CBDは肝臓に悪影響を与える?医薬品との併用は危険?薬剤師が徹底解説

近年、「CBD」はリラクゼーション効果が期待できる成分として、日本を含めた多くの国々から注目を集めています。

そんなCBDですが、近年「肝臓に対して悪影響を与える」といった噂を聞くことが増えてきています。

皆さんの中にも、「CBDを摂取すると肝臓に悪影響なの?」と疑問を感じている方もいらっしゃるのではないでしょうか?

今回は薬剤師の私が、「CBDは肝臓に悪影響を与えるのか」ということを解説したいと思います。

また、現在X(旧Twitter)Instagramにて、CBDに関する情報を発信しているので、是非チェックしてみてください!

この記事で分かることCBDの肝臓に対する影響
CBDと医薬品の併用について
CBDの肝臓に対する効果
肝臓病の合併症に対するCBDの効果

そもそもCBDとは?

CBD

CBDとは、「カンナビジオール」の略称で、大麻草から抽出される「カンナビノイド」という成分の1つです。

大麻草由来の成分ということから、「危険」・「依存」・「違法」といった考えを持つ方もいらっしゃると思います。

しかし、CBDは危険性や依存性が無く、安全性が高い成分であることが分かっており、「大麻」と違って日本でも合法で使用できます。

また、CBDは過去の研究から、

  • 睡眠の補助
  • リラックス効果
  • ストレス緩和
  • 抗炎症作用
  • 抗酸化作用
  • 鎮痛作用
  • 抗菌作用

などの効果が期待されています。

CBDは、これらの効果から多くの疾患に効果が期待されており、実際に「てんかん」の治療薬としても利用されています。

CBDの利用はやめたほうがいいか知りたい方はこちら

CBDは肝臓に悪影響を与える?

安全性の高いCBDですが、ごく稀に「喉の渇き」や「軽度のめまい」を引き起こすことが分かっています。

では、CBDは肝臓に対しても悪影響を及ぼすのでしょうか?

ここでは、「CBDは肝臓に悪影響を与えるのか」ということをエビデンスを基に解説したいと思います。

高用量のCBDは悪影響の可能性がある

肝臓

安全性の高い「CBD」ですが、過去の研究から、高用量を摂取した場合に肝臓に悪影響を与える可能性が示唆されています。

2019年の研究では、生後8週齢の雄のマウスに様々な量のCBDを投与することで、 CBDの肝毒性が調査されました。

その結果、CBDを615mg/kg投与されたマウスの75%は、肝臓に障害が発生したことが報告されました。

さらに、CBDを200mg/kg投与されたマウスには、肝臓毒性の明らかな兆候が見られたことも報告されました。

これらの研究結果は動物実験レベルではありますが、高用量のCBDの摂取が肝臓に対して悪影響を与える可能性を示唆しています。

ただ、この研究ではCBDの摂取量が多く、体重50kgの人間に置き換えると30,750mgと10,000mgのCBDを摂取した計算になるため、実際に摂取することは現実的ではありません。

一般的な量のCBDはリスクが低い

上記の説明から、「普通にCBDを摂取しても、肝臓に悪影響が及ばされるのでは?」と不安を感じている方も一定数いらっしゃるのではないでしょうか?

しかし、結論から言うと、一般的な量のCBD(2〜20mg/kg)を摂取した場合では、肝臓に対して悪影響を与える可能性は低いです。

実際に、2020年の研究レビューでは、医薬品として使用される高用量のCBD(21mg/kg)を摂取しても、肝臓障害が起こるリスクは低いと結論づけられています。

さらに、2021年の研究でも、健康を自分で管理する「セルフメディケーション」のレベルでは、「CBDは肝臓に悪影響を与えない」と結論づけられています。

このように、一般的な量のCBDを摂取した場合では、肝臓に対して悪影響が与えられる可能性は低いため、過度に心配する必要はありません

ただ、CBDを高用量摂取すると、眠気を感じる場合があるため、仕事や勉強中などには少量のCBDを摂取することをおすすめします。

CBDの代謝部位・薬物代謝の関係性とは?薬との併用に注意が必要?

