大麻由来の成分であるCBDは「リラクゼーション効果」や「ストレスの緩和」などの様々なメリットを人体に対してもたらすことが分かってきています。
そんな「CBD」ですが、近年「猫や犬などのペットに対しても効果がある」といった噂を聞くことが増えてきています。
皆さんの中にも、「猫や犬などのペットにCBDを利用してみたい…」と考えている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
今回は薬剤師の私が、「CBDは猫や犬などのペットに効果があるのか」ということを解説したいと思いますので、是非最後までご覧ください。
また、記事の後半では、「CBDは猫や犬が摂取しても安全なのか」ということや、「CBDを猫や犬に投与する際のポイント」を解説・ご紹介したいと思います。
CBDとは?
CBDとは、「Cannabidiol(カンナビジオール)」の略称で、大麻草に含まれる100種類以上ある「カンナビノイド」と呼ばれる成分の1つです。
ここでは、「CBDがどういった成分なのか」ということを解説したいと思います。
CBDの危険性と違法性
CBDが「カンナビス(大麻)」由来の成分であると聞くと、危険性や違法性を心配される方もいるかもしれません。
しかし、CBDはこれまでの研究により、人体に対して有害な影響をほとんど与えないと報告されており、安全性の高い成分とされています。
実際、WHO(世界保健機関)も「CBDは安全な成分」であると認めています。
さらに、違法性についても、CBDは「大麻取締法」における「大麻」には該当しないため、所持や使用が違法とされることはありません。
なお、2023年12月に「大麻取締法」が改正され、麻薬及び向精神薬取締法と大麻草の栽培に関する規制が新たに「大麻栽培規制法」に区分されました。
CBDに期待される効果
CBDは、人体に対して以下のような効果が期待されています。
- ストレスの緩和
- 不眠症の改善
- 肌のトラブル解消
- アンチエイジング効果
- てんかん症状の緩和
- 吐き気の軽減
海外では、これらの効果が多くの疾患を持つ患者に対して注目され、広く利用されています。
特に、難治性てんかんに対する有効性が注目されており、海外ではCBDを主成分とする「エピディオレックス」という医薬品が抗てんかん薬として使用されています。
この医薬品は、「ドラべ症候群」「結節性硬化症」「レノックス・ガストー症候群」といった難治性てんかんに対して効果が期待され、日本でも現在、臨床試験が行われています。
2023年12月の大麻取締法改正により、日本でもCBDの医療利用が可能となり、今後の医療業界での展開が期待されています。
CBDは猫や犬に効果がある?
人に対しては様々な効果が期待されている「CBD」ですが、猫や犬などの動物に対しても同様の効果を期待することができるのでしょうか?
結論から言うと、猫や犬などのペットに対しても同様の効果を期待することができます。
ここでは、「CBDが猫や犬に対して効果を引き起こす理由」を解説することに加え、「CBDが猫や犬に対して効果を示した研究や事例」をご紹介したいと思います。
CBDが猫や犬に対して効果を引き起こす理由
上記でも説明したように、CBDは人だけではなく、猫や犬などのペットに対しても効果を引き起こすことが期待されています。
CBDは、ECS(エンドカンナビノイドシステム)に作用することで様々な効果を引き起こすとされています。
ECSとは、動物が生きていく上で必要な神経・免疫バランスを調節し、健康な身体を維持するためのシステムのことです。
このECSは、昆虫以外の全ての動物に備わっていることが分かっているため、人と同様に猫や犬にも効果を期待することができます。
実際に2021年の論文では、CBDを投与された猫と犬には、自傷行為などの問題行動の減少が見られたことが報告されています。
CBDが猫や犬に対して効果を示した研究や事例
CBDが猫や犬に対して効果を示した研究や事例が過去にいくつか報告されており、具体的には、
- てんかん
- 痛み
- 問題行動(反復的行為・自傷行為・過度の舐め行動など)
- アトピー性皮膚炎
などの症状に対して効果を示したことが明らかになっています。
ここでは、CBDが猫や犬に対して効果を示した研究や事例をご紹介したいと思いますので、気になった方はぜひチェックしてみてください。
猫に対してCBDが効果を示した研究や事例
