【薬剤師監修】CBDは腎臓に影響を与える?合成カンナビノイドは?論文を基に徹底解説

近年、日本を含む世界各国から注目を集めている「CBD」

そんな「CBD」に関する研究は、現在世界中で行われており、人体に対して様々な影響を与えることが分かってきています。

しかし、CBDの老廃物の排泄などを担う「腎臓」への影響については、いまだ明らかになっていない部分が多く残っています。

本記事では、最新の論文を含めた複数の論文を基に「CBDが腎臓に及ぼす影響」について解説したいと思いますので、ぜひ最後までご覧ください。

この記事でわかることCBDは腎臓に影響を与えるかどうか
CBDが薬剤の腎排泄に影響を与える可能性
合成カンナビノイドが腎臓に与える影響

CBDって何?

CBDとは「カンナビジオール」の略称で、大麻草に含まれる「カンナビノイド」という成分の1つです。

「大麻草に含まれる成分」と聞くと、「依存性」や「違法」といったネガティブなイメージを持つ方も多いかもしれません。

しかし、CBDは安全性が高い成分であると考えられており、日本では合法的に利用することが認められています。

また、WHO(世界保健機関)も2017年に、CBDの安全性を認めており、規制の対象とすべきではないとの見解を発表しています。

最近では、CBDに関する研究が各国で活発に行われており、医療、美容、健康といった多様な分野での利用が期待されています。

そもそもCBDは腎臓に対して影響を与える?

結論から言うと、CBDは過去の研究から「腎臓に対して影響を与える」ことが明らかになっています。

では、一体CBDは腎臓に対して、具体的にどのような影響を与えるのでしょうか。

ここでは、「CBDが腎臓に対してどのような影響を与えるか」ということと、「そのメカニズム」について解説したいと思います。

CBDは腎臓に対して相反する結果を示している

腎臓に対して影響を与える「CBD」ですが、実は過去の研究では「ポジティブな結果」と「ネガティブな結果」の両方を示していることが報告されています。

腎臓に対するポジティブな結果

まず、CBDが腎臓に対してポジティブな結果を示したものとしては、2024年のラットを用いた研究が挙げられます。

この研究では、CBD(26mg/kg)を投与したラットに、腎臓病の発症に関与する「酸化ストレス」や「血清クレアチニン」・「炎症性メディエーター」の減少が確認されたことが報告されてます。

また、糖尿病性腎症のマウスを用いた2021年の研究も、ポジティブな結果を示した例として挙げられます。

この研究では、「改良されたCBD(CBD-HPE)」を投与されたマウスに「クレアチニン」や「血中尿素窒素レベル」・「アポトーシス」・「炎症性マーカー」の減少が見られたことが報告されました。

ちなみに、「クレアチニン」や「血中尿素窒素レベル」・「アポトーシス」・「炎症性マーカー」は減少することで、腎臓に対してポジティブな影響をもたらすと言われています。

腎臓に対するネガティブな結果

CBDが腎臓に対してポジティブな結果を示す一方で、CBDの使用が腎臓に対してネガティブな影響を及ぼす可能性も指摘されています。

実際、糖尿病性腎症のマウスを用いた2021年の研究では、CBDの投与により、全体的な腎障害を悪化させ 、重篤な腎機能障害を引き起こしたことが報告されています。

この研究をまとめた論文では、1型糖尿病患者がCBDを使用する場合、腎症の進行が悪化する可能性があるため注意が必要だと述べられています。

このように、CBDは腎臓に対して相反する影響を与えているため、現時点では、一概に「CBDは腎臓に良い」とは言えません。

CBDが腎臓に対して影響を与えるメカニズム

結論から言えば、CBDが腎臓に対して影響を与えるメカニズムは明らかになっていません。

ただ、2024年の論文では、ECS(エンドカンナビノイドシステム)が腎臓に対して、ポジティブな影響を与えることが示唆されています。

ECSとは、脳や心臓・腸などの働きを調整する機能として知られ、CBDなどのカンナビノイドの作用における主要なシステムとされています。

CBDは「CB1受容体」などを通して、ECSに間接的に関与することが示唆されているため、これらの働きが「CBDの腎臓に対するメカニズム」と言えるかもしれません。

しかし、CBDがECSを通して「腎臓」に影響を与えたという直接的な研究は存在しないため、今後の更なる研究が待たれます。

CBDが薬剤の腎排泄に影響を与える可能性

上記で、腎臓に対してネガティブな影響を与えることを説明しましたが、実はCBDは「薬剤の腎排泄にも影響を与える可能性」があります。

ここでは、「どのようにCBDが薬物の腎排泄に影響を与えるか」を解説したいと思います。

薬物の排出に関係があるタンパク質を阻害する

CBDは肝代謝酵素(CYP450群)を阻害または誘導する可能性が報告されており、これによって他の薬剤の血中濃度や有効性・副作用が変動する可能性があります。

一方、腎臓においては「P-糖タンパク質(P-gp)」・「有機アニオン輸送体(OAT)」・「有機カチオン輸送体(OCT)」などが薬物の排泄を調節すると言われています。

CBDは2017年の「flandとGrotenhermen」のレビューにて「P-糖タンパク質(P-gp)」を阻害することが示唆されているため、薬物の腎排泄に影響を及ぼす可能性が考えられます。

