近年、リラックスやストレス解消などの効果から注目を集めている「CBD」。
そんなCBDですが、摂取することで「睡眠に効果があるのか?」と疑問に感じている方は多いのではないでしょうか。
そこで、今回は薬剤師である私が「CBDは睡眠の質を高めることができるのか」ということについて詳しく解説したいと思います。
また、記事の後半では、「CBDの睡眠に対する効果を高める方法」・「CBDを摂取すると眠くなるのか」ということもご紹介しています。
そもそもCBDとは?
CBDとは、カンナビジオール(Cannabidiol)の略称であり、大麻草の成熟した茎や種子から抽出される成分の1つです。
CBDは大麻由来の成分の1つですが、大麻のような精神活性作用が無いことが分かっており、日本でも合法的に利用できます。
実際に、「厚生労働省 麻薬取締部」のホームページでも、CBDが大麻取締法上の「大麻」に該当しないことが記載されています。
また、CBDは過去の研究から、依存性や乱用性が無いことが分かっており、WHO(世界保健機関)にも安全性が認められています。
近年では、CBDに対する研究が世界中で行われており、医療や美容・食品など様々な業界での活用が期待されています。
CBDの利用目的に関する調査
実はCBDを睡眠のサポート目的で利用している人が多いことが、過去の調査から明らかになっています。
実際に、日本で行われた男女144名を対象にした調査でも、利用目的として上位に「睡眠の質の向上」・「不眠解消」が挙げられています。
また、海外のCBDユーザーに対する調査では、利用目的として「睡眠改善」を挙げていることが報告されています。
これらのことからも分かるように、CBDは睡眠のサポートとして利用している方は多くいらっしゃいます。
「寝つきが悪い」・「眠りが浅い」など睡眠に問題を抱えている方は、試しにCBDを利用してみることをおすすめします。
CBDはどのように睡眠をサポートするのか
先ほど説明したように、CBDを睡眠のサポート目的で利用している方は多くいらっしゃいます。
しかし、本当にCBDには睡眠のサポートをする効果があるのでしょうか?
ここでは、CBDが睡眠をサポートするメカニズムや、実際に有意な効果を示した研究をご紹介します。
CBDが睡眠のサポートをするメカニズム
結論から言うと、現段階ではCBDが睡眠をサポートするメカニズムは、完全には明らかになっていません。
下記で、現段階で考えられている説を2つ紹介します。
CBDで眠くなるメカニズム(1):セロトニン
一説では、CBDが自律神経を整える作用がある「セロトニン」を活性化することで、睡眠をサポートしているのではないかと言われています。
自律神経が正常に働いていない場合、「寝つきが悪い」・「途中で目が覚める」・「眠りが浅い」などの症状が出現するとされています。
CBDを摂取することで自律神経が整うと、体内時計が正常に働き、上記の睡眠の不調を改善することが期待されています。
CBDで眠くなるメカニズム(2):ECS
もう一つの見解では、CBDがECS(エンドカンナビノイドシステム)に間接的に作用することで睡眠をサポートしているのではないかと言われています。
ECSとは、脳・心臓・肺・肝臓・神経などの調整を行う「生命維持機能」のことです。
CBDは、ECSに作用することによって自律神経が整えられ、睡眠をサポートするのではないかと言われています。
これらのように、CBDの睡眠に対する効果のメカニズムは完全には明らかになっていません。
ただ、CBDの睡眠に対する有用性を示す研究はいくつもあるため、今後の研究に期待が高まります。
CBDの睡眠に対する研究
ここでは、CBDの睡眠に対して有意な効果を示した研究を2つご紹介します。
CBDが睡眠障害を改善した研究
2019年の研究では、被験者72人にCBDを投与し、睡眠障害や不安に対する有用性を評価する実験が行われました。
睡眠障害とは、「入眠困難」・「中途覚醒」・「早朝覚醒」などによって睡眠に影響が出ている状態のことです。
この実験では、被験者は1ヶ月間、CBDカプセル(25mg/日)を投与され、治療後の睡眠・不安スコアが評価されました。
結果、被験者の内66.7% の睡眠スコアが改善し、79.2% の不安スコアが低下したことが報告されました。
この研究は、CBDが睡眠障害に対して治療効果があることを示しています。
そのため、「寝つきが悪い」・「途中で目が覚める」などの睡眠障害にお悩みの方は、CBDを摂取してみてはいかがでしょうか。
CBDが睡眠の質を向上した研究
2022年に行われた研究では、被験者に5%のCBDオイル(50mg)とプラセボ(偽薬)を投与する実験が行われました。
この実験では、被験者に脳波または注意力テストを行うことで、CBDの睡眠に対する有用性を評価しました。
