あなたは「なかなか夜眠れない…」・「深く眠れず日中しんどい」といったお悩みを抱えていませんか?
日本人の3人に1人が不眠症状を抱えているといわれる今、そういった睡眠に関する悩みは珍しくありません。
本記事では、薬剤師である私が、不眠症の原因から改善方法まで徹底的に解説したいと思います。
ぜひ最後まで読んでいただき、質の良い睡眠を取り戻すヒントを見つけてください。
*不眠症は現在、不眠障害(Insomnia Disorder)へと病名が変更されています。本記事では便宜上、不眠症という表記で記載しています。
不眠症はどういった病気?原因は?
不眠症とは、「十分な睡眠を取れないことで日中の活動に支障をきたす状態」が続く睡眠障害のことです。
放置すると、集中力や気分の低下、仕事・学業への悪影響、さらにはうつ病など他の疾患のリスクも高まるため、早めの対処が重要となります。
ここでは、不眠症のタイプと原因について詳しく解説します。
不眠症の4つのタイプ

不眠症には、主に以下の4つのタイプがあります。
- 布団に入ってもなかなか眠りにつけない「入眠困難」
- 夜中に何度も目が覚めてしまう「中途覚醒」
- 本来の起床時間よりも2時間ほど早く目覚めてしまい、その後眠れない「早期覚醒」
- 睡眠時間は確保しているものの、深く眠れず休んだ感覚が得られない「熟眠障害」
また、不眠症は単独で起こるだけでなく、他の疾患と関連して現れることもあります。
例えば、うつ病や不安障害などの精神的ストレスが不眠症を引き起こすこともありますし、不眠症がさらに精神疾患のリスクを高める悪循環を招くことがあります。
不眠症が引き起こされる原因
多くの方が抱える「不眠症」ですが、一体どういったことが原因で引き起こされるのでしょうか。
ここでは、不眠症が引き起こされる原因を3つ解説したいと思います。
ストレスや不安
ストレスや不安は、不眠症の大きな原因となります。
仕事や家庭の問題、人間関係の悩みなどが積み重なると、人によっては夜になっても眠れなくなってしまいます。
特に、精神的なストレスが強いと睡眠の質が低下し、何度も目が覚める「中途覚醒」や「早朝覚醒」が生じることがあります。
生活習慣の乱れ

生活習慣の乱れも不眠症の原因と考えられています。
アルコールやカフェインの過剰摂取、夜遅くのスマートフォンやパソコンの使用、不規則な就寝時間などが、体内時計を乱し、入眠障害を引き起こすと考えられています。
これらの要因が積み重なると、慢性的な不眠症に発展することがあります。
身体的な要因
身体的な病気や疾患も不眠症の原因になります。
例えば、睡眠時無呼吸症候群(Sleep Apnea Syndrome; SAS)やパーキンソン病などがあると、夜間に何度も目が覚めることがあります。
また、身体の痛みやかゆみ、尿意なども眠りを妨げる要因となります。
不眠症の治療方法は?診断基準も解説
ここでは、不眠症の診断基準と治療方法について解説したいと思います。
不眠症の診断基準
不眠は一時的なもので、通常は数日から数週間で自然に改善することが多いとされています。しかし、中には長期間にわたって不眠が続くケースも存在します。
慢性的な不眠が続くと、日中に倦怠感や集中力の低下など様々な不調が現れ、生活の質が大きく損なわれます。
このように、「夜間に十分な睡眠がとれない状態が続いていること」と「日中に精神的・身体的な不調を感じること」という2つの条件が揃った場合、不眠症と診断されます。
不眠症は、その持続期間によって「慢性不眠症(慢性不眠障害)」と「短期不眠症(短期不眠障害)」に分類されます。
睡眠障害と日中の不調が週3回以上発生し、それが3カ月以上続く場合は慢性不眠症、3カ月未満であれば短期不眠症とされます。
短期的な不眠であっても症状が強い場合は早めに対処することが望ましく、特に3か月を超えて続くようなら専門医に相談しましょう。
不眠症の治療方法

「睡眠薬の適正な使用と休薬のための診療ガイドライン」より抜粋
不眠症の治療は、上記の診療ガイドラインに基づき、標準的な流れに沿って進められるのが一般的です。
治療には、主に「薬物療法」と「認知行動療法」の2つが利用されます。
薬物療法では、睡眠薬を用いて一時的に症状の改善を図ります。一方、認知行動療法では、睡眠に対する考え方や行動パターンを見直し、薬に頼らず睡眠の質を高めることを目指します。
ただ、睡眠薬には副作用や依存性のリスクがあるため、使用には十分な注意が必要です。
特に、ベンゾジアゼピン系薬剤は依存性の高さが問題視されており、慎重な管理のもとでの使用が求められます。
睡眠薬を利用する場合は、比較的依存や耐性が少ない「非ベンゾジアゼピン系睡眠薬」の利用を検討してみてもいいかもしれません。


