近年、CBDオイルは「リラクゼーション」や「ストレスの緩和」といった効果が期待され、ここ日本をはじめ世界各国で注目を集めています。
その中で、最近では「CBDオイルは陰部(デリケートゾーン)にも効果があるのでは?」という声を耳にすることが増えてきました。
本記事では、薬剤師である私が「CBDオイルは陰部に対して効果があるのか」ということを解説したいと思います。
後半では、「陰部に対するCBDオイルの使い方」もご紹介しているので気になった方はぜひチェックしてみてください。
そもそもCBD・CBDオイルとは?
まずは、CBD・CBDオイルがどういったものかということを解説したいと思います。
CBDとは?

CBD(カンナビジオール)とは、大麻草に含まれる天然化合物(カンナビノイド)の一種です。
大麻と聞くと不安を感じる方もいるかもしれませんが、CBDは精神作用や依存性を持たない安全性の高い成分として知られています。
実際、世界保健機関(WHO)もCBDの安全性を認めており、規制の必要はないとする見解を示しています。
また、CBDは過去の研究から以下のような効果が期待されています。
- 睡眠改善
- 抗炎症作用
- 抗不安作用
- 抗てんかん作用 など
現在、CBDに関する研究は世界中で活発に行われており、美容や健康維持、医療など幅広い分野で注目を集めています。
CBDオイルとは?
CBDオイルとは、CBDを「植物由来の食用オイル」に溶かした健康食品のことです。
食用オイルには、「MCTオイル」や「ひまわり油」・「オリーブオイル」などが主に利用されています。
摂取方法も様々で、舌下に垂らして吸収させるほか、肌に塗ったり、飲み物や料理に混ぜて摂取することが可能です。
CBDオイルは陰部に効果がある?
実を言うと、CBDオイルを陰部に用いた臨床研究は存在しないため、CBDオイル自体が陰部に対して効果があると断言することはできません。
ただ、過去の研究で、CBD自体は陰部に関連する疾患や症状へ効果を与える可能性が示唆されています。
そのため、CBDオイルを陰部に関連する疾患や症状に対して利用することで、一定の効果が期待できるのではないかと言われています。
ここでは効果を与える可能性が示唆されたCBDの研究を陰部に関連する疾患や症状ごとにご紹介したいと思います。
細菌性膣炎

細菌性膣炎とは、膣内の常在菌バランスが乱れ、悪玉菌である「ガードネレラ・バギナリス(G. vaginalis)」が異常に増殖することで発症する膣の感染症です。
2025年の研究にて、CBDはこの悪玉菌に対して「抗菌作用」・「抗バイオフィルム作用」を発揮し、菌の働きを抑制したことが明らかになりました。
「抗バイオフィルム作用」とは、細菌が集まって作る「バリアのような膜」を防いだり、壊したりする働きのことです。
この研究結果は、CBDが膣内の感染症に対する新たな可能性を示すものであり、今後の臨床研究によって、自然由来の有効な選択肢となることが期待されています。
膣カンジダ
女性の5人に1人が経験すると言われている「膣カンジダ」は、体の中に普段からいる「カンジダ菌」が増えすぎてしまうことで起こる感染症です。
免疫力の低下やストレス、ホルモンバランスの乱れがきっかけとなり、かゆみやおりものの変化などが現れると言われています。
2025年の研究では、CBDを0.5%配合したオイルが、カンジダ菌の増殖を抑える可能性があることが試験管内の実験で確認されました。
この研究では、CBD入りのオイルをカンジダ菌と混ぜて24時間観察したところ、菌の数が大幅に減ったことが分かっています。
この結果は、膣まわりのトラブルに悩む女性にとって、CBDが新たなケアの選択肢となる可能性を示しています。
月経関連の症状(痛み・不快感など)

