しています。

日本でも一刻も早くTHCを含む「医療大麻」が合法化されることによって、認知症の介護に携わる方の負担が軽減されることを願います。

トゥレット症候群

THCは過去の研究から、「トゥレット症候群」に対して効果が期待されています。

トゥレット症とは、「チック症状(意志と関係なく体が動くこと)」が複雑に現れる疾患のことです。

2022年の研究では、「トゥレット症候群」の患者にTHCを多く含む製品を投与し、有用性を評価する実験が行われました。

この実験は、YGTSS(チック重症度を評価する尺度)などの評価基準が用いられ、18名を対象に計12週間行われました。

研究の結果、THCを多く含む製品を投与された患者は、「YGTSS」の数値が平均38%低下し、症状が改善されたことが報告されました。

さらに、他の研究では、THCはトゥレット症候群の合併症である「強迫性障害」や「不安」を改善したことも示唆されています。

これらの研究は、「THC」の「トゥレット症」の治療に対する有用性を示しており、今後に期待が高まります。

自閉症

自閉症の女の子

THCは過去の研究から、自閉症の症状を改善する効果が期待されています。

自閉症とは、対人関係が苦手、物事に強いこだわりがあるなどといった特徴がある発達障害の一種です。

2021年の研究では、自閉症の患者33人に対してTHCを含んだ製剤を投与し、有用性が評価されました。

その結果、患者全体の内、10人(32.2%)は行動面での問題が減少し、7人(22.5%)は言語障害が改善されたことが報告されました。

また、4人(12.9%)は認知能力が改善され、 3 人 (9.6%) は対人能力が改善されたことも報告されました。

この研究結果は、THCを含んだ医療大麻の自閉症に対する新たな治療薬としての可能性を示唆しています。

CBD薬剤師の質問コーナー

CBDはTHCに変わる?

世間では、摂取した「CBD」が胃の中で「THC」に変化するという噂があります。

この噂は「胃の中でCBDがTHCに変化する」という記述が、2016年の論文内でされたことが原因であると考えられます。

しかし、結論から言うと、「CBDが体内でTHCに変化する可能性は低い」と言えます。

なぜなら、2016年の論文内の「CBDがTHCに変化した」という記述は、胃の中で起こったことではないからです。

論文を読むと、実際は、CBDをメチルアルコールと硫酸に溶解することで、THCに変化したという内容であり、体内での変化を証明するものではありませんでした。

実際に、CBDが体内でTHCに変わる可能性は低いということが他の論文で発表されています。

CBDはやめたほうがいいかはこちら

大麻はゲートウェイドラッグとなりうる?

日本では、大麻は「覚醒剤」などの危険薬物に繋がる「ゲートウェイドラッグ」として扱われています。

しかし、近年大麻は、複数の科学的根拠によって「ゲートウェイドラッグ」ではないことが示唆されています。

実際に、2020年のアメリカの研究では、「嗜好用大麻解禁」と「入院治療数」には、有意な相関関係が見られなかったことが報告されています。

さらに、日本では大麻事犯の検挙人員は年々増加している一方で、覚醒剤を含む全薬物事犯の検挙人員は減少傾向を示しており、大麻が「ゲートウェイドラッグ」ではない可能性を示唆しています。

日本において大麻は「ゲートウェイドラッグ」とされますが、それは「大麻」と他の「危険薬物」を混同させる教育や報道が関係しているともいわれています。

参考文献

  • Cunha, J. M., Carlini, E. A., Pereira, A. E., Ramos, O. L., Pimentel, C., Gagliardi, R., Sanvito, W. L., Lander, N., & Mechoulam, R. (1980). Chronic administration of cannabidiol to healthy volunteers and epileptic patients. Pharmacology, 21(3), 175–185. https://doi.org/10.1159/000137430
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