【睡眠薬不要!】不眠症を改善する9個の方法
ここまでの説明から、不眠症の原因や治療方法などがお分かりいただけたと思います。
ここでは、不眠症を改善する9個の方法をご紹介したいと思います。
CBDを利用する
不眠の改善手段の1つとして、CBDの利用を検討してみてもよいでしょう。
CBD(カンナビジオール)とは、大麻に含まれるカンナビノイド成分の1つで、依存性や精神作用はなく、安全性が高いとされています。
実際、これまでの研究でも、CBDが不眠症の改善に役立つ可能性が示唆されています。
現在、市販されているCBD製品には、オイルやリキッド、グミなど様々なタイプがありますが、初めて使用する方には摂取しやすいカプセルタイプを選ぶのがおすすめです。
市販の睡眠改善薬を利用する
不眠の症状が軽い場合には、市販の睡眠改善薬を試してみるのも1つの方法です。
これらの薬は医師の処方を必要とせず、薬局やドラッグストアで手軽に購入できます。
主に抗ヒスタミン成分を利用して自然な眠気を促すタイプが多く、副作用も比較的少ないとされています。
持病がある方や他の薬を服用している場合は、事前に薬剤師に相談し、症状が改善しない場合は速やかに医療機関を受診しましょう。
生活リズムを整える
不眠を改善するためには、生活リズムを整えることも非常に重要です。人間の体内には「体内時計」と呼ばれる24時間周期のリズムが存在し、これが睡眠と覚醒のリズムをコントロールしています。
この体内時計を正しく働かせるためには、毎朝決まった時間に起きることが重要です。
起床後はすぐにカーテンを開けて、太陽光を浴びることを習慣にしましょう。光を浴びることで体内時計がリセットされ、夜に自然な眠気が訪れやすくなります。
また、朝起きる時間だけでなく、就寝時間もできるだけ一定に保つよう心がけましょう。夜更かしを避け、リズムを崩さないことが、安定した睡眠につながります。
適度な運動を取り入れる

適度な運動は、不眠の改善にとても効果的です。
ウォーキングや軽いランニング、サイクリングといった有酸素運動は、体を適度に疲れさせ、自然な眠気を促すとされています。
運動にはストレス解消効果もあり、心身のリラックスにもつながります。ただし、寝る直前に激しい運動を行うと交感神経が活発になり、かえって眠れなくなる可能性があるため注意が必要です。
運動は朝や昼間に取り入れるのが理想的で、続けることで睡眠リズムも整いやすくなります。
食事のタイミングと内容を工夫する
食事は睡眠の質に大きな影響を与えます。毎日決まった時間に食事をとることで体内リズムが整い、夜に自然な眠気を感じやすくなります。
特にビタミンB群やマグネシウムを多く含む食品を積極的に摂取し、メラトニンの生成をサポートしましょう。
また、夕食は就寝の2〜3時間前までに軽めに済ませるのが理想です。夜遅い時間の重い食事は消化を妨げ、眠りを浅くする原因になります。
寝る前の過ごし方を見直す
就寝前の過ごし方を工夫することも、不眠の改善に役立ちます。寝る前には読書や軽いストレッチなど、リラックスできるルーティンを取り入れ、心身を自然に眠りへ導きましょう。
スマホやパソコンのブルーライトは脳を刺激してしまうため、就寝前の使用は控えることが大切です。
また、眠れないことに意識が向きすぎると、さらに入眠が難しくなるため、音楽や自然音を聴いてリラックスするなど、プレッシャーを感じずに過ごす工夫も有効です。
睡眠環境を整える

快適な睡眠には、寝室の環境づくりが欠かせません。部屋は暗く静かで、やや涼しい温度に保つとよいでしょう。
時計は見える場所に置かず、時間を気にしない工夫をすることも大切です。ベッドでは食事や仕事を避け、睡眠だけに使うことで「ここに入れば眠る」という意識づけができます。
また、外からの光で目覚めないよう、遮光カーテンを活用するのも効果的です。このような心地よい空間を作ることが、自然な入眠と睡眠の質向上につながります。
心身をリラックスさせる
就寝前に心身をリラックスさせることで、自然な眠りに入りやすくなります。
まず、ぬるめ(38℃前後)のお湯にゆっくり浸かると、体温が一時的に上昇し、その後の体温低下により入眠しやすい状態を作ることができます。
また、ラベンダーやカモミールなどのアロマテラピーを取り入れると、副交感神経が優位になり、より深いリラックス効果が得られます。
さらに、腹式呼吸や軽い瞑想を行うことで心が静まり、寝つきがスムーズになります。加えて、失眠穴や丹田のツボ押しも就寝前に取り入れると、より効果的にリラックスできるでしょう。
睡眠状況を記録する
自分の睡眠状態を把握するために、睡眠日誌をつけることも有効です。
就寝・起床時間、夜中に目覚めた回数や眠れた感覚などを毎日記録することで、睡眠パターンや問題点が可視化されます。
これにより、生活リズムの乱れや不眠の原因に気づきやすくなります。さらに、記録を医師に見せることで、より的確な診断や治療方針の決定にも役立ちます。
簡単なメモでもよいので、継続して記録することが大切です。
不眠症に関するQ&A
不眠症は何科を受診するべき?
不眠症で悩んでいるとき、どの診療科を受診すべきか迷う方は少なくありません。
まずは「内科」または「睡眠外来」の受診をおすすめします。
特に内科であれば、身近なかかりつけ医として症状を総合的に診察してくれるため、安心して相談できます。
必要に応じて、心療内科やメンタルクリニックなど、より専門的な診療科へ紹介してもらうことも可能です。
また、「病院に行く時間がない」という方には、オンライン診療という選択肢もあります。スマートフォンやパソコンを使って、自宅から専門医に相談できる睡眠外来も増えています。
大切なのは、不眠の悩みを一人で抱え込まず、まずは気軽に医師に相談することです。どの診療科か分からなくても、まずは一歩踏み出してみましょう。