昨今、天然成分である「CBD」は、リラックス効果や睡眠の質の改善などの効果から日本でも注目されています。
そんなCBDですが、女性特有の悩みである「生理痛」に対しても効果が期待されていることをご存じでしょうか?
本記事では、薬剤師である私が「CBDの生理痛に対する効果と、そのメカニズム」について詳しく解説したいと思います。
また、記事の後半では「CBDのPMS(月経前症候群)に対する効果」もご紹介しているので、気になった方は是非最後までご覧ください。
CBDとは?
CBDとは、カンナビジオールの略称であり、成熟した麻(大麻草)の茎や種子から抽出されるカンナビノイドと呼ばれる成分の1つです。
CBDは、安全性が高いことがWHO(世界保健機関)にも認められており、日本では合法で使用することが可能です。
また、CBDは過去の研究から、以下のような効果が期待できます。
- 睡眠のサポート
- リラックス効果
- ストレス緩和
- 抗炎症作用
- 鎮痛作用
- 抗菌作用
- 抗てんかん作用 など
これらの効果から、CBDは様々な疾患に対しても有用性があるとされており、実際に海外では「てんかん」などの治療薬としても利用されています。
そもそも生理痛とは?
CBDの生理痛に対する効果を知る上では、「そもそも、生理痛がどういったものなのか」ということを理解しておく必要があります。
ここでは、生理痛の症状や原因・対処法を簡単にご紹介したいと思うので、是非チェックしてみてください。
生理痛の症状
生理痛とは、生理の直前や生理中に子宮が収縮することで起こる下腹部や腰の痛みのことであり、別名「月経痛」とも呼ばれています。
生理痛の痛みには個人差があると言われており、人によっては頭痛や胃痛・吐き気などを伴うこともあります。
また、生理痛が酷く日常生活に支障をきたす場合は「月経困難症」と呼ばれており、以下の2パターンが原因として考えられます。
- 子宮筋腫や子宮内膜症などの病気が原因で痛くなる場合(器質性月経困難症)
- ホルモンの作用で痛くなる場合(機能性月経困難症)
前者を「器質性月経困難症」、後者を「機能性月経困難症」といい、判断する場合は産婦人科を受診して診断を受ける必要があります。
生理痛が起こる原因
生理痛は、「プロスタグランジン」の過剰分泌が原因で起こるとされています。
プロスタグランジンとは、子宮から分泌される生理活性物質であり、「子宮を収縮させる」・「炎症を引き起こす」といった作用があります。
プロスタグランジンの分泌量が多いと子宮の収縮が激しくなり、下腹部に痛み(生理痛)が引き起こされます。
プロスタグランジンには炎症を起こす作用もあり、炎症の際に「ブラジキニン」などの発痛物質の作用が促進されるため、生理痛が増幅するとも考えられています。
また、このプロスタグランジンの炎症を起こす作用は、子宮以外の腹痛や頭痛の原因になる場合もあるとも言われています。
一般的な生理痛の対処法
一般的な生理痛の対処法としては、「非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)」や「アセトアミノフェン」などの医薬品が利用されています。
これらの医薬品は、生理痛の原因となる「プロスタグランジン」の増殖を抑制することで生理痛を緩和するとされています。
しかし、これらの医薬品には胃腸障害や吐き気・食欲不振などの副作用があり、「非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)」に至っては15歳未満は使用できません。
その一方、今回ご紹介する「CBD」は上記のような副作用が無いことが分かっており、全年齢で使用することが可能です。
医薬品の副作用にお悩みの方は1つの選択肢として、CBDの利用を検討してみましょう。
CBDの生理痛に対する効果
ここまでの説明から、生理痛がどういったものかお分かり頂けたと思いますが、CBDは生理痛に対してどのような効果を発揮するのでしょうか?
