「CBD」は、「健康増進」や「リラクゼーション」などの効果から、日本などの世界中の国々で注目を集めています。
そんなCBDですが、近年「頭痛に対して効果がある」といった噂を耳にする機会が増えてきています。
皆さんの中にも、「CBDは本当に頭痛に対して効果があるの?」と疑問を持っている方もいらっしゃるのではないでしょうか?
今回は薬剤師である私が、CBDや大麻の「頭痛に対する効果」や「CBDの痛みを伴う疾患に対する効果」などを解説したいと思います。
また、現在X(旧Twitter)・Instagramにて、CBDを含む大麻成分に関する情報をエビデンスを基に発信しているので、気になった方は是非チェックしてみてください!
CBDとは?
CBDとは、「カンナビジオール(英:Cannabidiol)」の略称で、大麻に含まれる「カンナビノイド成分」の1つです。
CBDは過去の研究から、安全性が高い成分であることが分かっており、「WHO(世界保健機関)」にも、その安全性の高さが認められています。
さらに、CBDは違法性が無いことも明らかになっており、日本で所持や利用したとしても、逮捕されることはありません。
また、CBDは過去の研究から、
- 睡眠の質の改善
- 鎮痛作用
- 抗炎症作用
- 抗不安作用
- 抗てんかん作用
- 抗がん作用
などの効果が期待されており、一部の国々では医薬品としても使用されています。
近年、CBDは世界中の多くの国々で研究が行われており、「美容」や「健康」といった様々な分野で活用が期待されています。
そもそも頭痛とは?
頭痛とは、頭部の全体、あるいは一部の痛みの総称であり、「後頭部」や「首(後頸部)の境界」・「眼の奥」などの痛みも頭痛として扱われます。
現在、日本には「頭痛患者総数」が約3,200〜3,300万人ほどいると言われており、日本人の約3〜4人に1人が頭痛に悩まされています。
ここでは、そんな頭痛の「種類や原因」・「現在行われている治療法」について簡単に解説したいと思います。
頭痛の種類や原因
様々な種類がある頭痛ですが、大きく「一次性頭痛」と「二次性頭痛」の2種類に分類することができます。
「一次性頭痛」とは、はっきりとした原因や疾患が見当たらない頭痛のことであり、「偏頭痛」や「緊張型頭痛」・「群発頭痛」などは、これに当てはまります。
「一次性頭痛」が起こる原因は、明らかになっていませんが、一部では「ストレス」や「生活習慣」・「姿勢」などが原因で起こるのではないかと考えられています。
その一方、「二次性頭痛」とは、病気などのはっきりとした原因によって引き起こされる頭痛のことで、「くも膜下出血」や「脳腫瘍」による頭痛は、これに当てはまります。
「二次性頭痛」の中には、上記の疾患による「命に関わる頭痛」もあるため、これまでにない頭痛が現れた場合は、かかりつけの医師に相談することをおすすめします。
ちなみに、「風邪」や「熱中症」・「アルコール」などの日常的な病気や行動が原因で起こる一過性の頭痛も、「二次性頭痛」に分類されます。
現在行われている頭痛の治療法
多くの方が悩まされている「頭痛」ですが、どういった治療が施されるのでしょうか?
結論から言うと、頭痛の治療法は、「一次性頭痛」と「二次性頭痛」によって異なります。
「二次性頭痛」の場合、原因となる病気に対する治療がメインとして行われ、それぞれの病気に合った「外科治療」や「投薬治療」が行われます。
その一方、「一次性頭痛」の場合は、主に「非ステロイド系抗炎症薬 (NSAIDs) 」などの鎮痛薬が利用され、症状によっては「理学療法」が利用されることもあります。
頭痛を放置すると、慢性化したり、命に関わる場合もあるため、できれば病院にいって診察を受けることをおすすめします。
CBDや大麻は頭痛に効果がある?
CBDは「リラクゼーション」などの様々な効果が期待されていますが、「頭痛」に対しても効果が期待できるのでしょうか?
