美容成分として注目される「PDRN」と「レチノール」。
どちらも人気の成分ですが、「一緒に使っても大丈夫なの?」と気になっている方も多いのではないでしょうか。
本記事では、PDRNとレチノールの併用の可否や使用順についてわかりやすく解説します。
さらに後半では、美容効果が期待されている「CBD」という成分にも触れてご紹介します。
PDRNとは?
まずは、PDRNの「特徴」と「期待されている効果」について解説したいと思います。
PDRNの特徴
PDRNとは、サケの生殖細胞(精子)から抽出された低分子DNA断片のことです。
現在は化粧品の機能性成分として活用されており、多くのブランドがPDRN配合のコスメを開発しています。
また、この成分は人間のDNA構造と非常に近く、副作用のリスクが少なく安全性が高い成分と考えられています。
実際に、EUや韓国食品医薬品安全処では医薬品成分として承認されており、その信頼性の高さから美容・医療の両分野で注目を集めています。
PDRNの効果

PDRNは過去の研究から、肌の再生を促進し、弾力やハリを高める効果が期待されています。
顔の皮膚老化に悩む患者を対象とした研究では、PDRNを投与したグループで皮膚の弾力性の改善や水分量の上昇、シワの減少が確認されました。
さらに、糖尿病モデルマウスを用いた創傷治癒の研究でも、PDRNを投与した群で傷の治癒速度が速まり、コラーゲン産生や血管新生(新しい血管の形成)が顕著に促進されたことが報告されています。
また、PDRNは上記の効果の他に加えて、炎症を緩和する「抗炎症作用」も期待されています。
レチノールとは?
次に、レチノールの「特徴」と「期待されている効果」について解説したいと思います。
レチノールの特徴
レチノールは、ビタミンAまたはその誘導体の一種で、スキンケアではエイジングケア成分として高い注目を集めています。
肌のターンオーバーを促進する働きがあり、コラーゲンの生成をサポートすることで、シワやたるみの改善に役立ちます。
一方で刺激性がある成分としても知られており、使用初期には乾燥や皮むけ、赤みといった肌トラブルが起こりやすいのが特徴です。
特に濃度が高い製品ほど反応が出やすいため、レチノール初心者は低濃度からスタートすることが推奨されています。
なお、市販の化粧品や医薬部外品に配合されるレチノールは、医師の処方が必要な「イソトレチノイン」や「トレチノイン」「アダパレン」などの医薬品レチノイドとは別の成分である点にも注意が必要です。
レチノールの効果
レチノールは、特にシワの改善、肌の弾力向上、毛穴の目立ち(開き・たるみ・詰まり)の改善、シミやくすみの軽減などが期待できる成分です。
例えば、2007年に行われた研究では、0.4%のレチノールを24週間継続して使用した高齢者の肌において、小ジワの減少とコラーゲン生成の増加が報告され、肌の弾力改善効果が実証されました。
さらに2020年の研究では、0.3%および0.5%濃度のレチノール美容液を12週間使用した結果、色素沈着やくすみが軽減され、肌のトーンが明るくなったことが確認されています。
このように、レチノールはシワや毛穴、シミなど幅広い肌悩みにアプローチできる有用な成分として、エイジングケアにおいて高い評価を得ています。
PDRNとレチノールは併用できる?使う順番は?
ここでは、「PDRNとレチノールは併用できるのか」ということと、「使う順番」について解説したいと思います。
併用しても基本的に問題がない

結論から言うと、PDRNとレチノールは併用しても問題がないと言われています。
むしろPDRNは抗炎症作用や組織修復作用を持つことが過去の研究で示されており、理論的にはレチノール使用に伴う乾燥や赤みといった刺激をやわらげるサポート役として働く可能性があります。
ただ、両者の併用については臨床試験で十分に検証されているわけではなく、明確なエビデンスは存在していません。
使う順番は特に決まっていない
PDRNとレチノールを併用する場合、使う順番に明確な決まりはありません。
ただし、スキンケアの一般的な考え方や成分の性質を踏まえると、次のような流れが自然とされています。
- 美容液どうしの場合
「レチノール美容液 → PDRN美容液」とするのがよく用いられる流れです。レチノールがターンオーバーを促し、その後にPDRNでうるおいと鎮静を補う形になります。
- PDRNが化粧水(トナー)、レチノールが美容液の場合
通常のスキンケアと同様に「PDRNトナー → レチノール美容液」。PDRNの保湿によって、後から使うレチノールの刺激がやわらぐことも期待できます。
- PDRNが美容液、レチノールがクリームの場合
「PDRN美容液 → レチノールクリーム」という順番が一般的です。肌を整えてからレチノールを重ねるイメージです。
なお、これらはあくまで成分の性質やスキンケアの一般原則から導かれる目安にすぎません。PDRNとレチノールの「順番」に関して、確固としたエビデンスがあるわけではない点にご留意ください。
PDRNとレチノールは他の美容成分と併用できる?
上記では、「PDRNとレチノールは併用しても基本的に問題がない」と説明しました。
ここでは、これら2つの成分は他の美容成分と併用ができるのかということを解説したいと思います。
PDRNは基本的にどの成分と併用しても問題がない