その結果、CBDは「徐波睡眠」の割合を増加させることで、被験者の睡眠の質を向上させたことが報告されました。
徐波睡眠は、「ノンレム睡眠」の中で最も深い睡眠の状態であり、熟睡感に関係があると考えられています。
また、CBDは睡眠後半の「レム睡眠」の時間を増加させることで、質の良い睡眠構造を促進したことも示唆されました。
この研究結果は、CBDには「深い睡眠」と「質の良い睡眠」の両方をサポートする効果があることを示唆しています。
寝つきが悪い方や、寝ても疲れが取れない方などは、試しに就寝前にCBDを摂取してみることをおすすめします。
睡眠改善にCBDを使うメリット
不眠症など睡眠障害の改善には、「睡眠薬」や「抗不安薬」が利用されることが一般的です。
しかし、睡眠薬や抗不安薬には、
- 依存性がある
- 耐性がある
- 翌日に眠気や倦怠感が残る
- めまいやふらつきによる転倒、骨折の恐れ
などのリスクがあることが分かっており、精神や身体に負担がかかるとされています。
一方、CBDには、睡眠薬のように強制的に眠気を生じさせる効果や依存性や耐性が無く、根本的に睡眠の質を改善することが期待できます。
体に負担をかけず、安全に睡眠の改善を行いたい方は、試しにCBDを利用してみることをおすすめします。
CBDで睡眠の質を上げる方法
皆さんの中にも、「睡眠の質を上げて気持ちのいい一日を過ごしたい…」とお考えの方々は多いと思います。
では、CBDで睡眠の質を上げるためには具体的にどうすればいいのでしょうか?
ここでは、CBDで睡眠の質を上げる方法を4つご紹介するので、是非参考にしてみてください。
自分の最適な摂取量を把握する
CBDで睡眠の質をあげるためには、自分にとって最適なCBD摂取量を把握することが重要となります。
先程説明したように、CBDには「二相性」という特徴があり、低用量で「覚醒作用」、高用量では「鎮静作用」があるとされています。
そのため、自分の適切な摂取量を把握できていないと、CBDの睡眠に対する十分な効果を得られない場合があります。
CBDで睡眠の質の質を上げたいと考えている方は、CBD100mg〜を目安として就寝前に摂取することをおすすめします。
特に、初心者の方やお手軽に摂取したい方は、「CBDカプセル」を利用することがおすすめなので是非チェックしてみてください。
CBDオイルやエディブルを利用する
CBDは、摂取方法によって「効果の持続時間」が大きく異なることがわかっています。
CBDの摂取方法ごとの「効果の持続時間」は、以下を目安程度にご参照ください。
CBDオイル(舌下摂取) :6時間前後
CBDベイプ(吸入摂取) :2〜3時間前後
CBDエディブル(経口摂取):6〜10時間前後
上記からも分かるように、CBDべイプ(経口摂取)の「効果の持続時間」は、2〜3時間前後と短くなっています。
そのため、睡眠の質を改善するためにCBDべイプを利用しても、睡眠中に効果が切れる可能性がありおすすめできません。
CBDを睡眠改善の目的で利用する場合は、持続時間が比較的長い「オイルやエディブル」を就寝前に利用することをおすすめします。
夕食後にCBDエディブルを摂取する
CBDで睡眠の質を上げたい場合は、脂質の多い食事を食べた後に、CBDエディブルを摂取することもおすすめです。
CBDは脂溶性(油に溶けやすい性質)であることから、脂質の多い食事の後に摂取することで吸収率を上げることが期待できます。
実際、2019年の研究では、空腹時に比べ、CBDカプセルを脂質の多い食事と一緒に摂取した場合は、吸収率が約4倍であったことが報告されています。
CBDエディブルは、「効果が出るまでの時間」、30分〜2時間ほどと長いため、摂取する場合は就寝前から逆算して摂ることをこころがけましょう。
また、CBDエディブルの中でもCBDカプセルは、胃液の影響を受けずにCBDを摂取できるため、さらに効果を高めたい方におすすめです。
ブロードスペクトラムを利用する
CBDで睡眠の質を上げたい場合は、ブロードスペクトラム製品を利用してみるのもいいかもしれません。
ブロードスペクトラムとは、CBDに加えて、他の麻成分(CBN・CBG・テルペン)を含んだCBD製品のことです。
このCBD製品には、上記の成分が相互に作用することで、より強い効果を発揮する「アントラージュ効果」という特徴があります。
ただ、このアントラージュ効果によってどの程度効果が高まるのかということは、明確に分かっていません。
また、ブロードスぺクロムは、軽い精神作用があるとされている「CBN」などを含んでいることが多いため、安全性を重視したい方にはあまりおすすめできません。
安全性を重視したい方は、純粋なCBDのみを含んだ「アイソレート」を利用することをおすすめします。
CBDを摂取すると眠くなる?
