「CBD」は、健康増進やリラクゼーションを目的として、日本を含めた世界中で注目を集めています。
そんなCBDですが、近年「癌(がん)治療に効果がある」といった噂を聞く機会が増えてきています。
皆さんの中にも、「CBDは本当に癌(がん)治療に効果があるの?」と疑問を持っている方もいらっしゃるのではないでしょうか?
今回は薬剤師である私が、「CBDの癌(がん)治療に対する効果」や「大麻の癌(がん)治療に対する効果」などを解説したいと思います。
また、現在X(旧Twitter)・Instagramにて、CBDを含む大麻成分に関する情報をエビデンスを基に発信しているので、気になった方は是非チェックしてみてください!

日本薬剤師研修センター研修認定薬剤師
日本臨床カンナビノイド学会認定登録師
所属学会:日本薬理学会、日本緩和医療薬学会、日本在宅薬学会、日本臨床カンナビノイド学会
そもそもCBDとは?

CBDとは、カンナビジオール(英:Cannabidiol)の略称であり、大麻草に含まれるカンナビノイド成分の1つです。
大麻に含まれる成分といったことから不安に感じる方もいるかもしれませんが、CBDには大麻の精神活性作用や依存性が無いことが明らかになっています。
さらに、CBDは安全性が高いとされており、国際機関の「WHO(世界保健機関)」にも安全性が認められています。
また、CBDは過去の研究から、
- 睡眠の質の改善
- 鎮痛作用
- 抗炎症作用
- 抗不安作用
- 抗てんかん作用
- 抗がん作用
などの効果が期待されており、アメリカなどの海外では医薬品としても使用されています。
近年、CBDは世界中で活発に研究が行われており、美容や健康といった様々な分野で活用が期待されています。

癌(がん)ってどんな病気?
「癌(がん)」とは、遺伝子に傷がついた「がん細胞」によって、体の正常な機能が阻害される疾患のことです。
現在、年間36万人以上の日本国民が「癌(がん)」によって死亡していると言われており、「癌(がん)」は日本人にとって国民病といっても過言でない状況となっています。
ここでは、そんな癌(がん)の「要因や症状」・「現在行われている治療法」について解説したいと思います。
癌(がん)が起こる要因や症状
癌(がん)の発症には、「喫煙」や「飲酒」・「運動不足」・「太り過ぎ・痩せすぎ」・「感染性因子」などの要因が関係していると考えられています。
特に男性は「喫煙」、女性は「感染性因子」といった要因によって、癌(がん)が発生する割合が高いとされています。
癌(がん)には「肺がん」や「乳がん」・「胃がん」など様々な種類がありますが、それぞれの種類によって、異なる症状を引き起こします。
例えば、肺がんでは「治りにくい咳」や「胸痛」・「血痰」などの症状が、乳がんでは「腕のむくみ」や「腕のしびれ」などの症状が見られます。
癌(がん)は死亡率が高い疾患ですが、早期発見できれば生存率を上げることもできるため、定期的な検診が非常に重要となります。
癌(がん)の治療法

癌(がん)治療には多くの場合、「手術療法」・「放射線治療」・「抗がん剤治療」・「免疫療法」の4つが用いられ、場合によっては2つ以上の治療を組み合わせることもあります。
これらの癌(がん)治療には、それぞれ異なったメリットやデメリットがあるため、自身に合った治療法を選ぶことが重要となります。
例えば、「放射線治療」や「抗がん剤治療」は、手術治療と違い、治療が特定の部位に限定されませんが、疲労感や吐き気などの副作用を伴います。
また、「免疫療法」は他の治療法と比べて患者への負担が軽いですが、治療効果には個人差があることが分かっています。
癌(がん)治療を行う際は、担当医と共に自身の希望や生活状況も含めた多角的な視点から考慮することが重要となります。
CBD・大麻は癌(がん)に効果あり?
癌(がん)の症状や原因・治療法をお分かり頂けたと思いますが、CBDは本当に癌(がん)に効果が期待できるのでしょうか?
ここでは、「CBDは癌(がん)に効果が期待できるか」ということや、「CBDの癌(がん)に対するメカニズム」を解説したいと思います。
CBDは癌(がん)に効果が期待されている

