近年「CBD」・「CBG」といった大麻由来の成分は、日本を含めた世界中の国々で注目を集めています。
そんな「CBD」・「CBG」ですが、「集中力を高める効果がある」といった噂を聞くことが増えてきています。
今回は薬剤師である私が、「CBD・CBGには集中力を高める効果があるのか」ということを解説したいと思いますので、ぜひ最後までご覧ください。
また、現在X（旧Twitter）・Instagramにて、CBDを含む大麻成分に関する情報をエビデンスを基に発信しているので、気になった方は是非チェックしてみてください！
CBDとは？
CBD（カンナビジオール）とは、大麻草の茎や種子に含まれる成分「カンナビノイド」と呼ばれる成分の一種です。
ここでは、このCBDがどのような成分なのかについて詳しく説明していきます。
CBDの違法性と安全性
CBDが大麻から抽出される成分であることから、「違法性」・「安全性」について疑問を抱く人も多いのではないでしょうか。
まず、違法性について説明すると「CBDは日本で合法」であり、使用・所持したとしても違法にはなりません。
実際に日本の「大麻取締法」においても、「CBDは大麻に該当しない」ということが明確に記載されています。
次に、安全性について説明すると「CBDは安全性が高い」ということが過去の研究から明らかになっています。
1980年に実施された研究では、CBDを使用した被験者に「毒性や重篤な副作用」は見られなかったことが報告されています。
このように、CBDは違法性がなく、安全性が高い成分のため、利用する際に過度に心配する必要はないと言えます。
CBDには様々な効果が期待されている
CBDは過去の研究から、
- 睡眠の補助
- リラックス効果
- ストレス緩和
- 抗炎症作用
- 抗酸化作用
- 鎮痛作用
- 抗菌作用
などの効果に加えて、複数の疾患に対しても有用性が期待されています。
実際、海外では「エピディオレックス」と呼ばれるCBDを含んだ医薬品が「抗てんかん薬」として利用されています。
2023年の12月に「大麻取締法」が改正されたので、日本でも今後医療目的で「CBD」が利用されることが期待されます。
CBDは集中力を高める効果がある？
皆さんの中に、「CBDで集中力を高めたい！」といった考えを持っている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
ここでは、「CBDは集中力を高める効果があるのか」ということを解説したいと思いますので、気になった方はぜひチェックしてみてください。
CBDには集中力を高める効果が確認されていない
そもそも「集中力が高くなるかどうか」は脳内の「ドーパミン」の分泌が関係していると言われています。
「ドーパミン」とは、「快感や多幸感を得る」・「意欲を作ったり感じたりする」といった機能を担う神経伝達物質の1つです。
この「ドーパミン」が十分に分泌されると脳が覚醒状態になり、集中力が高まると考えられています。
しかし、現時点ではCBDが「ドーパミン」の分泌量を増加させ、集中力を高めたということを示した研究は存在しません。
そのため、稀にSNSなどで「CBDには集中力を高める効果がある」と断定するような記載を見かけることがありますが、鵜呑みにしないよう気をつけてください。
CBDに集中力を高める効果があると言われている理由
上記のことから、「CBDには集中力を高める効果は確認されていない」ことがお分かりいただけたと思います。
では、なぜ近年「CBDは集中力を高める」といった噂を聞くことが増えてきているのでしょうか。
ここでは、「CBDには集中力を高める効果がある」と言われている理由を2つご紹介したいと思います。
①CBDにはセロトニンの分泌を促進する作用があるから
CBDは過去の研究結果から、脳内で「セロトニン」の分泌を促進することが分かっています。
セロトニンとは、「ドーパミン」と同じ神経伝達物質の一種で、ドーパミンの過剰分泌を抑制する働きがあると考えられています。