ここまでの説明から、「一般的な量のCBDは、肝臓自体に悪影響を与えない」ことがお分かりいただけたと思います。

ただ、CBDは肝臓での代謝に影響を与え、「薬物相互作用」を引き起こす可能性が懸念されています。

薬物相互作用とは、CBDと医薬品や食品を一緒に摂取することによって、医薬品の効果が増減したり、予期しない副作用が引き起こされる現象を指します。

ここでは、「CBDの代謝部位・薬物代謝の関係性」をお伝えすると共に、以下の内容を解説したいと思います。

  • CBDによる薬物相互作用の悪影響
  • CBDとの併用に注意が必要な医薬品
  • CBD摂取者への服薬指導について

CBDの代謝部位

CBDを口から摂取した場合、主に小腸上皮と肝臓に存在する薬物代謝酵素によって代謝を受けます。

CYP450群の発現比は小腸上皮と肝臓で1:80となっており、肝臓での発現割合が圧倒的となっています。

CBDの代謝部位の説明

そのため一見、小腸上皮での薬物代謝酵素による影響は考えなくて良いように思えます。

しかし、実際には小腸上皮より肝臓で80倍代謝されるわけではありません。

CBDの代謝部位の説明

経口的に摂取されたCBDは小腸上皮で吸収され、小腸上皮細胞中に含まれるCYPによって一部が代謝を受けます。

その後、小腸で吸収されたCBDの内、CYPによる代謝を受けなかった大部分が門脈へ流入します。

門脈中のCBDは血液中のタンパク質であるアルブミン等に約95%が結合します。

門脈中でアルブミン等に結合しなかった、約5%が肝臓でCYPによる代謝を受けます。

CBDの代謝部位の説明

そのため、実際に小腸上皮と肝臓での代謝の寄与度は1:4となり、小腸での代謝寄与度は約20%程度となると考えられます。

CBDを経口的に摂取する場合、小腸上皮での代謝もあなどれない寄与度であることがわかります。

このことは、小腸上皮でCYPを阻害するグレープフルーツジュースなどの食品等での影響も考慮する必要があることを意味します。

CBDと代謝酵素による影響

薬物の代謝を担う酵素群をCYP450と言います。

このうち、CBDは主に「CYP3A4」・「CYP2C19」・「CYP2C9」などにより代謝されます。

CBDは「CYP450酵素群」によって代謝され、これらの酵素により代謝される他の薬剤の代謝を阻害してしまうため、「阻害剤」として作用すると考えられています。

つまり、CBDは「阻害剤」として酵素の働きを抑制することで、間接的に「肝代謝」へ影響を及ぼすということになります。

2024年の研究では、「CBDとTHCを含む製剤」と「CYPプローブ薬剤(CYP450酵素群の活性度合いを調査する薬剤)」の併用で生じる影響が調査されました。

その結果、CBDを多く含む製剤摂取群は「CYP2C19 > CYP2C9 > CYP3A > CYP1A2」の順で有意に阻害したことが報告されました。

この結果は、CBDが特に「CYP2C19」と「CYP2C9」の働きを強く阻害し、肝代謝に対して有意な影響を及ぼす可能性を示唆しています。

CBDによる薬物相互作用の悪影響

実は「CYP450酵素群」は、CBD以外にも多くの医薬品の代謝に関わる酵素として知られています。

CBDが「阻害剤」として「CYP450酵素群」に作用すると、併用した他の医薬品の代謝にも影響を及ぼしてしまい「薬物相互作用」に繋がってしまいます。

「Nachnani」らの2024年のレビューでは、CBDによる薬物相互作用によって治療域が狭まったり、医薬品の副作用が増大した症例が報告されています。

また、肝代謝に依存する医薬品を利用している方がCBDを摂取した場合、深刻な有害事象(意識混濁、肝機能障害など)につながる可能性も示唆されています。

ただし、同論文内では、「CBDの用量と投与期間を減少させれば、CBDによる薬物相互作用のリスクを回避できる」といった可能性が示唆されています。

そのため、CBDと肝代謝に依存する医薬品を一緒に利用する場合は、用量調整や投与期間を考慮するのが良いでしょう。

CBDとの併用に注意が必要な医薬品5選

CBDとの併用に注意が必要な医薬品

過去の研究報告に基づくと、CBDとの併用に注意が必要な医薬品には以下の5種類が挙げられます。

  1. 抗凝固薬(ワルファリン)
  2. 抗てんかん薬(バルプロ酸Na, カルバマゼピンなど)
  3. 免疫抑制薬(タクロリムス、シロリムス、エベロリムス)
  4. 抗うつ薬(三環系抗うつ薬:TriCyclic Antidepressants;TCA)
  5. 麻酔薬・鎮痛薬