ここでは、「CBDや大麻は頭痛に効果が期待できるのか」ということを、エビデンスを基に解説したいと思うので、ぜひチェックしてみてください。
CBDは頭痛にも効果が期待されている
様々な効果が期待されている「CBD」ですが、「鎮痛作用」もあるとされており、「頭痛」に対しても効果が期待されています。
アメリカのアクソン・リリーフ社が行なった調査では、予防治療としてのCBDの頭痛に対する有用性が評価されました。
この調査では、偏頭痛持ちの患者105名に対して、CBDオイルが30日間投与され、判断基準としては「HIT-6」(頭痛の日常生活への影響を数値化するテスト)が使用されました。
その結果、偏頭痛持ちの患者の内、86%が「偏頭痛が緩和した」と回答し、頭痛を感じた日数は、平均3. 8日も減少したことが明らかになりました。
この研究は、臨床試験で求められるような科学的厳密さをもって行われてはいませんが、CBDの頭痛に対する有用性を示唆しています。
今後の更なる研究や調査に期待が高まると同時に、頭痛などの痛みにお悩みの方はぜひ一度CBDサプリメントなどのCBD製品を利用してみてもいいかもしれません。
大麻も頭痛に対して効果が期待されている
大麻には、「頭痛」の症状を緩和する効果が期待されています。
2019年のワシントン大学の研究では、偏頭痛に対して医療大麻を利用した患者のデータを分析し、医療大麻の有用性が評価されました。
この研究では医療大麻の記録用アプリから、合計19,734件の患者のデータが収集・分析されました。
その結果、偏頭痛に大麻を利用した患者の88.1%に痛みの軽減が見られたことが明らかになりました。
また、他の研究では、医療大麻を偏頭痛に利用した患者の94%が、2時間以内に痛みの改善を自覚していたことが報告されています。
これらの研究結果は、医療大麻の頭痛に対する有用性を示唆しており、今後の更なる研究に期待が高まります。
CBDの頭痛に対するメカニズム
上記からもお分かり頂けたように、CBDには「鎮痛作用」があるとされており、「頭痛」に対しても効果が期待されています。
では、CBDはどのようなメカニズムで、「鎮痛作用」を引き起こすのでしょうか?
ここでは、現段階で考えられている「CBDが鎮痛作用を引き起こすメカニズム」を3つご紹介したいと思います。
TRVP1受容体の働きを阻害する
CBDは、神経受容体である「TRVP1受容体」の働きを阻害することで「鎮痛作用」を引き起こすのではないかと考えられています。
TRV1受容体とは、カプサイシンなどの痛み刺激を感じる上で重要な役割をもつ受容体のことです。
実際に2020年の研究では、CBDが「TRVP1受容体」の伝達シグナルを生物学的に阻害することが示されています。
また、他の研究では、CBDが「TRVP1受容体」に直接作用することで、アロディニアを緩和したことが報告されています。
アロディニアは、通常痛みとして感じない接触や圧迫を痛みをして感じる感覚異常のことであり、末梢神経損傷などの疾患に見られます。
セロトニン受容体の5-HT1Aに作用する
CBDは、セロトニン受容体である「5-HT1A」に作用することで「セロトニン」の働きを促進させることが分かっています。
セロトニンとは、脳の神経伝達物質の1つであり、「鎮痛作用」があるとされています。
そのため、CBDを摂取し、「セロトニン」の働きを促進させることで、痛みを抑制することが期待できます。
実際に海外の研究では、CBDがセロトニン受容体である「5HT1A」の神経伝達を促進することが示唆されています。
CB1受容体に間接的に作用する
CBDの「鎮痛作用」は、CBDが人体にある「カンナビノイド受容体」に間接的に作用することでも起こるのではないかとも考えられています。
カンナビノイド受容体とは、CBDなどのカンナビノイドが作用する受容体のことで、「CB1」と「CB2」の2種類に分類することができます。
「鎮痛作用」を引き起こすと考えられているのは、「CB1」の方であり、その他にも「不安の緩和」や「感情のコントロール」などの効果を引き起こされると考えられています。
その一方、CBDが「CB2」に作用すると、「免疫の調整」や「抗炎症作用」などの効果が引き起こされるとされています。
また、これらCBDが作用する一連の流れは、ECS(エンドカンナビノイドシステム)と呼ばれています。
CBDは他の痛みを伴う疾患にも効果が期待されている
頭痛に対して効果が期待されている「CBD」ですが、実は他の痛みを伴う疾患に対しても効果が期待されています。
ここでは、CBDの効果が期待されている「痛みを伴う疾患」を5つご紹介したいと思います。
関節炎
2017年のカナダの研究では、変形性関節症(関節炎の一種)を患ったマウスにCBDを投与することで、有用性を確かめる実験が行われました。
この実験では、マウスにCBD(100〜300μg)を投与し、変形性関節症に対する治療効果と予防効果を評価しました。
実験の結果、CBDを投与されたマウスは関節の痛みと炎症が抑制され、神経の損傷が軽減されたことが報告されました。
これらのことから、関節炎の痛みや炎症などの症状に悩まされている方は、CBDを摂取することをおすすめします。
顎関節症
顎関節症とは、アゴ周りの筋肉の硬直などが原因で、「顎関節に痛みを感じる」「口の開閉がしにくい」などの症状を伴う疾患です。
2019年の研究では、顎関節症の患者60名に「CBDオイル(7%)」または「プラセボ(偽薬)」を顎周囲の皮膚に塗布し、有用性を評価する実験が行われました。
この実験では、患者に1日に2回「CBDオイル」または「プラセボ」を塗布し、14日間経過が観察されました。
研究の結果、CBDを塗布された患者は、アゴ周りの筋肉硬直が緩和され、痛みが軽減されたことが報告されました。
この研究は、CBDの顎関節症に対する有用性を示しており、今後新たな治療手段として利用されることが期待されます。
顎関節症にお悩みの方は、試しにCBDオイルやクリームなどを使用してみてはいかがでしょうか?