実を言うと、「ドーパミン」が適度に分泌されると集中力や意欲が高まりますが、過剰に分泌されてしまうと逆に集中力が乱れる可能性があります。
CBDは「セロトニン」の分泌を促進することで、脳内の「ドーパミン」の過剰分泌を抑制し、集中力を高める作用を持つと考えられています。
ただ、CBDのドーパミンの分泌量の増加に焦点を当てた実験結果は乏しいため、「CBDで集中力が高まる」と過度に信用することはおすすめできません。
②CBDには様々な効果が期待されているから
CBDには「睡眠の質の向上」や「ストレスの緩和」といった効果が期待されています。
これらの効果は、間接的に集中力の向上に寄与する可能性があります。
例えば、睡眠の質が改善されることで脳がしっかりと回復し、翌日の集中力や認知機能が高まることが期待されます。
また、ストレスが緩和されると過度な不安や心配が軽減され、精神が安定することで、より集中した状態を保ちやすくなると言われています。
ここでは、CBDに「睡眠の質の向上」や「ストレスの緩和」といった効果があることを示した研究や調査をご紹介したいと思います。
a.睡眠の質を向上させる効果を示した研究
2022年の研究によると、5％のCBDオイルを投与された被験者は「徐波睡眠」の割合が増加し、結果として睡眠の質が改善されたと報告されています。
徐波睡眠とは、ノンレム睡眠の中でも特に深い段階であり、睡眠の質に重要な役割を果たしています。
この研究は、CBDが深い睡眠を促進し、質の向上に寄与する可能性を示しています。
b.ストレスを緩和する効果を示した研究と調査
2011年に海外で行われた研究では、CBDを600mg摂取した被験者には「不安」や「ストレス」の軽減が見られたことが分かりました。
また、2023年に発表された株式会社ウェルファーマの調査では、5日間CBDを摂取した対象者の内、96.4%の対象者が「ストレスが軽減した」と回答したことが報告されました。
さらに、この調査では、対象者の57.1%が「不安・心配な気持ちが軽減した」と回答したということも明らかになりました。
これらの研究や調査は、CBDがストレスを軽減し、心の安定をサポートする効果を持つ可能性があることを示しており、その結果として集中力の向上につながることがあると考えられています。
CBGとは？
THCやCBDなどの元となる成分であることから、CBGは「カンナビノイドの母」とも呼ばれています。
CBGは、CB1/CB2受容体にCBDよりも強く作用することから、CBDよりも効果を感じやすいとも言われています。
CBGは過去の研究から、
- 神経保護作用
- 食欲増進効果
- 抗腫瘍作用
- 抗炎症作用
- 抗菌作用
などの効果が期待されています。
CBGは、THCと異なり精神作用がないため、日本でも合法で使用することができます。
CBGは集中力を高める効果がある？
最近では、「CBG」を含んだ商品に「集中力特化」や「超集中力」などの謳い文句が記載され、販売されていますが、本当に「CBG」には集中力を高める効果があるのでしょうか。
ここでは、「CBGには集中力を高める効果があるのかどうか」ということを解説したいと思います。
CBGも集中力を高める効果はない
結論から言うと、現段階では「CBG」には集中力を高める効果は確認されていません。
上記でも説明したように、集中力の向上には通常、ドーパミンの分泌が関わるとされていますが、CBGもCBDと同様に、ドーパミンの分泌を直接促進するわけではありません。
このように、現時点ではCBGには集中力を高める効果は確認されていないため、集中力を高める目的でCBGを利用することはおすすめできません。
ただ、CBGは過去の研究から、「α-2アドレナリン受容体」や「5-HT1A受容体」などの受容体に作用し、ドーパミンの分泌に間接的な影響を及ぼす可能性が示唆されています。
ネットの誤情報には注意が必要
上記でも説明したように現段階では「CBG」には集中力を高める効果は確認されていません。