CBDは過去の研究や論文から、癌(がん)に対して効果があると考えられています。
実際に、2020年に発表されたアメリカの論文では、CBDは様々な癌(がん)治療に対して有用であることが示されています。
CBDの癌(がん)に対する研究は、特に「膠芽腫」や「肺がん」・「乳がん」の3種類で進んでおり、「がん細胞の細胞死の誘導」などの効果を示したことも報告されています。
現段階では、CBDの癌(がん)に対する研究は動物・細胞実験がほとんどですが、多くの研究で有用性が示唆されているため、今後の臨床試験に期待が高まります。
また、がんに対してCBDを利用するなら、オイルやベイプなどよりも手軽に摂取できるサプリメントタイプがおすすめです。
CBDの癌(がん)に対するメカニズム
結論から言うと、CBDが癌(がん)に対して、どういったメカニズムで作用するのかは、現段階では正確には分かっていません。
一説では、CBDが「がん細胞」の誘導体としても役割を持つ「タンパク質ID-1」の働きを阻害し、がんの細胞を殺すことで「悪性腫瘍」を破壊するのではないかと考えられています。
実際に、2007年の研究では、CBDが「タンパク質ID-1」の働きを阻害し、乳がん細胞の増殖と転移の阻害に強力な効果を発揮したことが示唆されています。
ただ、この研究は細胞を用いた実験であるため、人体に対しても同様のメカニズムで作用するかは分かっていません。
また、異なる見解では、CBDが人体に存在する「GPR55」と呼ばれる受容体に作用することで抗腫瘍効果を引き起こすのではないとも言われています。
これらのように、CBDの癌(がん)に対するメカニズムは明らかになっていないため、今後の研究に期待が高まります。

CBDが癌(がん)治療に効果を示した研究
ここまでの説明から、CBDが癌(がん)に対して効果があることがお分かり頂けたと思いますが、具体的にはどういった種類の癌(がん)に効果があるのでしょうか?
ここでは、CBDが癌(がん)治療に対して効果を示した研究を5つご紹介したいと思います。
膠芽腫(こうがしゅ)に対する研究

2019年の研究では、「膠芽腫(こうがしゅ)」を抱える患者9人にCBD(400mg/日)を投与し、有用性が評価されました。
膠芽腫とは、「グリオブラストーマ」と呼ばれる悪性の脳腫瘍であり、平均余命は約14ヶ月と言われています。
研究の結果、CBDを投与された患者は、平均余命よりも平均生存期間が6ヶ月以上伸びたことが報告されました。
この研究は、CBDの「癌(がん)」治療に対する有用性を示唆しており、更なる研究が行われることでCBDが新たな治療手段として利用されることが期待されます。
乳がんに対する研究
2015年の細胞やマウスを用いた研究では、CBDの乳がんに対する有用性を評価する実験が行われました。
細胞を用いた実験の結果、CBDは乳がんの「細胞の増殖」や「転移」・「乳房組織の破壊」を抑制したことが示唆されました。
この実験では、様々な濃度のCBDを含んだ液体に「がん細胞」を入れて数を計測した場合、CBDの濃度が高いほど「がん細胞」の数が減少したことも明らかになりました。
また、マウスを用いた実験では、CBDによってマウスの乳がんの腫瘍が縮小し、乳がん患者に引き起こされる「転移性肺癌」の減少が見られたことも報告されました。
これらの実験は臨床実験ではありませんが、CBDの乳がんに対する有用性を示唆しています。
大腸がんに対する研究

2015年のイギリスの研究では、悪性度が高く転移しやすいといった特徴がある「大腸がん」の細胞を用いて、CBDのがんに対する有用性が評価されました。
この研究は、がん細胞の転移に関係がある受容体である「GPR55」に注目して行われ、CBDとGPR55の阻害剤が細胞に対して使用されました。
その結果、CBDとGPR55の阻害剤の両者は、大腸から肝臓に転移したがん細胞を減少させたことが示唆されました。
胃がんに対する研究
2019年の細胞やマウスを用いた研究では、CBDの胃がんに対する有用性を評価する実験が行われました。
実験の結果、CBDは正常な細胞に影響を与えず、特定のタンパク質である「X連鎖阻害剤アポトーシス(XIAP)」を抑制することで、がん細胞のみを死滅させたことが報告されました。
また、この研究では、CBDがマウスの胃がんのサイズを縮小させたことも示唆されました。
この研究も上記で紹介した「乳がん」・「大腸がん」に対する研究と同様に細胞・動物実験レベルですが、癌(がん)に対する有用性を示唆しており、今後の更なる研究に期待が高まります。
抗がん剤の副作用に対する研究