レチノールと併用しても問題がない「PDRN」ですが、基本的にどの成分と併用しても問題がないと考えられています。
むしろ、以下のような特定の美容成分と組み合わせることで相乗効果を発揮し、より高い効果が期待できると言われています。
- ヒアルロン酸
- グルタチオン
- セラミド
例えば、ヒアルロン酸には肌にうるおいを与えて乾燥から守る保湿効果がありますが、この保湿効果にPDRNの肌再生作用が加わることで、肌のキメが整い、ハリのあるなめらかな肌を目指せる可能性があります。
レチノールは併用に注意が必要な成分がある
PDRNと違い、実はレチノールは併用に注意が必要な成分がいくつかあります。
ここでは、レチノールとの併用に注意が必要な成分を4つご紹介したいと思います。
1.ビタミンC
ビタミンCは、肌を明るくし、シミを減らし、コラーゲン生成を促進するだけでなく、紫外線防御作用も持つ成分として広く使われています。
このビタミンCとレチノールを同時に使用する際には注意が必要です。
その理由の1つが、両成分の適正なpH値の違いです。レチノールはpH5.5〜7が適正とされるのに対し、ビタミンCはpH4〜5ほどが適しています。
マイアミ美容外科によると、これらを同時に使用すると肌のpHバランスが不安定になり、どちらの成分も本来の効果を十分に発揮できなくなる可能性があるそうです。
さらに、ロードアイランド皮膚科学研究所のキャロライン・チャン医師は、両者を併用することで刺激が高まり、赤みや乾燥、皮むけ、光過敏などの副作用が生じやすくなる点を指摘しています。
こうしたリスクを避けつつ両成分を取り入れるには、使用タイミングを分けることが推奨されます。
例えば、ビタミンCは朝に使用して紫外線ダメージから肌を守り、レチノールは夜に使用して肌の修復をサポートするのが望ましい方法です。
どうしても同じタイミングで使いたい場合には、ビタミンCを先に塗布し、その後に乳液を重ねることで浸透を助けつつ刺激を緩和し、最後にレチノールを塗布するのが推奨されています。
2.ピーリング剤

ピーリング剤を使うと、古い角質を取り除いて肌のターンオーバーを促進できます。しかし、レチノールと併用すると刺激が強まり、赤みや乾燥などの副作用を引き起こす可能性があるため注意が必要です。
特に、AHA(アルファヒドロキシ酸)やBHA(ベータヒドロキシ酸)といった酸を含むピーリング剤は注意が必要となります。
AHAやBHAは、皮膚表面の古い角質を剥がし落とし、下にある新しい肌を露出させる化学的な角質除去成分のことです。
対策としては、同じ日に重ねて使うのではなく、「夜ごとに交互に使用する」か、「レチノールを使わない日に週1回ほどピーリング剤を取り入れる」といった工夫が望ましいとされています。
3. フラーレン
フラーレンは強力な抗酸化作用を持ち、肌を保護する働きがある成分として知られています。
しかし、レチノールとの組み合わせはあまり良くないと考えられています。
なぜなら、どちらも作用が強いため、同時に使用すると肌に過度な刺激を与えるリスクがあるからです。
もし両方を取り入れる場合は、必ず少量から始め、肌の反応を確認しながら徐々に量や頻度を調整していくことが推奨されます。
4.ハイドロキノン
ハイドロキノンとレチノールは、いずれも効果の高いスキンケア成分です。
しかし、両者を同時に使用すると肌への負担が大きくなり、刺激が強まる可能性があります。
特に、レチノールを使い始めたときに生じやすいレチノイド反応(赤み・乾燥・皮むけ・ヒリつきなどの一時的な反応)が出ている場合は、併用を避けるのが安全です。
一方、トレチノインのように医師の管理下で処方されるビタミンA誘導体では、ハイドロキノンとの併用が治療目的で行われることもあります。
肌に効果が期待されている「CBD」もおすすめ

