近年、「CBD(カンナビジオール)」は、医療・美容などの業界において、日本を含めた世界中の多くの国々から注目を集めています。
そんな中、CBDと似た成分である「CBC」が注目を集めているということを、皆さんはご存知でしょうか?
今回は薬剤師である私が、「CBCの効果」について詳しく解説したいと思うので、気になった方は是非最後までご覧ください。
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日本薬剤師研修センター研修認定薬剤師
日本臨床カンナビノイド学会認定登録師
所属学会:日本薬理学会、日本緩和医療薬学会、日本在宅薬学会、日本臨床カンナビノイド学会
そもそもCBCとは?
CBCとは、カンナビクロメン(Cannabichromene)の略称であり、CBDやTHCと同様に大麻草に含まれる「カンナビノイド」成分の1つです。
CBCは、一般的にはあまり認知されていませんが、医学界ではCBDやCBG・CBN・THC・THCVと並ぶ「ビッグシックスカンナビノイド」の1つとして注目を集めています。
また、この成分は、熱や光によって分解されることで、「CBL(カンナビシクロール)」に変化することも明らかになっています。
ここでは、そんなCBCの「安全性や違法性」・「体に作用するメカニズム」・「摂取できる製品の種類」について解説したいと思うので、是非最後までご覧ください。
CBCの安全性と違法性

CBCが大麻草に含まれる成分であることから、「安全性」や「違法性」に不安を感じている方もいらっしゃるのではないでしょうか?
ここでは、CBCを「安全性」と「違法性」の2つの観点から、ご説明したいと思います。
まず、安全性の観点から説明すると、CBCの安全性は現時点で、CBDと違い完全には明らかになっていません。
理由としては、CBCがCBDと違い採取できる量があまり多くなく、安全性に関する研究の数が少ないことが関係しています。
次に、違法性の観点から説明すると、現時点で、CBCには違法性が無いことが明らかになっています。
CBCに違法性が無い理由としては、CBC自体にTHC(違法成分)のような精神活性作用が無いことが関係しています。
このように、CBCの安全性は、完全には明らかになっていませんが、違法性は無いため、日本でも合法的に利用することができます。
CBCが体に作用するメカニズム
CBCはCBDやCBGなどの成分とは若干異なるメカニズムで人体に作用するのではないかと考えられています。
具体的には、CBCは、主に内因性カンナビノイドの1つである「AEA(アナンダミド)」の分泌量を増加させることで、様々なメリットを人体に対して与えると考えられています。
AEA(アナンダミド)とは、人体に存在する生理活性物質のことで、大麻成分と同様に「CB1」と呼ばれる受容体に作用することが分かっています。
また、最近の研究では、CBCは痛みや炎症に関わる「TRPV1」・「TRPA1」受容体にも強く結合することが分かってきています。
CBCの人体に作用するメカニズムは、現段階でも明らかになっていないことが多いため、今後の更なる研究に期待が高まります。
CBCが摂取できる5種類の製品

CBCを摂取できる製品には、以下の主に5種類の製品があることが分かっています。
- オイル
- ベイプ
- クリーム
- カプセル
- エディブル(グミやチョコレートなど)
ただし、CBCは、CBDと違い希少性が高いため、CBCのみを含む製品は販売されていません。
そのため、CBC成分を摂取したいと考えている方がいらっしゃるなら、CBCが含まれているCBD製品を利用することをおすすめします。
CBDやCBCを含む大麻成分は、利用する製品の種類によって「効果の強さ」や「効果時間」などの特徴が異なるため、自身にあった製品を選ぶことが重要です。
個人的には、効果を長時間感じられるかつ、摂取しやすい「カプセルタイプ」または、「エディブルタイプ」の製品を利用することがおすすめです。
CBCに期待される効果とは?
「CBD」は、「リラクゼーション」などの効果が期待されていることから、日本でも注目を集めています。
では、CBDと同じ大麻成分である「CBC」にはどのような効果が期待できるのでしょうか?
ここでは、CBCに期待される効果を7つ、エビデンスと共にご紹介したいと思うので、気になった方は是非チェックすることをおすすめします。
抗腫瘍作用