例えば、「抗てんかん薬」では、CBDとの併用によって「肝酵素の上昇や血小板減少による出血傾向」が報告されています。

また、「免疫抑制薬」では、CBDとの併用で免疫抑制薬の血中濃度が急上昇した症例や、重篤な副作用(精神状態変化、腎機能悪化)を引き起こしたケースも報告されています。

このように、一部の医薬品やCBDと摂取することで、薬物相互作用に繋がってしまう可能性があるため十分な注意が必要となります。

【医療従事者必見!】 CBD摂取者への服薬指導に関して

患者がCBDをサプリメントや医療目的で摂取している場合、医療従事者は必ずCBD摂取状況を把握する必要があります。

特に下記の点に注意する必要があります。

  • 狭い治療域を有する薬剤(Narrow Therapeutic Index; NTI薬物)やCYP2C9、CYP2C19、CYP3A4経路で代謝される薬を服用している患者では、CBD摂取開始時やCBD用量増加時に薬物濃度をモニタリングする。
  • ワルファリンなどの抗凝固薬使用患者では、INR検査頻度を増やし、出血徴候に注意する。
  • 免疫抑制薬使用患者(移植患者など)は、CBD併用により薬物濃度上昇・毒性発現のリスクがあるため血中濃度を厳密にモニターする。
  • 抗てんかん薬との併用時は肝機能検査や血小板数などを定期的に確認する。
  • 精神科領域の薬剤併用では、認知機能・精神症状の変化に留意する。

さらに、患者に対しては、自己判断でのCBD増量・製品変更を避け、担当医や薬剤師と相談するよう指導することも重要です。

CBDの肝臓の疾患に対する効果

ここまでの説明から「CBDの代謝部位・薬物代謝の関係性」がお分かりいただけたと思いますが、実はCBDは肝臓に有益な効果をもたらすことが過去の研究から明らかになっています。

ここでは、CBDの肝臓の疾患に対する効果を5つご紹介したいと思うので、是非チェックしてみてください。

肝硬変に対する効果

皆さんは、「肝硬変」という疾患をご存じでしょうか?

肝硬変とは、肝臓の線維化が進むことで、肝臓が硬くなる疾患のことであり、症状が進行すると「肝がん」や「胃食道静脈瘤」・「肝性脳症」などのが症状が起こるとされています。

CBDには、肝臓の線維化を防ぎ、「肝硬変」を予防する効果が期待されています。

2011年のヒトやラットの細胞を用いた研究では、肝臓の線維化の原因となる「肝星細胞(HSC)」に対するCBDの有用性が評価されました。

その結果、CBDが活性化された「肝星細胞(HSC)」を殺すことで、「肝硬変」を予防する可能性が示唆されました。

この研究結果は、CBDが「肝硬変」の潜在的な治療薬になる可能性を示唆しており、更なる研究に期待が高まります。

ウイルス性肝炎に対する効果

肝炎ウイルス

ウイルス性肝炎とは、A・B・C・D・E型などの「肝炎ウイルス」への感染によって起こる感染症のことを指します。

このウイルス性肝炎は、放置し発見が遅くなってしまうと、「肝臓がん」などの重篤な疾患を引き起こすことが分かっています。

CBDは過去の研究から、特に「C型肝炎ウイルス」の感染によって起こる「C型肝炎」に対して効果が期待されています。

実際に「Pharmacognosy Research」に掲載された2017年の研究では、CBDが「C型肝炎ウイルス」の複製を86.4%阻害することが報告されています。