ここでは、「CBD」という肌に効果が期待されている成分について解説したいと思います。
そもそもCBDとは?
CBDとは「カンナビジオール(Cannabidiol)」の略で、大麻草(ヘンプ)から抽出される天然由来の成分です。
「大麻」と聞くと違法性や依存性をイメージしがちですが、CBDには精神を高揚させる作用・依存性はなく、違法成分であるTHCとはまったく異なります。
心身への作用としては、リラックス効果やストレスの緩和、睡眠の質の向上などが期待されており、近年は健康や美容の分野でも幅広く活用されるようになっています。
様々タイプで販売されている
CBDは用途に合わせてオイルやベイプ・グミなど様々な製品タイプで販売されています。
スキンケア分野では、クリームやジェルなどのCBD配合アイテムが人気で、肌をやさしく整えながら健やかな状態へ導くサポート成分として注目を集めています。
一方で、カプセルタイプのCBD製品も販売されており、こちらはサプリメント感覚で体内からCBDを取り入れたい方に選ばれるケースが多いです。
CBDの肌に対する主な効果

美容成分として注目を集めるCBDは、肌に対して様々な働きが期待されています。研究報告や臨床試験の知見をもとにすると、主に次の4つの効果が挙げられます。
- 保湿サポート
2021年の研究では、1%濃度のCBDをマウスの皮膚に塗布したところ、水分量が約1.3倍に増加したとの結果も報告されています。
- ニキビケア
CBDは皮脂分泌を抑え炎症を和らげる可能性があり、2014年の研究でも皮脂腺の働きを抑制し抗炎症作用を示すことが確認され、ニキビの原因に直接アプローチできる有望な成分と考えられています。
- 傷跡の改善
過去の臨床試験では、CBD配合の軟膏を3か月使用した結果、アトピーやニキビによる瘢痕(はんこん)が改善したという報告が得られています。
- 紫外線からの保護
CBDは酸化ストレスを抑える働きが注目されており、2021年の研究では紫外線を照射した皮膚細胞で細胞損傷を防ぐ作用が示され、紫外線による肌老化を防ぐ一助になると考えられています。
このように、CBDは保湿やニキビケアから紫外線対策まで、幅広い効果が期待される成分です。
まとめ
PDRNは肌の修復・再生をサポートし、レチノールはターンオーバーを促してシワや毛穴にアプローチする成分です。
PDRNとレチノールは併用しても問題がないと言われています。
むしろPDRNは、理論的にはレチノール使用に伴う乾燥や赤みといった刺激をやわらげるサポート役として働く可能性があります。
このように、両者は理論的に補い合う可能性がありますが、併用に関する臨床エビデンスはまだない点には注意が必要です。
新しい成分として注目されるCBDも含め、自分の肌状態に合った形で無理なく取り入れることが、美容成分を活かすポイントです。
【参考文献】
- Polydeoxyribonucleotide stimulates angiogenesis and wound healing in the genetically diabetic mouse
- Comparison of the effects of polynucleotide and hyaluronic acid fillers on periocular rejuvenation: a randomized, double-blind, split-face trial
- Improvement of naturally aged skin with vitamin A (retinol)
- A Clinical Anti‑Ageing Comparative Study of 0.3 and 0.5 % Retinol Serums
- Cannabidiol Application Increases Cutaneous Aquaporin-3 and Exerts a Skin Moisturizing Effect
- Cannabidiol exerts sebostatic and antiinflammatory effects on human sebocytes
- A therapeutic effect of cbd-enriched ointment in inflammatory skin diseases and cutaneous scars
- The Effect of Cannabidiol on UV-Induced Changes in Intracellular Signaling of 3D-Cultured Skin Keratinocytes

日本薬剤師研修センター研修認定薬剤師
日本臨床カンナビノイド学会認定登録師
所属学会:日本薬理学会、日本緩和医療薬学会、日本在宅薬学会、日本臨床カンナビノイド学会