ここでは、「CBDの生理痛に対する効果や、そのメカニズム」について解説したいと思います。
CBDには生理痛の緩和が期待されている
結論から言うと、CBDには生理痛を緩和する効果があるとされてます。
CBDは過去の研究から「鎮痛作用」が期待されており、2017年の論文では、CBDには痛みの知覚を減らす作用があることが報告されています。
実際、生理痛に対してCBDを利用した方の中でも、「生理痛が緩和した」というケースが確認されています。
また、CBDは慢性疼痛や癌性疼痛・関節炎などの治療にも使われており、頭痛や腰痛といった痛みを伴う疾患にも役立つとされています。
CBDの生理痛に対する研究は未だ十分ではありませんが、生理痛やそれに伴う頭痛などにお悩みの方は、試しにCBDを利用してみるのもいいかもしれません。
CBDが生理痛を緩和するメカニズム
生理痛を緩和するためには、生理痛の原因となる「プロスタグランジン」の産生を抑制することが重要となります。
CBDには、「COX-2」と呼ばれる酵素を阻害する効果があるとされており、プロスタグランジンの産生を抑制することが期待されています。
「COX-2」とは、プロスタグランジンの前駆物質のことで、急性炎症・腫瘍の増殖・血管新生などの病理反応に関与するとされています。
実際に2022年の論文でも、CBDが「COX-2」の発現を大幅に阻害したことが報告されています。
ちなみに、「非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)」や「アセトアミノフェン」といった医薬品もCBDと同様の働きで生理痛を緩和するとされています。
CBDはPMS(月経前症候群)にも効果が期待できる
CBDは生理痛だけでなく、PMS(月経前症候群)に対しても効果が期待されています。
PMS(月経前症候群)は、生理前のホルモンバランスの乱れが原因で起こり、情緒不安定や不安・睡眠障害・片頭痛・吐き気などの症状が見られます。
ここでは、CBDのPMS(月経前症候群)に対して期待できる効果を4つ紹介します。
不安の緩和
PMS(月経前症候群)には、不安やストレスを感じるといった症状があります。
CBDは抗不安作用があるとされており、PMS(月経前症候群)によって起こる不安やストレスを緩和することが期待できます。
実際2019年の論文では、CBDを投与されていない被験者に比べて、CBDを投与された被験者は大幅に不安が軽減されたことが報告されています。
さらに、2011年の論文でも、CBDを投与した被験者は、不安やストレスが軽減されたことが示唆されています。
これらの論文は、CBDの「不安」や「ストレス」に対する臨床的有用性を示唆しており、今後に期待が高まります。
睡眠の質の改善
PMS(月経前症候群)には睡眠障害の症状があり、人によっては睡眠の質が下がることがあります。
CBDは過去の研究から、睡眠の質を向上する効果が期待されています。
実際に2022年の研究では、CBDを投与した被験者は徐波睡眠の割合が増加し、睡眠の質が向上したことが示唆されています。
徐波睡眠とは、眠りが最も深い睡眠のことであり、この深い睡眠の割合が増加すると熟睡感を上げることができるとされています。
睡眠にCBDを利用する場合は、効果の持続時間の長い「CBDサプリメント」がおすすめなので利用してみてください。
偏頭痛の緩和
月経前は女性ホルモンが乱れることで血管の収縮と拡張が生じ、偏頭痛が起こりやすくなります。
CBDには、そんな「偏頭痛」を緩和する効果が期待されています。
アメリカのアクソン・リリーフ(Axon Relief)社では、CBDオイルの偏頭痛の予防治療に対する有用性が調査されました。
この調査は、105人の偏頭痛患者に対して「HIT-6」と呼ばれる「頭痛が日常生活に与える影響を数値化するテスト」が使用されました。
調査の結果、86%の参加者が「頭痛が緩和した」と回答し、頭痛を感じた日数は平均3. 8日減少したことが明らかになりました。
この調査は、臨床試験レベルでは行われてはいませんが、CBDの偏頭痛に対する有用性を示しています。
吐き気の抑制
人によっては月経前症候群(PMS)や月経困難症によって、吐き気や嘔吐といった症状が出ることがあります。
CBDは過去の研究から、そんな「吐き気」や「嘔吐」を抑制する効果が期待されています。
2011年の研究では、ラットにCBDを投与することで、吐き気や嘔吐に対する有用性を評価する実験が行われました。
その結果、CBDを投与されたラットは、吐き気や嘔吐を抑制したことが報告されました。
この研究は動物実験ではありますが、CBDには吐き気や嘔吐を抑制する効果があることを示唆しています。
また、カンナビノイド成分の1つである「CBDA」も、CBDと同様に吐き気を抑制する効果が期待されています。
PMS(月経前症候群)によって起こる吐き気や嘔吐を緩和したい方は、試しにCBDAが配合されたCBD製品を利用してみてもいいかもしれません。
CBDの効果を高める活用方法
CBDを摂取したからといって、必ずしも十分な効果が得られるわけではありません。
では、十分な効果が得られない際は、どうすればいいのでしょうか?