元となる研究は臨床試験ではありませんが、薬剤を摂取する際はCBDの利用を避けてもいいかもしれません。

また、「降圧薬」・「スタチン系」・「免疫抑制剤」など多剤併用が多い方がCBDを摂取すると、腎血流変化や代謝異常を通じて腎機能に影響を与えるといった懸念もあります。

CBDと肝臓の関係性はこちら

ちなみに、CBDが腎臓を通して排出されることもある

実は、CBDは脂溶性が高い成分であるため、そのままでは腎排泄に適した成分とは言えません。

CBDは主に肝臓で「チトクロムP450酵素群」による酸化・水酸化反応を受け、さらにグルクロン酸抱合などを経て水溶性の高い代謝物へと変換されます。

CBD代謝物の多くは、胆汁排泄を経て糞便中に排出されると考えられていますが、一部の代謝物は血流を介して腎臓へ到達し、糸球体ろ過や尿細管分泌を通じて尿中へと排泄されます。

実際、ジストニア患者にCBDを投与した1990年の研究では、尿中から33種類のCBD代謝物が発見されたことが報告されています。

合成カンナビノイドは腎臓に悪影響を与える

人工的に製造された「合成カンナビノイド(Spice/K2、XLR-11、JWH-122など)」は、腎臓に対して悪影響を与えることが最新の論文で述べられています。

ここでは、合成カンナビノイドが腎臓に悪影響を与えることを示した3つの症例や報告をご紹介したいと思います。

Spice/K2の症例

Spice/K2は、大麻の「代替品」として販売されており、その影響は天然の大麻よりも危険で、健康被害が報告されています。

慢性的にSpice/K2の使用していた男性の症例では、「吐き気」や「嘔吐」・「心拍数の低下」・「血中尿素窒素の増加」・「血清クレアチニンの増加」が見られ、腎機能が低下したことが報告されました。

その後、腎生検で軽度の急性尿細管障害も明らかになりましたが、最終的に患者の腎機能は改善し、透析は不要となりました。

XLR-11の症例

XLR-11は、2012年に市場に投入された合成カンナビノイドであり、世界中で使用される喫煙ブレンドに含まれています。

マルチステートで実施されたケース報告では、XLR-11使用者のうち7例中5例で、液体クロマトグラフィー・飛行時間型質量分析法(LC-TOF-MS)によってXLR-11の代謝物が確認されました。

これらの症例では、主に腹痛、吐き気、嘔吐が報告され、さらに血中尿素窒素(BUN)の増加や血清クレアチニンの上昇も見られました。

このようなことから、XLR-11は「CB1」と「CB2」の完全アゴニストであり、急性腎障害の発症に関連していると結論づけられています。

JWH-122の報告

JWH-122は、スパイスに一般的に含まれる合成カンナビノイドであり、「CB1」・「CB2」受容体に対して高い親和性を持っています。

2019年の研究では、JWH-122の投与は腎臓における「ミトコンドリア機能の障害」と「アポトーシスの増加」を引き起こすことが示されています。

さらに、JWH-122に曝露された細胞では、カスパーゼ3活性が2倍に増加し、アポトーシス(プログラム細胞死)が顕著に促進されていることも確認されました。

これらの結果は、JWH-122の使用が急性腎障害(AKI)や慢性的な腎機能不全の発症に寄与する可能性を示唆しています。

今後の研究課題について

米国では大麻関連法規制の見直しが進行中であり、研究用大麻の入手や試験の容易化が期待されます。

これによりCBDを含むカンナビノイドの腎影響について、より質の高い前臨床・臨床研究が行われ、エビデンスが蓄積することが望まれます。

加えて、以下の課題を解決することで、CBDが安全かつ有効に利用できる指針の確立へと近づくことが期待されます。

  • CBD代謝物の詳細な同定と腎排泄動態の定量化
  • 特定疾患(糖尿病性腎症、高血圧性腎障害、CKDなど)におけるCBDの有用性・有害性の整理
  • 臨床試験による用量反応関係、投与期間、併用薬影響の解明
  • CBDが腎・心血管システム間相互作用に及ぼす影響分析

まとめ

CBDは、医療や健康、美容分野での利用が期待される一方で、その腎臓への影響については未解明な点が多く残っています。

本記事では、CBDが腎臓に与えるポジティブな影響とネガティブな影響の双方について、最新の研究結果をもとに解説しました。

加えて、CBDが腎排泄に関与する可能性や薬剤代謝への影響が示唆されていることもご説明いたしました。

今後、法規制の緩和により研究環境が整うことで、より多くのエビデンスが蓄積され、CBDの安全性と有効性に関する理解が深まることが期待されます。

CBD薬剤師の質問コーナー

CBDオイルは猫などの動物の腎臓に悪影響を与えますか?

結論から言うと、CBDオイルが猫の腎臓に悪影響を与える可能性はないとは言い切れません。

しかし、高用量ではない少量のCBDオイルを、猫などの動物に対して投与する場合は問題がない可能性があります。

実際、かば動物クリニックの「國谷 貴司」氏も、高用量ではない少量のCBDオイルであれば問題ないと述べています。

ただし、個体差がある場合もあるので、猫などの動物にCBDオイルを投与する際は、経過を観察することをおすすめします。

加えて、人間用のCBDオイルは濃度が高いため、必ずペット用のCBDオイルを利用するようにしましょう。

【参考文献】

>おうめ薬局は、あなたのかかりつけ薬局です!

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