CBDやCBGなどの大麻由来の成分は、「がん」の増殖と浸潤を抑制し、がん細胞を死滅させる「抗腫瘍作用」が期待されています。
2006年の研究では、CBDやCBG・CBC・CBDA・THCAなどの5種類の大麻成分を「ヒトの乳がん細胞」に投与することで有用性が評価されました。
その結果、CBDに次いで、CBCとCBGが「ヒトの乳がん細胞」に対して強力な「抗腫瘍作用」を示したことが明らかになりました。
ただ、現段階では、CBCの「抗腫瘍作用」に関する研究は、試験管を用いた細胞実験のみのため、今後の更なる研究に期待が高まります。
鎮痛作用
皆さんの中に、慢性的な痛みを伴う疾患にお悩みの方はいらっしゃいませんか?
CBCは過去の研究から、「鎮痛作用」があるとされており、痛みを伴う疾患に対しても効果が期待されています。
2011年のマウスを用いた研究では、マウスに「CBC」を投与することで、痛みに対する有用性が評価されました。
その結果、CBCは、侵害受容制御に関与する「標的タンパク質」と相互作用することで、痛みを軽減したことが示唆されました。
この研究は、痛みに対する有用性を示唆しており、痛みを伴う疾患にお悩みの方は、試しにCBCを含んだ製品を摂取してみてもいいかもしれません。
抗菌作用

CBCは、CBGやCBNなどと同様に、「抗菌作用」が期待されています。
実際に1981年の論文では、CBCは「グラム陽性菌」や「抗酸菌」などの複数の細菌に対して、高い抗菌作用を示したことが示唆されています。
また、2020年の研究では、「CBCを含む複数の大麻成分」と「口腔ケア製品」の細菌の増殖抑制が比較されました。
その結果、CBCを含む複数の大麻成分は、口腔ケア製品と比べ、細菌の繁殖を大幅に抑制したことが分かりました。
このように、CBCには「抗菌作用」が期待されているので、興味がある方は一度利用してみるのもいいかもしれません。
抗うつ作用
「CBC」は、「うつ病」に対しても効果が期待されています。
うつ病は、「セロトニン」などの脳内物質の分泌量が減少することが原因で、「気分が落ち込む」・「やる気が出ない」などの症状が現れる疾患です。
2011年の研究では、マウスにCBC(20・40・80・200 mg/kg )を投与し、うつ病に対する有用性が評価されました。
この研究では、TSTとFST(うつ病のような行動を測定する試験法)を用いて、CBCの抗うつ効果を計測しました。
その結果、CBC(20・200mg/kg)を投与されたマウスには、抗うつ効果が示されたことが報告されました。
この研究は動物実験レベルですが、CBCのうつ病に対する有用性を示唆しており、今後に期待が高まります。
にきび治療

CBCは、CBDVやTHCVなどと同様に、ニキビ治療に役立つ可能性が高いと考えられています。
ニキビが起こる原因の1つとして、「皮脂」の過剰分泌が関係していると言われています。
2016年の研究では、CBCには、皮脂の脂質合成を阻害し、過剰な皮脂産生を防ぐ可能性があることが報告されました。
また、この研究では、CBCはニキビの原因となる「アラキドン酸」による脂質合成を抑えることも明らかになりました。
この研究結果は、CBCのニキビ治療に対する可能性を示唆しており、今後研究が進むことで、CBCが新たなニキビ治療の手段になるかもしれません。
脳細胞への効果
様々な効果が期待されている「CBC」ですが、脳細胞に対してもプラスな効果があることをご存じでしょうか?
2013年のマウスを用いた研究では、CBCは健康な脳機能に不可欠な細胞である「神経幹前駆細胞 (neural stem progenitor cells / 以下ではNSPC」にプラスの効果を与えたことが報告されました。
この研究では、CBC以外にも、CBDやCBGなどの成分も用いられましたが、NSPCに対して良好な結果を示したのは、「CBCのみ」でした。
また、NSPCは、脳機能の維持に対して重要な役割を果たしているため、CBCがアルツハイマー病などの神経変性疾患や脳の健康にプラスの効果をもたらす可能性も期待できます。
ただ、この実験はマウスを用いた動物実験レベルのため、ヒトがCBCを摂取した際に同様の効果を得られるかは現段階では定かではありません。
抗炎症作用

CBCには、「抗炎症作用」があるとされており、炎症を伴う疾患に対して効果が期待されています。
2013年の研究では、大腸炎を患うマウスに対して、CBCを投与することで、有効性が調査されました。
その結果、CBCは、マクロファージの一酸化窒素生成を阻害し、抗炎症作用を発揮することで、マウスの大腸炎を改善したことが示唆されました。
また、2022年の複数の大麻成分を用いた研究では、炎症の原因となる物質である「IL-6(インターロイキン-6)」をCBCが最も抑制したことも報告されています。
CBCの抗炎症作用に関する研究は、現段階では動物実験レベルですが、今後更なる研究が行われることで、新たな治療手段として利用されるかもしれません。
安全性を重視している方はCBDがおすすめ
上記でご紹介したような効果から、医療分野での活用が期待される「CBC」ですが、ヒトに対する安全性は分かっていません。
そのため、CBCを過剰に摂った際に、ヒトに対して有害事象が起こる可能性も全くゼロとは言えません。
もしあなたが、安全性に重きを置いているなら、安全性が高い「CBD」のみを利用することがおすすめです。
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