月経時の腹痛や腰の重さ、不快感は多くの女性が毎月経験するつらい症状です。
近年では、CBDがこうした月経にともなう症状の緩和に役立つ可能性があるとして、注目を集めています。
2023年の研究では、米国で市販されているCBD膣坐剤(Foria®)を使ったグループと、従来の治療(痛み止めなど)を受けたグループを比較し、月経関連の症状への効果が調べられました。
CBD坐剤を使用した人たちは、痛みの強さや不快感、日常生活への影響、鎮痛剤の使用頻度がいずれも大きく減少したと報告されています。
さらに、使用量が多いほど症状の改善度が高まるという傾向も見られ、約8割の人が「中程度以上の改善」を実感したという結果が出ています。
慢性前立腺炎
「慢性前立腺炎」は、骨盤周辺の鈍い痛みや排尿時の不快感などが長期間続き、はっきりとした原因がわからないことも多い疾患です。
2024年に発表された研究では、CBDがこの慢性前立腺炎に効果を示す可能性があることが報告されました。
実験では、前立腺に炎症を起こしたラットにCBDを投与したところ、炎症が軽減し、痛みの指標も明らかに改善されたとされています。
この効果は、CBDが体の炎症反応を抑える働きと、痛みを感じにくくする働きを同時に持っているためと考えられています。
この研究はまだ動物実験の段階ですが、CBDが前立腺炎による慢性的な痛みや不快感に対する新たな治療アプローチとなる可能性があるとして、今後の臨床研究が期待されています
CBDオイルを陰部に対して利用する際の注意点
皆さんの中に、「CBDオイルを陰部に関連する疾患や症状に対して利用したい」といった方もいらっしゃるのではないでしょうか。
しかし、使用する際にはいくつか注意すべき点があります。
ここでは、CBDオイルを陰部に対して利用する際の注意点をご紹介したいと思います。
疾患や症状に合わせて摂取方法を変更する

上記で説明したように、舌下に垂らして吸収させるほか、肌に塗ったり、飲み物や料理に混ぜて摂取することが可能です。
当然ではありますが、CBDオイルを陰部に関連する疾患や症状に対して利用する場合は、適した摂取方法を利用する必要があります。
例えば、膣カンジダなどの局所的な症状には、デリケートゾーンと手指を清潔にして直接塗布する方法があります。
一方で、月経痛のような体内の炎症や痛みには、舌下摂取や経口摂取といったアプローチが効果的と言えます。
また、CBDオイルは医薬品ではなく、補助的に利用されるものであることを理解しておきましょう。
治療の代替と考えるのではなく、必要に応じて医師と相談しながら、安全に活用することをおすすめします。
異変を感じたらすぐに使用を中止する
安全性の高い「CBDオイル」ですが、人によっては異変(副作用)が生じることがあります。
例えば、カンナビノイドにアレルギー症状を持っていた場合、塗布するとかゆみ・赤み・ヒリヒリ感などの皮膚トラブルが起こる可能性があります。
舌下摂取や経口摂取の場合でも、吐き気やめまい、眠気などの症状が現れることがあります。
もし何らかの異変を感じた場合は、すぐに使用を中止し、必要に応じて皮膚科や婦人科、内科などの医療機関に相談することをおすすめします。
陰部に対するCBDオイルの使い方

CBDオイルを陰部に使用する際は、肌が非常にデリケートな部位であることを意識し、正しい手順でケアすることが大切です。
まず、使用前にデリケートゾーンを清潔にしておきましょう。通常のボディソープはアルカリ性で刺激が強すぎるため、弱酸性のデリケートゾーン専用ソープを使って、泡で優しく洗うのがおすすめです。
次に、手のひらにCBDオイルをとり、両手でしっかり温めてください。温めることでオイルが肌になじみやすくなり、刺激を軽減できると言われています。
塗布の際は、こすらず「トントン」と軽くおさえるように塗っていきます。気になる部位を中心に、やさしく包み込むようにケアしましょう。
最後に、オイルが肌になじむまで少し時間を置いてください。すぐに下着をつけてしまうと、オイルが下着に付着する可能性があります。
お風呂上がりのスキンケアなどを行いながら、3〜5分ほどなじませるのがおすすめです。
CBDは性的な効果をもたらすって本当?
最近、「CBDを陰部に利用することで、性的な効果が得られる」といった噂を耳にすることが増えてきています。
皆さんの中にも、「CBDを陰部に利用すると、性的な効果を得られるか気になる!」といった方はいらっしゃるのではないでしょうか。
ここでは、「CBDは性的な効果をもたらすのか」ということを解説したいと思います。
CBDが性的な効果をもたらすかは分かっていない
SNSや口コミなどでは、「CBDを使ったら感度が高まった」・「リラックスして性的体験が良くなった」といった声が見られることがあります。
こうした意見から、CBDに性的な効果があると感じている方もいるようです。
たしかに、CBDには不安をやわらげたりする作用があり、性交時の緊張をやわらげることで間接的に良い影響を与える可能性はあります。
また、CBDは血流を促す作用も示唆されており、これが陰部の感度に影響する可能性も考えられます。
しかし、現時点ではCBDが直接的に性的機能や快感に影響を与える科学的な証拠は確認されていません。ユーザーの体験談はあくまで主観的なものであり、医学的な根拠には乏しいのが現状です。
そのため、「性的な効果を目的にCBDを使用する」のは時期尚早と言えるでしょう。あくまでリラックスや不調のケアを目的とし、正しく使用することが大切です。
大麻は性的な効果をもたらす可能性が示唆されている