猫に対してCBDを利用した研究はあまり多くありませんが、過去の研究ではCBDを投与された猫は「反復的行為」や「自傷行為」が軽減したことが示唆されています。
この研究では、猫を含む動物に「0.15-0.85 mg/kg」のCBDを1日2回、空腹時に経口投与することで、有用性が評価されました。
また、過去に報告された事例では、CBDを投与された猫には、「過度の舐め行動の改善」や「発作頻度の低下」が見られたことが報告されています。
このように、CBDは猫に対して様々なメリットを与える可能性がありますが、依然研究の数は少ないため、今後の更なる研究に期待が高まります。
犬に対してCBDが効果を示した研究や事例
犬に対してCBDを利用した研究は、猫に対する研究よりも多く行われており、様々な効果があることが分かっています。
実際2019年の研究では、CBDを投与された犬のグループで発作の頻度が大幅に減少したことが報告されています。
また、2018年に行われた研究では、CBDオイルを投与された犬のグループで、痛みの優位な減少が見られたことが報告されています。
これらは研究の一部ではありますが、犬が抱える症状に対するCBDの有用性を示唆しており、今後の更なる研究に期待が高まります。
ちなみに、8歳のメスのゴールデンレトリバーにCBDオイルを投与した事例では、アトピー性皮膚炎診断スコアが半減したことも報告されており、アトピー性皮膚炎に対する有用性も示唆されています。
CBDは猫や犬に有害な副作用を引き起こす?安全?
CBDは過去の研究から、高用量のCBDを摂取した場合でも、人体に対して重篤な副作用を引き起こさないことが分かっており、安全性が高いことが明らかになっています。
では、猫や犬などの動物が摂取したとしても、安全なのでしょうか?
ここでは、「CBDは猫や犬が摂取しても安全なのか」ということを解説したいと思いますので、気になった方は是非チェックしてみてください。
CBDは猫や犬に対して安全である可能性が高い
結論から言うと、CBDは猫や犬に対して安全である可能性が高いとされています。
ここでは、CBDの安全性を示した研究をそれぞれ1つずつご紹介したいと思います。
猫に対してCBDの安全性を示した研究
2021年の研究では、20匹の健康な猫に対してCBD、またはTHC・プラセボ(偽薬)を投与することで、CBDの猫に対する安全性が評価されました。
ちなみに、この研究では「CBD」は最大 30.5 mg/kg 、「THC」は最大41.5 mg/kgを投与されました。
研究の結果、CBD並びにTHCを投与された猫には重篤な副作用が見られず、猫に対するCBDの安全性の高さが示唆されました。
これらの結果は、猫に対するCBDの潜在的な治療的使用を検討したりする際に、獣医師にカンナビノイドの安全性プロファイルに関する情報を提供することが期待されます。
犬に対してCBDの安全性を示した研究
2021年の研究では、20匹のビーグル犬に対してCBDを1日に最大12mg/kg投与することで、CBDの犬に対する有用性が評価されました。
この研究は4週間行われ、5つのグループに分けられたビーグル犬はCBD、またはプラセボ(偽薬)を経口投与されました。
研究の結果、CBDを投与されたビーグル犬は、安全性結果に臨床的に重要な変化が見られなかったことが報告されました。
この研究は犬に対するCBDの安全性を示唆しており、今後の更なる研究に期待が高まります。
ただし、摂取量によっては副作用が起こる可能性もある
人体に対して安全性を示している「CBD」ですが、多量に摂取することで人体に、
- 眠気
- 喉の渇き
- 軽度のめまい
- お腹が緩くなる
などの副作用を引き起こす可能性があることが分かっています。
実は、人と同様に猫や犬などの動物も多量に摂取することで、「鼻が渇く(唾液減少)」・「血圧低下」・「眠気」などの副作用が引き起こされる場合があると言われています。
そのため、CBDを猫や犬などの動物に投与する際は、適切な量のCBDを投与することが重要となります。
以下では、CBDを猫や犬に投与する際の頻度や量をご紹介しているので、気になった方は是非チェックしてみてください。
CBDを猫や犬に投与する際のポイント
ここまでの説明から、CBDは猫や犬に対して安全である可能性が高いことがお分かりいただけたと思います。
ここでは、CBDを猫や犬に投与する際のポイントを2つご紹介したいと思います。
ペット用のCBD製品を利用する
CBDを猫や犬に投与する際は、人間用のCBD製品を利用するのではなく、ペット用のCBD製品を利用することがおすすめです。
