近年、大麻由来の成分である「CBD」はリラックス効果などから注目を集めており、日本でもオイルやベイプなど様々な種類の商品が販売されています。
そんな中、「THCV」と呼ばれる成分を見たり、聞いたりした経験がある方も多いのではないでしょうか?
今回は薬剤師である私が、THCVには「違法性があるのか」ということや、「キマるような精神活性作用があるのか」ということを解説したいと思います。
また、記事の後半では、似た成分である「THCPOとの違い」や、「THCVに期待される効果」も紹介しているので気になった方は最後までご覧ください。
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そもそもTHCVとは?
THCVとは、Tetrahydrocannabivarin(テトラヒドロカンナビバリン)の略称であり、CBDと同じく大麻草から抽出される「カンナビノイド」という成分の1つで、含有量が少ないことからレアカンナビノイドともいわれてます。
THCVは、過去の研究から様々な医学的利点があることが分かっており、海外では新たな治療薬としての可能性が期待されています。
ここでは、そんなTHCVの違法性・精神活性作用があるかなどについて詳しく解説します。
THCVは規制されており違法
近年日本では、「THCH」や「THCB」といった多くのカンナビノイドが「指定薬物」として規制が行われています。
そんな中、THCVも2023年の8月31日に厚生労働省によって「指定薬物」として薬機法により規制されており、所持や使用が違法となっています。
しかし、THCHやTHCBなどと違い、THCVは過去の研究から、「抗けいれん作用」や「神経保護作用」などの様々な医学的利点があることが分かっています。
そのため、THCVを指定薬物として完全に規制することは、
- これまでに自己治療の目的でTHCVを利用していた患者を窮地に追い込む
- THCVを使用する患者の来日などにも大きな制限がかかる
といった問題に繋がるのではないかと考えられています。
こういった問題を解決するためにも、CBD製品に含有されるTHCVなどのカンナビノイド成分は一定の基準値(0.3〜1.0%など)以下の場合のみ、使用を許可するといった規制緩和が必要となります。
THCVは精神活性作用が乏しい
これまでに、規制されたTHCHやTHCBなどのカンナビノイド成分は、共通して「強い精神活性作用」があるといった特徴がありました。
しかし、THCVは上記の成分と違い、摂取したとしても「精神活性作用」を感じる可能性が低いことが明らかになっています。
実際に2008年の研究では、THCVはCB1受容体に「アンタゴニスト(拮抗薬)」として作用し、精神活性作用を引き起こさないことが示唆されています。
一応、高用量のTHCVが精神活性作用を引き起こす可能性を示唆した研究もありますが、精神活性作用を感じるほど多量のTHCVを摂取することは現実的ではありません。
THCVが規制された理由
THCVを摂取したとしても「精神活性作用」を感じる可能性が低いことがお分かり頂けたと思います。
では、なぜTHCVはTHCHやTHCBなどと共に規制されたのでしょうか?
ここでは、THCVが規制されたことに対して考えられる理由を2つご紹介したいと思います。
THCと構造式が似ている
THCVが規制された1つ目の理由としては、構造式がTHCと似ていることが考えられます。
THCとは、精神活性作用や依存性・危険性がある大麻由来の成分の1つであり、日本では指定薬物として規制対象となっています。
日本では、THCに類似した成分を包括的に規制する傾向があるため、構造式が似ているTHCVも規制されたのではないかと考えられます。
ただ、構造式が似ているからといって、THCVはTHCと同様に危険性がある成分という訳ではありません。
実際に2016年の研究では、被験者にTHCV(1日最大10mg)を13週間投与した結果、目立った副作用がみられず、忍容性が良好であったことが報告されています。
この「忍容性が良好」とは、副作用がほとんど無く、仮にあったとしても非常に軽いという意味です。
デザイナーズドラッグとして販売されていた
THCVが規制された2つ目の理由としては、THCVがデザイナードラッグとしての側面を強調され、販売されていたことが考えられます。
デザイナードラッグとは、精神活性作用を得ることを目的として製造された向精神薬のことを指します。
上記でも説明したように、THCVは摂取したとしても、精神活性作用を得られる可能性は非常に低いとされています。
しかし、過去に販売されていたTHCVを含むリキッドなどの製品は、「キマる」・「ハイなる」といった謳い文句で販売されていました。
そのため、THCVを含む製品の存在が、THCHやTHCBなどの成分のセールを助長していると捉えられ、THCVが規制されたのではないかと考えられています。
日本における大田原症候群の患者さんへの使用例
日本においてTHCVの所持と使用は医薬品医療機器等法(薬機法)76条の四によって規制されています。
しかし、THCVを大田原症候群の発作を緩和させる目的で厚生労働省から特別な許可を受けて所持・使用している患者さんがいらっしゃいます。
THCVをてんかん発作抑制のために合法的に所持・使用する方法
カンナビノイド医療患者会(PCAT)にご入会いただくとスムーズです。
現在はてんかんのうち、3疾患(結節性硬化症、ドラべ症候群、大田原症候群)についてのみ日本臨床カンナビノイド学会を通じてカンナビノイド適正使用判定員会の審査を受けていただけます。
カンナビノイド適正使用判定委員会にてTHCV使用が妥当であると判断された場合には、日本臨床カンナビノイド学会から国会議員を通じて厚生労働省に使用を認めていただくことになります。
THCVとTHCPOの違い
現在、日本ではTHC系の成分として「THCPO」と呼ばれる成分が注目を集めていますが、名前が似ている「THCV」と何が違うのでしょうか?