ガンの治療に対して利用される「抗がん剤」ですが、副作用として「痺れ」などの神経障害が引き起こされる場合があります。
CBDには、そんな抗がん剤の副作用である「痺れ」を緩和する効果が期待されています。
2022年の研究では、がん患者にCBDオイルを投与し、抗がん剤の副作用に対する有用性を評価する実験が行われました。
この実験は計8日間行われ、患者は10%のCBDオイル(150 mg)を1日に2回経口投与されました。
研究の結果、CBDは抗がん剤の副作用である身体の痺れなどを緩和したことが報告されました。
今回、CBDは大腸がんの治療に用いられる抗がん剤である「カペシタビン」と「オキサリプラチン」の組み合わせに対して効果を示しました。
今後さらなる研究が行われることで、CBDが抗がん剤の副作用に対する新たな予防法や治療法になることが期待されます。
大麻が癌(がん)治療に効果を示した調査や研究
ここまでの説明から、 CBDはガンの治療において有用であることがお分かり頂けたと思いますが、CBDの原料である「大麻」はどうでしょうか?
ここでは、大麻が癌(がん)治療に効果を示した調査や研究を2つご紹介したいと思うので、気になった方は是非チェックしてみてください。
QOLや抗腫瘍作用に関する調査・研究

大麻は癌(がん)治療において、「QOL(生活の質)を高める作用」と「腫瘍を縮小し、がんを治す作用」の両方が期待されています。
がんは、痛みや食欲低下・吐き気・不安・うつなどのQOLを低下させる症状を引き起こすことが分かっています。
2019年の調査では、医療センター緩和ケア外来に通院する約40%のがん患者が、上記のQOLを低下させる症状の緩和目的で大麻を利用していたことが報告されました。
この調査結果は、がんの緩和ケアにおいて医療大麻が有用な手段であることを示唆しています。
また、過去の基礎研究では、大麻にはがん細胞を細胞死(アポトーシス)させる「抗腫瘍作用」があることが示唆されています。
今後日本でも、がん治療に対して医療大麻が認可されることで、がんに苦しんでいる方の負担が軽減されることを願います。
抗がん剤の副作用に対する研究
2018年の研究では、抗がん剤治療に医療大麻を併用した患者51名に対して調査が行われ、医療大麻の有用性が評価されました。
結果、医療用大麻を利用した患者の94%が、抗がん剤の副作用である「痛み」を軽減したことが報告されました。
さらに、患者の約80%は、「食欲」や「吐き気」・「全体的な幸福感」などの副作用が改善したことも明らかになりました。
この研究では、全体として81.5%の患者が高い有効性を感じており、医療大麻の抗がん剤治療に対する有用性が示唆されています。
CBDを癌(がん)治療に利用する際の注意点
皆さんの中に、「CBDを癌(がん)治療に利用したい…」と考えている方はいらっしゃいませんか?
ここでは、CBDを癌(がん)治療に対して利用する際の注意点を2つご紹介します。
抗がん剤との飲み合わせに注意する
がん治療に、「パクリタキセル」などの一部の抗がん剤を利用している方はCBDとの飲み合わせに注意が必要です。
CBDには、薬物代謝酵素である「CYP450」の働きを阻害する作用があることが分かっています。
「CYP450」の働きがCBDによって阻害されると、抗がん剤の血中濃度が高まってしまったり、副作用が起こってしまう可能性があります。
ただし、「日本臨床カンナビノイド学会」の発表では、1日のCBDの摂取量が2mg/kg/以下であれば、薬物の代謝に影響を与える可能性は低いとされています。
そのため、体重が100kgの方は摂取するCBDの量が200mg以下、体重が50kgの方は100mg以下であれば心配する必要はないといえます。
「パクリタキセル」などの抗がん剤を利用している方は、上記の値を目安にしてみてもいいかもしれません。
適切な量のCBDを摂取する
がん治療にCBDを利用する場合は、適切な量のCBDを摂取することが重要となります。
実際に、過去の研究では適切な量のCBDを摂取しなかったために、十分な効果を得られなかったことが示唆されています。
ただ、中には「がんに対して、どのぐらいCBDを摂取すればいいの?」といった疑問を抱えている方もいらっしゃるのではないでしょうか?
そんな場合は、「臨床CBDオイル協会」が推奨している「体重1kgあたり0.25〜0.5mgのCBDを1日2回」といった量を参考にしてみましょう。
また、この量でも十分な効果が得られない場合は、 1日0.5mg/kgずつ増量することがおすすめなので、是非実践してみてください。

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