最近では「CBG」を含んだ商品に「集中力特化」や「超集中力」などの謳い文句が記載され販売されていますが、誤情報を鵜呑みにして購入しないようにしましょう。
ネット上には大麻成分に関する間違った情報が多くみられるため、薬剤師や医師などの専門家が発信している情報を参考にすることをおすすめします。
また、記載されている情報が正しいか判断する方法の一例として、研究やエビデンスなどが一緒に記載されているか確認することもおすすめです。
結局、集中力を高めるためにはどうするのが良い？
ここまでの説明から、「CBD」・「CBG」にはドーパミンの分泌量を増加させ、集中力を高めるといった効果が確認されていないことがお分かりいただけたと思います。
では、結局どうすれば集中力を高めることができるのでしょうか。
ここでは、ドーパミンを出して集中力を上げる方法を3つご紹介したいと思います。
質の良い睡眠を取る
ドーパミンを出して集中力を上げるためには、質も良い睡眠を取ることが重要となります。
質の良い睡眠を取るためには、以下のようなことを実践してみることがおすすめです。
- 寝る前にスマホやパソコンの使用は控える
- 寝室は静かで暗く、適度な温度に保つ
- 毎日同じ時間に起床・就寝するリズムをつくる
また、上記でも説明したように、CBDには「睡眠の質を向上させる効果」が期待されているので、質の良い睡眠を取りたいと考えている方はぜひ使用を検討してみてください。
ちなみに、効果時間の観点から、睡眠に対してCBDを利用する場合はカプセルタイプのCBD製品を利用することをおすすめします。
「チロシン」と「ビタミンB6」を多く含む食べ物を摂る
ドーパミンを増やして集中力を高めるためには、ドーパミン生成に必要な「チロシン」を多く含む食品を摂取することが大切です。
「チロシン」を多く含む食品としては、「チーズ」や「バナナ」・「納豆」・「豆腐」・「ナッツ」などが挙げられます。
また、「チロシン」から「ドーパミン」への変換には「ビタミンB6」が不可欠であり、「赤パプリカ」・「ブロッコリー」・「ささみ」などを摂取することがおすすめです。
こうした食品を意識して摂取することでドーパミン生成が促進され、集中力の向上の助けとなります。
適度な有酸素運動を取り入れる
集中力を高めるために「ドーパミン」を分泌させる方法として、適度な有酸素運動を取り入れることも効果的です。
運動を行うと酸素が多く取り込まれ、心臓や肺の動きが活発になります。
これにより全身の血流がスムーズになり、脳への血流も増加し、「ドーパミン」の生成が補助されます。
ランニングや水泳といった有酸素運動を30分程度、週に2〜3回続けることで効果が期待できます。
さらに、筋トレを併用することで「成長ホルモン」の分泌が促され、「ドーパミン」の放出も増加します。
ただし、過度な運動はストレスとなるため、適度な強度と頻度で、自分に合った運動を続けることが重要です。
CBD薬剤師の質問コーナー
CBDで頭の回転がよくなる？
CBDは直接的に頭の回転を良くする、つまり「思考力」や「集中力」を高める効果は確認されていません。
ただし、CBDには「ストレス緩和」や「リラックス作用」があるため、過度な緊張や不安を感じやすい方が穏やかにリラックスした状態で集中できるようにサポートすることが期待できます。
あくまで補助的なサポートとして活用し、集中力や思考力を高める直接の方法としては適切な食事、睡眠、運動が重要です。
CBDは仕事・勉強の役に立つ？
CBDは、仕事や勉強で感じるストレスを和らげることで、集中しやすい環境を整えるサポートとして役立つ場合があります。
特に、緊張しやすいプレゼンや試験前に「リラックス効果」を期待して摂取することで、不安を和らげ、冷静に取り組める可能性があります。
ただし、CBDが記憶力や思考力といった認知機能に直接的な影響を与えるわけではありません。
そのため、仕事や勉強のパフォーマンス向上を目指す場合には、CBDを補助的なサポートと考え、「バランスの取れた生活習慣」や「適度な運動」を取り入れることが効果的と言えます。