THCPOとは、THCPと呼ばれる成分をアセチル化(化学合成)した合成カンナビノイドのことです。
まず、THCVとTHCPOは違法性が異なります。
THCPOは、THCと構造式が似ていますが、THCVと違い現在は指定薬物として規制されていないため、利用や所持が禁止されていません。
ただ、これまでの規制の傾向からして、近々THCPOも「指定薬物」として規制される可能性は非常に高いと言えます。
次に、THCVとTHCPOは安全性や効果・副作用の透明度が異なります。
上記でも説明したように、THCVは過去の研究から、ある程度、安全性や効果・副作用などが明らかになっています。
一方、THCPOは過去に行われた研究の数が多くないため、人体に対してどのような有害事象を引き起こすか明らかになっていません。
そのため、安心安全かつ合法的に、カンナビノイド成分を利用したいと考えている方は、「CBD」を利用することをおすすめします。
CBD薬剤師が製品化したCBDカプセル「ちるねる」
今回は、「THCVがどういった成分であるか」といったことを解説しました。
THCVが、大麻草から抽出される「カンナビノイド」という成分の1つであり、違法であるということがお分かり頂けたと思います。
ここでは、CBD薬剤師が製品化したCBDカプセル「ちるねる」をご紹介したいと思います。
安心安全の国内製造
皆さんは、海外製のCBD製品には「THC」などの違法成分が含まれている可能性があることをご存じでしょうか?
実際に、過去には海外から輸入されたCBD製品に、「THC」が混入していたという事件が起こっています。
今回ご紹介する「ちるねる」は、日本の工場で製造されており、違法成分である「THC」が含まれている心配がありません。
また、このCBD製品は薬剤師の私が、製造工場の安全面や衛生面を確認しているため、品質面においても自信があります。
CBD製品を安心安全に利用してみたいと考えている方は、試しにCBDカプセルの「ちるねる」を利用してみてはいかがでしょうか。
手に取りやすいお手頃価格
世の中に販売されているCBD製品は安いものは数千円、高いものは数万円という幅広い値段で取引されています。
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お客様の声
PCAT(カンナビノイド医療患者会)とは
おうめ薬局と薬剤師・荒川快生はCBD100mgカプセルの提供等を通じてPCAT(カンナビノイド医療患者会)の活動を応援しています。
THCVに期待される効果
上記でも説明したように、THCVには医学的利点が期待されていますが、具体的にはどのような効果が期待されているのでしょうか?