近年の研究やアンケート調査では、「大麻が性行為に良い影響を与える可能性がある」という興味深い報告が増えてきています。
例えば、2018年にスタンフォード大学が発表した研究では、大麻を日常的に使用している人は、使用していない人に比べて性行為の回数が約20%多かったという結果が出ています。
さらに、別のアンケート調査では、大麻を使用したことで「性欲が高まった」・「オーガズムの質が向上した」と感じた人も多く見られました。
ただし、現時点ではあくまでアンケートや観察研究が中心で、信頼性の高い臨床試験(無作為化試験など)は行われていません。
そのため、今後の本格的な研究によって、大麻と性の関係がどのように明らかになっていくのか注目されます。
まとめ
CBDオイルはリラックス効果や抗炎症作用などが期待されており、近年では陰部に関連する症状への活用も注目されつつあります。
現時点でCBDオイルを陰部に使った臨床研究はありませんが、CBD自体は膣や骨盤まわりの不調に役立つ可能性が示されています。
CBDオイルを使用する際は、症状や目的に応じた摂取方法を選び、異変があればすぐに中止することが大切です。
医薬品の代わりではなく、あくまで補助的なケアとして、正しい方法と知識のもとで取り入れるようにしましょう。
CBD薬剤師の質問コーナー
CBDは性機能に悪影響を与える?
CBDは、男性の性機能に悪影響を与える可能性があることが一部の研究から示唆されています。
2019年に発表された文献レビューによると、ヒトを含む哺乳類やウニといった動物を対象にした複数の研究で、CBDの使用が以下のような変化と関連していたことが報告されています。
- 精巣のサイズの縮小
- 精子をつくる細胞の減少
- 受精率の低下
- 性ホルモンの分泌低下
- 性行動の抑制(マウスにおける報告)
こうした結果から、「CBDは男性の生殖機能に悪影響を及ぼす可能性がある」と考えられています。
ただし、これらは主に動物実験をベースとした研究結果であり、人間における長期的な影響や可逆性についてはまだ十分に分かっていません。
CBDは性病や感染症の予防に役立つ?
結論から言えば、CBDが性病(性感染症)や感染症の予防に直接的に役立つという科学的根拠は現在のところ存在していません。
CBDには抗菌作用や抗炎症作用があるとする研究もありますが、それはあくまで特定の細菌に対してであり、HIV、クラミジア、淋菌、梅毒などの性感染症に対する予防効果は確認されていません。
感染症の予防には、コンドームの使用や定期的な検査、パートナーとの信頼関係の構築が基本となります。
【参考文献】
- Cannabidiol (CBD) Acts as an Antioxidant on Gardnerella vaginalis, Resulting in Reduced Metabolic Activity, Loss of Survivability, and Elimination of Biofilms
- CBD配合のデリケートゾーンオイルによるカンジダ菌抑制効果についての検証レポート
- A survey-based, quasi-experimental study assessing a high-cannabidiol suppository for menstrual-related pain and discomfort
- Cannabidiol Alleviates Chronic Prostatitis and Chronic Pelvic Pain Syndrome via CB2 Receptor Activation and TRPV1 Desensitization
- Regular marijuana users have more sex, study says
- The Relationship between Marijuana Use Prior to Sex and Sexual Function in Women