結論から言うと、CBDを多量に摂取すると、CBDの効果によって眠気を感じる場合があります。
CBDを摂取して眠気が起きる量は、体重や体質などの身体的要素によって異なり、個人差があります。
ただ、CBDによって眠気を感じるメカニズムは、現段階では完全に明らかになっていません。
一説では、CBDが「アデノシン」の働きを促進することで起こるとされています。
「アデノシン」は、睡眠作用のある脳内物質であり、CBDによって細胞への取り込みが阻害されることで働きが促進されます。
このように、CBDを多量に摂取することで、人によっては眠気を感じる場合があるため、車の運転前などには注意することをおすすめします。
CBDで眠くならないためには
CBDは多量に摂取することで、人によっては眠気を感じる場合があります。
では、CBDで眠気を感じないためにはどうすればいいのでしょうか?
ここでは、CBDで眠くならないための注意点を2つご紹介するので、是非参考にしてみてください。
CBDの摂取量に注意する
CBDで眠気を感じないためには、摂取量に注意をすることが重要になります。
CBDには、「二相性(摂取量によって効果が異なる)」という特徴があり、低用量で「覚醒作用」、高用量では「鎮静作用」があるとされています。
2017年の研究では、「高用量のCBD(20mg/kg)」を投与された被験者は、眠気を感じたことが報告されています。
一方、2004年の研究では、「低用量のCBD(15mg)」を投与された被験者には、軽い覚醒作用が見られたことが報告されました。
このように、CBDには「二相性」という特徴があるため、多量に摂取することで人によっては眠気を感じる場合があります。
そのため、人によって適切な摂取量は異なりますが、眠気を感じたくない方はCBDを少量から摂取することをおすすめします。
CBDを摂取するタイミングに注意する
上記で説明したように、CBDは「体質や摂取量」などによって眠くなることがあるとされています。
そのため、睡眠に対する効果を目的としない方は、摂取のタイミングにも注意する必要があります。
具体的には、仕事や車の運転前などの眠気を避けたいタイミングは、CBDを摂取することを控えましょう。
また、前述したようにCBDには「二相性」という特徴があるため、摂取量を少なくすることで眠気を避けることも期待できます。
CBDを摂取するタイミングに注意しながら、自分の適切な摂取量を見つけましょう。
CBD薬剤師の質問コーナー
CBDの効果が出るまでの時間は?
CBDの効果が出るまでの時間は、摂取方法によって異なります。
あくまで目安ですが、CBDの効果が出るまでの時間は以下の数を参考にしてみてください。
- 舌下摂取(CBDオイル) :30分前後
- 吸入摂取(CBDベイプ) :数分〜10分前後
- 経口摂取(CBDカプセルなど):30分〜1.5時間前後
- 経皮摂取(CBDクリームなど):30分〜2時間前後
CBDで日中に眠気を感じた場合は?
もし、CBDの摂取によって、日中に眠気を感じた場合は、CBDを摂取する時間帯や摂取量を調整しましょう。
時間帯でいえば、日中に摂取するのではなく、就寝前にCBDを摂取することをおすすめします。
また、摂取量でいえば、日中に眠気を感じた量よりも、少ない量のCBDを摂取してみることをおすすめします。
CBDはどんな睡眠障害に効果がありますか?
CBDは、「入眠障害」・「中途覚醒」・「早朝覚醒」・「熟眠障害」の4種類の睡眠障害に対して効果が期待されています。
特に、「入眠障害」と「熟眠障害」に対して高い効果が期待されており、過去のアンケート調査では、全体の約90%が改善を実感したことが報告されています。
参考文献
- 「厚生労働省 麻薬取締部」のホームページ:CBDは大麻取締法上の「大麻」に該当しない
- Trial of Cannabidiol for Drug-Resistant Seizures in the Dravet Syndrome
- Effect of Delta-9-tetrahydrocannabinol and cannabidiol on nocturnal sleep and early-morning behavior in young adults
- Cannabidiol in Anxiety and Sleep: A Large Case Series
- Food effect on pharmacokinetics of cannabidiol oral capsules in adult patients with refractory epilepsy
- 【CBD最新アンケート】「CBD商品を初めて購入したきっかけや理由」に関するアンケート調査を公開
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