この研究結果は、CBDが「C型肝炎」の新たな治療法になる可能性を示唆しており、今後の臨床試験に期待が高まります。

虚血性肝炎に対する効果

虚血性肝炎とは、肝臓の「血液」や「酸素」またはその両方が不足することで、肝傷害が生じる疾患のことです。

CBDは過去の研究から、この「虚血性肝炎」を改善する効果が期待されています。

2011年の研究では、虚血性肝炎を患うラットの静脈内にCBD(5mg/kg)を投与することで、有用性が評価されました。

その結果、CBDを投与されたラットは、虚血性肝炎の症状に関連する「肝障害」が有意に減少したことが示唆されました。

また、CBDには「抗酸化作用」もあるとされており、「虚血性肝炎」の悪化の原因となる「酸化ストレス」を軽減する効果も期待されています。

この研究は動物実験レベルですが、CBDの虚血性肝炎に対する有用性を示唆しており、今後に期待が高まります。

肝性脳症に対する効果

肝性脳症

肝性脳症とは、正常なら肝臓で除去される「アンモニア」などの有害物質が血液中に蓄積し、脳に達することで、脳機能が低下する疾患のことです。

肝性脳症は放置し進行すると、「錯乱」や「昏睡」・「運動機能の異常」などの症状が現れ、死に至ることもあるとされています。

2011年の研究では、CBDを肝性脳症のマウスに投与することで、肝性脳症に対するCBDの有用性が評価されました。

その結果、CBDを投与されたマウスには、「神経機能」と「認知能力」の回復、「運動活動」の一部回復が見られたことが報告されました。

また、CBDは血中の「アンモニア濃度」を低下させ、「肝機能の回復」と「肝酵素の数」を正常化させたことも報告されました。

この肝性脳症に対する研究は、人を用いた臨床試験ではなく、動物実験ですが、肝性脳症に対する治療法としての可能性を示唆しています。

アルコール性肝障害に対する効果

CBDは、「アルコール性肝障害」に対して効果が期待されています。

アルコール性肝障害とは、お酒の飲み過ぎによって肝臓に負担がかかり、肝機能に障害が起こる疾患のことです。

2017年の研究では、エタノールを摂ったマウスにCBD(5〜10mg/kg)を投与し、有用性が評価されました。

その結果、CBDはマウスの肝臓の「酸化ストレス」や「炎症」などを軽減し、肝損傷を改善したことが示されました。

さらに、違う研究では、CBDがアルコール性肝障害が起こる原因である「脂質蓄積」を改善する効果があることが示唆されました。

これらの研究は、動物実験レベルですが、「アルコール性肝障害」に対する有用性を示しています。

肝臓病の合併症に対するCBDの効果

肝臓病を患っている方の中には、

  • 睡眠障害
  • 糖尿病
  • うつ病

などの合併症を併発している方もいらっしゃいます。

ここでは、肝臓病の合併症に対するCBDの効果について解説したいと思うので、気になった方は是非チェックしてみてください!

睡眠障害の改善

睡眠障害を改善した女性

肝臓の病気を患う患者さんの中には、普通の方に比べて、「寝つきが悪い」といった睡眠障害を併発している方もいらっしゃいます。

CBDには「睡眠の質を改善する効果」があるとされており、「睡眠障害」を緩和することが期待されています。

実際に2019年の睡眠障害の患者に関する研究では、CBDを投与された患者の「66.7%」 は睡眠スコアが改善し、「79.2%」 は不安スコアが低下したことが報告されました。

また、睡眠の質を改善する効果は、CBDと同じ大麻成分である「CBN(カンナビノール)」にも期待されています。

2021年の不眠症の患者を用いた研究では、CBN製品を使用した患者は、睡眠障害の発生率が平均して73%改善されたことが示唆されました。

肝臓病・睡眠障害にお悩みの方は、CBDやCBNが含まれたサプリメントを利用することがおすすめなので、是非一度試してみてください。

CBNの効果はこちら

糖尿病の予防

肝臓病を患っている方の中には、糖尿病にお悩みの方も多くいらっしゃるということが分かっています。

糖尿病に効果があるものとしては、「ビタミンD」や「カルシウム」などの成分が有名ですが、「CBD」にも「糖尿病を予防する効果」が期待されています。

2006年の動物を用いた研究では、CBDを投与されたマウスは、糖尿病の発生率が「約56%」低下したことが報告されました。

さらに、この研究では、糖尿病の原因になると考えられている「サイトカイン」が減少したことも示唆されました。

この研究は、動物実験レベルではありますが、糖尿病を予防したいと考えている方は、CBDを利用してみてもいいかもしれません。

うつ病の改善

うつ病の女性

うつ病と肝臓病は密接に関連していると言われており、 「肝硬変」または「肝炎」などの患者は、「抑うつ症状」を示すことが分かっています。

CBDは過去の研究から、上記の合併症だけでなく、「うつ病」に対しても効果が期待されています。

実際に2016年の研究では、CBDを投与されたマウスには、即効性がある「抗うつ作用」が見られたことが報告されました。

この研究結果は、肝臓病の合併症である「うつ病」に対するCBDの有用性を示唆しており、今後の研究に期待が高まります。

CBDのうつ病に対する効果を詳しく知りたい方はこちら

参考文献

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