ここでは、THCVに期待できる8つの効果を研究やエビデンスを基に詳しく解説します。
抗けいれん作用
THCVには「抗けいれん作用」があるとされており、「てんかん」などのけいれんを伴う疾患に対して効果が期待されています。
てんかんとは、「けいれん」や「意識喪失」といった症状を伴う慢性疾患であり、脳の電気活動に異常をきたすことが原因で起こるとされています。
2010年の研究では、「けいれん」を起こしたマウスにTHCV(0.025〜 2.5 mg/kg)を投与し、有用性を評価する実験が行われました。
その結果、THCV(0.25 mg/kg)を投与されたマウスは、「けいれん」の発生率が大幅に減少したことが報告されました。
さらに、別の細胞実験では、THCVが「けいれん」の程度や頻度を大幅に軽減させたことも明らかになりました。
今回の研究は動物実験レベルですが、THCVの「てんかん」などの疾患に対する有用性を示唆しており、今後に注目が集まります。
抗炎症・鎮痛作用
THCVは、CBNやCBGなどの他のカンナビノイドと同様に「抗炎症作用」が期待されています。
2010年の研究では、炎症性疼痛にかかったマウスにTHCVを投与することで有用性を評価する実験が行われました。
その結果、THCVを投与されたマウスは、後足に誘発された炎症や痛覚過敏の兆候を軽減したことが報告されました。
また、この研究では、THCVがカンナビノイド受容体に作用し、炎症や痛みを緩和していることも明らかになりました。
今回のTHCVの研究は動物実験であり、人体に対する影響が明らかになっていないため、今後の研究に期待が高まります。
食欲抑制効果
THCVには食欲を抑制する効果が期待されており、海外では「ダイエットウィード」と呼ばれています。
2009年の研究では、動物に対してTHCVを投与することで摂食行動を評価する実験が行われました。
実験の結果、低用量のTHCVは食欲の低下及び、体重減少を誘発したことが明らかになりました。
さらに、THCVを投与された動物は、翌日にリバウンドが見られず通常の摂食行動に戻ったことも報告されました。
これらのことから、THCVは今後臨床試験が行われることで、肥満に対する新たな治療薬として利用されることが期待されています。
神経保護作用
THCVには「神経保護作用」があるとされており、「ジスキネジア」などの疾患に対して効果が期待されています。
ジスキネジアとは、顔や手足に付随運動(意志と関係なく体が動くこと)が起こる疾患のことです。
2020年の研究では、「ジスキネジア」のマウスにTHCVを投与することで、有用性が評価されました。
この研究では、マウスにTHCV(2mg/kg)を腹腔内投与し、2週間経過を観察しました。
その結果、THCVはマウスの「ジスキネジア」の発症を遅らせ、運動異常を軽減したことが示唆されました。
今回の研究は動物実験レベルですが、THCVの神経保護作用に対する有用性を示しており、今後に注目が高まります。
血糖値を調整する効果
THCVは過去の研究から、血糖値を調整する効果が期待されています。
2016年の研究では、2型糖尿病患者62名に対してTHCVまたはプラセボ(偽薬)を投与することで有用性を評価する実験が行われました。
実験の結果、THCVは被験者の血糖値を減少させ、インスリンの合成・分泌を行う「膵臓 β 細胞」の働きを改善したことが示唆されました。
現在日本では、5・6人に1人が糖尿病の危険があるとされており、糖尿病はがん同様に深刻な国民病の1つとして考えられています。
今後、THCVに関する規制が緩和されることで、糖尿病に苦しんでいる方の負担が軽減されることを願います。
禁煙効果
THCVには、禁煙効果が期待されています。
2019年の研究では、ラットやマウスなどにTHCVを投与し、ニコチン依存症に対する有用性を評価する実験が行われました。
その結果、THCVを投与されたラットは、ニコチンの探索行動や、マウスの離脱症状が有意に軽減したことが報告されました。
この研究は動物実験レベルではありますが、今後の更なる研究に期待が高まります。
統合失調症の治療
THCVには、統合失調症など精神疾患の症状を緩和する効果が期待されています。
統合失調症などの精神疾患には、「5-HT1A受容体作動薬」などが使われることがあります。
「5-HT1A受容体作動薬」は、セロトニン受容体である「5-HT1A」を活性化することで、抗不安や抗うつ効果があるとされています。
2015年には、ラットを用いた精神疾患に対する、THCVの効果を検証する実験が行われました。
その結果、THCVを投与されたラットは、「5-HT1A」が活性化することで、抗精神病作用を発揮したことが明らかになりました。
また、この実験結果では、THCVは統合失調症の認知症状や陽性症状の一部を改善する可能性が示唆されました。
今後、更なる研究が進むことで、THCVが精神疾患に対する新たな治療薬として利用されることが期待されます。
薬の副作用の緩和
THCVは、パーキンソン病の治療薬の副作用を緩和することが期待されています。
2020年のスペインの研究では、マウスにTHCVを投与し、「レボドパ」(抗パーキンソン薬)の副作用に対する有用性を評価しました。
「レボドパ」は、ドーパミン不足を補う抗パーキンソン薬であり、長期的に服用すると不随意運動などの副作用を引き起こすとされています。
実験の結果、THCVと「レボドパ」を一緒に投与したマウスは他のマウスと比べ、副作用の発生が遅くなり、副作用の程度が軽減したことが明らかになりました。
「レボドパ」の副作用は世界的にも大きな問題となっており、今後のTHCVの臨床試験に対して期待が高まります。
参考文献
- The diverse CB1 and CB2 receptor pharmacology of three plant cannabinoids: delta9-tetrahydrocannabinol, cannabidiol and delta9-tetrahydrocannabivarin
- Synthetic and plant-derived cannabinoid receptor antagonists show hypophagic properties in fasted and non-fasted mice
- Symptom-relieving and neuroprotective effects of the phytocannabinoid Δ⁹-THCV in animal models of Parkinson’s disease
- Δ8‐Tetrahydrocannabivarin has potent anti‐nicotine effects in several rodent models of nicotine dependence