末梢神経障害
末梢神経障害とは、末梢神経がダメージを負うことによって、手足に「痛み」や「かゆみ」などの症状が現れる疾患のことです。
アメリカの研究では、末梢神経障害の患者29名に「CBDオイル(0.3%)」または「プラセボ(偽薬)」を患部に塗布し、有用性が評価されました。
その結果、CBDオイルを塗布されたグループは、プラセボに比べ「激しい痛み」や「鋭い痛み」が緩和されたことが報告されました。
さらに、末梢神経障害によって起こる「かゆみ」や「手足の冷え」などの症状が改善されたことも明らかになりました。
この研究は、CBDの末梢神経障害に対する有用性を示しており、今後新たな治療手段になることが期待されます。
筋筋膜性疼痛
筋筋膜性疼痛症候群とは、咀嚼筋の緊張や疲労、痙攣・収縮によっておこる口や顎などの頭頸部痛のことです。
2019年の研究では、筋筋膜性疼痛のマウスにCBN(1mg/ml) または、CBD(5mg/ml)を投与し、有用性が評価されました。
研究の結果、CBNとCBDは、どちらも単体で「感作(普段より痛みを強く感じる状態)」を軽減したことが示唆されました。
また、CBNとCBDを一緒に投与した場合は、単体の投与に比べて、「感作」を軽減した期間がより長かったことが分かりました。
表皮水疱症
表皮水疱症とは、「痛み」や「痒み」・「水脹れ」を伴う先天性の皮膚疾患のことです。
CBDの表皮水疱症に対する観察研究は全3例あり、それぞれ患者にCBDオイルやクリームなどを患部に塗布しました。
観察研究の結果、CBDを使用した患者は痛み・水膨れが改善し、傷の治癒が早くなりました。
また、患者の1人は、眠気や便秘・吐き気などの副作用があるオピオイド(鎮痛薬)の使用を完全に止めたことが報告されました。
このように、CBDの「表皮水疱症」に対する有用性は、未だ研究段階ですが、今後新たな治療薬として期待することができます。
CBD薬剤師の質問コーナー
CBD製品の値段はなぜ高い?
現在、「部位規制」と呼ばれる基準が日本では採用され ており、「成熟した大麻の種子と茎のみ」をCBDの原料として使用できます。
この基準では、限られた部位からしかCBDを抽出することができないため、日本のCBD製品は値段が高い傾向があります。
しかし、昨年の厚生労働省の発表では、大麻の規制基準を「成分規制」に変更する方針であることを発表しました。
「成分規制」とは、THCの含有量によってCBD製品を規制する基準のことです。
この基準により、日本でも「全ての部位から抽出されたCBD」を利用することが可能となります。
上記のことから、日本でもCBDの流通量が増加し、CBD製品の値段が大幅に下がることが期待できます。
CBDを鎮痛目的で利用する人は多い?
様々な効果が期待される「CBD」ですが、実は利用者の多くは、「鎮痛作用」を目的として利用していることが分かっています。
2017年のアメリカでは、「A Cross-Sectional Study of Cannabidiol Users」によって1,483人に対して調査が行われました。
この調査では、医療目的で利用している方の多くが、「慢性疼痛」や「関節炎」・「関節痛」などに対してCBDを使用していると回答したことが報告されました。
また、医療目的で利用している調査参加者の約60%がCBDの効果に「満足している」・「それなりに満足している」と回答したことも分かりました。
参考文献
- Survey Shows CBD Has Positive Impact on Migraines
- Alleviative effects of Cannabis flower on migraine and headache
- CBD Effects on TRPV1 Signaling Pathways in Cultured DRG Neurons
- 5-HT1A receptors are involved in the cannabidiol-induced attenuation of behavioural and cardiovascular responses to acute restraint stress in rats
- Attenuation of early phase inflammation by cannabidiol prevents pain and nerve damage in rat osteoarthritis
- Myorelaxant Effect of Transdermal Cannabidiol Application in Patients with TMD: A Randomized, Double-Blind Trial
- Cannabidiol, cannabinol and their combinations act as peripheral analgesics in a rat model of myofascial pain
- Self-initiated use of topical cannabidiol oil for epidermolysis bullosa