ここでは、CBDの効果を高める活用方法を3つご紹介します。
CBDの摂取量を増やす
CBDを摂取しても十分な効果が感じられない場合は、そもそも十分なCBDを摂取できていないことが考えられます。
CBDの効果を高めるためには摂取量を増やすことや、高濃度の製品を摂取することが重要となります。
ただ、CBDの適切な摂取量は、体重などの個人の身体的要素によって異なるため、初心者の方は自分の適切な量が分かるまで、少ない量から増やしていくことがおすすめです。
個人的には、CBDを100mg〜から摂取しても問題無いと思っており、量を増やす際にはCBDを1mg/1kg(体重)で増やしていくことをおすすめします。
また、許容量でいうと、過去に行われた臨床試験では1,000mgを超えるCBDを単独で摂取しても副作用などは報告されていません。
CBD1,000mgを超える過剰摂取の心配は少ないと思いますので、ある程度まで摂取量を高めていき、自分に最適な量を見つけましょう。
長期的にCBDを摂取する
CBDの効果を高めるためには、長期的にCBDを摂取することも重要となります。
CBDはサプリメントのため、効果が出るまでの期間に個人差があり、摂取したからといって直ぐに効果が現れるとは限りません。
一般的にサプリメントは、穏やかに体に働きかけると考えられており、3カ月程度を目安に様子を見ながら利用することが推奨されています。
CBDも同じく、摂取した直後に効果を感じる方もいらっしゃいますが、十分な効果を得られるまでに数週間〜数ヶ月かかる方もいます。
これらのことから、CBDで十分な効果が得られない場合は、まずは1ヶ月間、摂取量を調節しながら様子をみることをおすすめします。
吸収率の高い摂取方法を利用する
CBDの効果を高めるためには、吸収率の高い摂取方法を利用することも重要です。
CBDは摂取方法によって、下記のようにCBDの吸収率が異なります。
- 経口摂取(グミやサプリメントなど):吸収率:6〜20%
- 舌下摂取(オイル):吸収率:13〜35%
- 吸引摂取(ベイプ):吸収率:34〜56%
グミやサプリメントなどによる経口摂取で期待する効果が得られない場合は、舌下摂取や吸引摂取を利用してみましょう。
また、最近ではCBDを配合した「タンポン」なども販売されているので気になった方は是非チェックしてみてください。
CBD薬剤師の質問コーナー
CBDは子宮内膜症に対して効果がある?
結論から言うと、CBDには子宮内膜症の症状を緩和する効果が期待されています。
実際に2019年に行われた調査では、347人の子宮内膜症患者にCBDもしくは医療大麻を投与し、有用性が評価されました。
調査の結果、CBDを摂取した患者の半数以上は、「子宮内膜症の症状の改善にとても効果的であった」・もしくは「それなりに効果的であった」と回答しています。
CBDAって何?
CBDAとは、カンナビジオール酸の略称であり、生育中の大麻草に含まれる化合物の1つです。
CBDAはCBDの前駆体であり、熱が加わり脱炭素化することでCBDに変化するとされています。
CBDAはCBDと比べて、研究や実験の数が少ないため、断言することはできませんが、安全性は高いと考えられています。
2016年の研究では、ラットにCBDA(0.05〜5mg/kg)を経口投与し、運動活動などに対する安全性を評価する実験が行われました。
その結果、CBDAはラットの身体活動などに悪影響を及ばさず、忍容性が非常に高いことが報告されました。
忍容性が高いとは、副作用がほとんど無く、あったとしても非常に程度が軽いという意味です。
参考文献
- Cannabidiol Is a Potential Therapeutic for the Affective-Motivational Dimension of Incision Pain in Rats
- Effect of Cannabidiol on Cyclooxygenase Type 1 and 2 Expression and Function in Human Neutrophils
- Cannabidiol presents an inverted U-shaped dose-response curve in a simulated public speaking test
- Cannabidiol Reduces the Anxiety Induced by Simulated Public Speaking in Treatment-Naïve Social Phobia Patients
- CBDブランド Greeus × 早稲田大学睡眠研究所共同研究レポート公開「CBDが睡眠に与える影響 」
- Survey Shows CBD Has Positive Impact on Migraines
- Interaction between non-psychotropic cannabinoids in marihuana: effect of cannabigerol (CBG) on the anti-nausea or anti-emetic effects of cannabidiol (CBD) in rats and shrews
- New Insights of Uterine Leiomyoma Pathogenesis: Endocannabinoid System
- Neuromotor tolerability and behavioural characterisation of cannabidiolic acid, a phytocannabinoid with therapeutic potential for anticipatory nausea