なぜなら、人間用のCBD製品には、猫や犬などが摂取してはいけない成分が含まれている場合があるからです。
例えば、猫がCBD製品に含まれる「リモネン」を摂取してしまうと、下痢などの副作用が起こるため、注意が必要となります。
リモネンとは、大麻草などの植物に含まれる芳香成分である「テルペン」の一種です。
また、人間用のCBD製品はCBDの含有量が高いため、意図せずに大量のCBDをペットに投与してしまう可能性があるので、ペット用のCBD製品を利用することがおすすめです。
最近では、ペット用の「CBDオイル」・「CBDエディブル」も多く販売されているので、CBDを猫や犬に投与する際は購入を検討してみてください。
適切な量のCBDを投与する
猫や犬などの動物にCBDを多量に投与した場合、副作用が起こる可能性があるため、適切な量のCBDを投与することが重要となります。
適切なCBDの量には個体差があるため、様子をみつつ、効果が無ければ、少しずつ摂取の頻度を増やしてくことをおすすめします。
摂取の頻度や量の目安としては、獣医師の「ロバート・シルバー博士」が推奨する以下の数値を参考にしてみてください。
【猫の場合】
- 1回0.15〜0.74mg/kgのCBDを1日に2回
例)体重が10kgの猫なら1.5〜7.4mgのCBDを、体重が20kgの猫なら3〜14.8mgのCBDを1日に2回投与
【犬の場合】
- 1回0.05mg/kgのCBDを1日に2回
例)体重が10kgの犬なら0.5mgのCBDを、体重が20kgの犬なら1mgのCBDを1日に2回投与
他にも、茂木先生の所属されている「アニマルCBD研究会」の動画などをご覧いただくのも良いかもしれません。
CBD薬剤師の質問コーナー
子犬は生後何ヶ月からCBDオイルを使用できますか?
子犬へのCBDオイルの使用は、一般的には成犬になってからが推奨されています。
犬種や個々の成長速度、飼育環境などによって異なりますが、一般的に犬は生後1年半から2年で成犬と見なされます。
この時期になると、体も安定し、安全にCBDオイルを使用することができるようになります。
ただし、初めて使用する場合や不安がある場合は、必ず事前に獣医に相談することをお勧めします。
獣医は個々の犬の健康状態や体質を考慮し、適切なアドバイスを提供してくれるでしょう。
犬がCBDを摂取する場合、食事に混ぜるのと舌下摂取どちらが効果的ですか?
CBDを食事に混ぜて摂取した方が効果的だと考えられます。
これまで、CBDは舌下から吸収されるものだと考えられていました。
しかし、最近の研究では、CBDを舌下に含んでから摂取した場合と、カプセルを経口摂取した場合では血中濃度において差がなかったことが示されました。
また、CBDを犬に舌下摂取させるのは難しいと考えられます。
単に「CBDを食事に混ぜる」と「CBDの舌下吸収」場合の吸収率を比べると、CBDを脂肪分の多い食事に混ぜた方が効果的であると考えられます。
【参考文献】
- Potential Clinical Impact of Cannabidiol (CBD) in Canine and Feline Behavior: An Open-label Clinical Trial
- Randomized blinded controlled clinical trial to assess the effect of oral cannabidiol administration in addition to conventional antiepileptic treatment on seizure frequency in dogs with intractable idiopathic epilepsy
- Pharmacokinetics, Safety, and Clinical Efficacy of Cannabidiol Treatment in Osteoarthritic Dogs
- CBDを使用した症例解説動画
- Safety and tolerability of escalating cannabinoid doses in healthy cats
- Randomized, placebo-controlled, 28-day safety and pharmacokinetics evaluation of repeated oral cannabidiol administration in healthy dogs